コミュニケーション施策におけるビジュアル要素の重要性

掲載日:2022年2月14日
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生活者とのコミュニケーションにおいてビジュアル要素の重要性が増している。マーケティング施策への印刷物をはじめとした各種メディアの活用を踏まえ、施策立案者、制作者とも、コミュニケーションにおけるビジュアルの効果について理解しておく必要がある。

ビジュアルによる訴求効果

オンラインデザインプラットフォームを展開するCanvaは、『ビジュアルマーケティングにワクワクする10個の科学的根拠』と題するブログで、元来人間の脳は視覚から情報を得る比率が高く、かつビジュアルイメージを処理する速度は文字情報を処理する速度に比べて非常に速い(最大で10倍との説もある)との研究結果を紹介している。

博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2021」によると、生活者のメディア総接触時間は450.9分と大幅に伸長し、中でもスマートフォンやタブレットの利用時間が増加する傾向は続く。メディア接触機会が増大し常に大量の情報にさらされている環境では、より短時間で直接的に脳に処理されるビジュアルでの情報伝達に優位性があるといえる。

加えて、広告をはじめとした動画市場は年々拡大し、情報入手の手段に占める動画の割合が格段に増加している。生活者はコミュニケーションが文字ではなくビジュアルを介して行われることに慣れ、さらに効果的なビジュアル演出を望む傾向が強まっているようだ。

前述のCanvaは、「デザインの力を世界へ」をポリシーにオンラインでグラフィックデザインおよび印刷サービスを展開する企業で、Forbesが選出する「未上場のクラウド企業トップ100社」でも上位にランキングされ、投資家からも注目を集めている。近年こうしたデザインドリブンをコンセプトとしたサービスやストックコンテンツ(フォト、イラスト、インフォグラフィックスなど)サイトなどが拡大し、素材提供にとどまらない様々なサービスを展開している背景には、こうした情報環境も一因としてあるだろう。

デジタル空間体験とリアリティの渇望

ビジュアルでの伝達はインパクトの点だけではなく、デジタル空間で求められるリアリティという面でも、優位性がある。生活者の購買行動は変化し、製品自体の特性より、体験価値が重視される場面が多い。製品説明は特徴を文字情報で伝えられるが、利用場面や体験価値は、ビジュアルでの提示が有効だ。

製品パッケージ制作では、sensory packaging、つまり感覚への訴求を念頭に置いたデザイン制作が重視されている。文字では難しい感覚器官に訴えかける表現、例えば味覚を想像させる画像、嗅覚を刺激するような画像、触覚を想起させる動画など、ビジュアルは表現の可能性の幅が広い。

メディア制作者が意識すべきこと

ビジュアルによるコミュニケーションは、近年マーケティングで重視される共感によるユーザー体験向上につながる。メディア施策提案、デザイン提案においては、これを踏まえてビジュアル要素の活用を検討し、最終的にコンバージョン(価値への転換)を高めるようにしたい。

さらに具現化、実制作にあたっては、発注者、営業・企画担当、制作者間などで、こうした思考プロセスの共通認識を持つこともますます重要となるだろう。

JAGAT資格制度事務局 丹羽 朋子