投稿者「Hiroyuki Chiba」のアーカイブ

第51期DTPエキスパート認証試験 出題傾向と講評

2019年3月17日(日)、第51期DTPエキスパート認証試験(学科試験)が実施された。

学科試験

DTPエキスパートカリキュラムは、2018年11月に改定をおこない、第13版となった。今回の試験は、新カリキュラムを反映した内容となっている。

新出題項目として発表した項目の中から、下記テーマが出題されている。

・ デジタルカメラと撮影
・デジタル写真の画像処理とアプリケーション
・AcrobatによるPDF校正
・モバイルデバイスのカラー再現
・インタフェースの最新動向
・B2BのWeb to print
・インフォグラフィックスの思想
・オンラインショッピングとパーソナライズDM

新出題項目については、概ね基本的な内容を問う出題や従来内容のアップデートである。

また、カリキュラムで改定された「情報デザイン」分野からインフォグラフィックスが出題されている。
インフォグラフィックスは、複雑な情報や知識・概念を視覚的にわかりやすく表現したものである。近年ではその重要性が高くなっており、報道や出版物、デジタルメディア等でも多用されている。

「マーケティング」分野では「パーソナライズDM」、「B2BのWeb to print」が出題されている。
近年、ネットショッピングとパーソナライズDMを連動させることで大きな成果を上げた事例が発表されている。デジタル✕紙媒体の効果的な例である。
また、Web to printは、ネット印刷・印刷通販のモデルとして注目されているが、 B2B (企業間)の印刷受発注業務でも大きな成果を上げている。

実技試験

実技試験は、当日配布される『課題制作要項』に基づき、4週間で取り組むものである。冊子課題(携帯電話マニュアル)/ペラ物課題(マラソン大会告知チラシ)を出題した。  

提出課題と講評

本試験の大きな特長として、実技課題を通じて印刷物製作のプロセスとグループワーク(他者への作業指示・管理)を体感できることがある。今回は、そうした試験の意義を感じていただける機会となったかと思う。

マラソン大会は、ある飲料メーカーが全国各地で実施するイベントである。地域のマラソン競技振興と自社スポーツドリンク製品の告知の目的を兼ねたものである。発注者からは、このような背景に基づく素材データが支給され、デザインを依頼されている。これらの目的に沿う告知チラシを、指定内容に従って制作する課題である。

提出作品では、レイアウトや色使いなどさまざまな工夫が見られ、水準をクリアしているものが多かった。

実技課題試験は、印刷物の制作の基本技能・知識を習得しているかどうか(作品)、グループワークを前提とした作業指示・管理ができるかどうか(作業指示書)を前提に設計されたものとなっている。

DTPエキスパート試験の習得を通じた学習によって、実業務のレベルアップや改善を果たすことが期待されている。

(JAGAT 資格制度事務局 )

『DTPエキスパート受験サポートガイド 改訂9版』第1刷正誤表

『DTPエキスパート受験サポートガイド 改訂9版』 第1刷 に以下の誤りがありました。訂正してお詫びします。

P.13 下から1行目「正答欄」

[G]以下は不要です。

P.50 解答群 B:

 [誤]B:①[ア-ヲ] ②[ア-ョ] ③[ア-ン] ④[ア-ボ]
 [正]B:①[ア-ヲ] ②[ア-ョ] ③[ァ-ヴ] ④[ア-ボ]

P.60 下から1行目 

 [誤]④分版さ
 [正]④分版された状態

P.62 1行目 

「れた状態」不要です。

P.156 下から2行目

  [誤] [G]
  [正] [K]

        

クロスメディアエキスパート論述試験 提案書における重点ポイント

2019年3月17日(日)、第27期クロスメディアエキスパート認証試験が実施された。第2部の論述試験は、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を140分の制限時間内に作成するものである。

8ページほどの与件文には、ある企業の事業推移や市場環境、競合企業の動向などが記述されている。提案先企業の課題を適切に理解し、課題解決をおこなうコミュニケーション戦略を提案することが求められている。

出題テーマと内容

出題テーマは毎回、さまざまな分野が取り上げられている。近年のテーマは以下のようになっている。

・コインランドリーの機器販売、運営(26期)
・農産物直売所の運営(25期)
・ハウスウェディング事業(24期)
・マンションリノベーションの設計・施工(23期)
・知育玩具の製造・小売(22期)

新規事業や新たなサービス提供に際して、コミュニケーション戦略を模索しており、効果的なクロスメディア提案を求めている、という設定である。

今回(27期)のテーマは「オーダースーツを製造・販売する企業」という設定であった。

提案書作成における重点ポイント

提案書の採点においては、以下についての記述が重要視されている。また、これらのポイントは実務上でも有効である。

今後、取り組む際には、このような点に留意するとさらに完成度が上がるだろう。

(1)コンテンツ

Webサイト、冊子・フリーペーパー、チラシなどどのメディアを使用するにしても、どんなコンテンツを発信するかが重要である。

Webサイトの改定を行うのであれば、どのようなコンテンツを誰に向けて発信し、どのような効果を狙うのか。訴求力のあるコンテンツをどのようにして準備するのか。Webサイトの閲覧を増やすための施策は何か、というシナリオは必須である。

コンテンツの企画・編集、制作費用は適切かどうかも重要である。

(2)メディア選定理由が不明確

メディア選定理由を問う設問があり、なぜそのメディアが適しているかを回答することが求められている。つまり、メディアの特徴(長所・短所)を正しく認識し、それを活用しているかどうかが問われている。

(3)提案書の挨拶文

挨拶文であるため、分析・評論するような文体は避けるべきである。例えば、顧客の業績や状況に関する認識を表現する場合、リスペクト感が伝わるような記述が望ましい。

(4)提案内容は消費行動モデルを意識する

消費者・生活者の心を動かすには、消費行動プロセスモデルに即した方法が有効である。

インターネット時代に有効とされるAISASモデル(注意・関心・検索・行動・共有)やAISCEAS(注意・関心・検索・比較・検討・行動・共有)に即した施策は効果的である。また、SNSやコンテンツマーケティングの動向に即した消費行動モデル(SIPS、DECAX)も有効である。

提案書の施策説明として、消費行動プロセスにおける位置付けを含めることで、説得力を高めることができる。

さらに、採点基準にはリピートを促す仕組みがあるか(関心を高める)、双方向コミュニケーションがあるか(共有・拡散を促す)も含まれている。これらも加点ポイントとして意識する。

(5)コミュニケーション施策の全体設計と自社の強み

例えば3つの課題に対して、バラバラに施策を立て、それらを並列で実施するだけでは大きな効果を期待できない。全体設計があり、複数の施策の連係によって一つの目的に向かっていくような記述があると相乗効果も期待できる。施策のまとめとして、全体設計を示し、全体の流れや効果を記述すると良いだろう。

また、自社の強みをアピールすることも重要である。いくつもの提案の中から自社の提案を採用することが、もっとも適切で効果的であることを伝えなければならない。

(6)スケジュールと費用

スケジュールは費用算出の根拠ともなる。実務上でも、工数配分をベースに費用を算出することが多い。スケジュール上の規模感が、結果的に費用に反映されていると提案の妥当性が増すと言える。

例えば、企画・設計の期間や費用を適切に見込んでいるか、Webサイトの維持・改善の工数を見込んでいるかどうかなども、妥当性を示すポイントだと言える。

印刷物を使用する場合、原稿を受領してデザイン制作をするのではなく、印刷物の企画・原稿執筆・データ制作を含める必要がある。さらに、印刷・製本して納品することがゴールではなく、エンドユーザーへの配布方法や費用を見込む必要がある。

(7)競合他社との差別化

コミュニケーション施策において、提案先とその競合他社との差別化は、もっとも重要な項目である。「競合他社との差別化」のための提案と言い換えることもできるだろう。

すべての施策が、最終的に「競合他社との差別化」となる提案でなければ、採用されることにはならない。提案書の中で強調されていなければならないポイントである。

「デジタル×紙×マーケティング」のスキルとは

現在の印刷企業には、デジタルメディアと紙メディアの強みを組合せ、クライアントの課題を解決すること、つまり、「デジタル×紙×マーケティング」が求められている。

このようなビジネスを成功させるには、上記のような提案力を身に付けることは必須だと言える。

(研究調査部 千葉弘幸)

オーダースーツ企業への企画提案

第27期クロスメディアエキスパート認証試験が2019年3月17日(日)に実施された。第2部の論述試験は、「オーダースーツを製造・販売する企業にコミュニケーション戦略を企画提案する」という設定であった。

オーダースーツを取り巻く市場環境

近年、紳士スーツ市場はたいへん厳しい状況になっているという。総務省の家計調査によると世帯当たりのスーツ関連(スーツ、ネクタイ、ワイシャツ)の年間支出は、ピーク時の1991年に2万5,000円を超えていたが、2016年には6,959円と30%以下のレベルとなっている。
生産年齢人口の減少やクールビズの浸透、ビジネスウェアのカジュアル化など、さまざまな原因が指摘されている。

その一方でオーダースーツに参入する企業が増えている。以前は高級品が中心であったが、近年では既製服と同等の価格で高級感やフィット感が得られる製品が増えており、人気が高まっている。

2018年には、大手ファッション通販サイトがオーダースーツビジネスに参入し、話題となった。自宅で採寸用のニットスーツを着用し、スマホで撮影するだけで3Dの体型データが保存され、オーダーできるというものである。

格安オーダースーツから新ブランド創設へ

与件として設定されていたのは、かつて大手百貨店のオーダー部門のスーツ製造に特化していた企業である。早くから中国に製造拠点を立ち上げ、アパレル用のCAD/CAMを活用して効率化を実現していた。

百貨店の破たんによって経営危機に陥ったが、格安のオーダースーツ直販ビジネスに切替えることで再建を果たしたとされている。

しかし、大手紳士服チェーンを始めとしてオーダースーツ参入業者が増え、競合が激しくなったため、より高級感のある新ブランドを創設した、という設定である。

大学生を始めとした若者や女子向けに新ブランドを浸透させるには、どのようなメディア、コンテンツを用意すべきか。SNSや動画配信を通じて双方向コミュニケーションを実現するには何をすべきか。会員登録促進のため、どのような施策を講じるのか。イベントを開催し、集客や認知を広める方法など。
クロスメディアエキスパートの論述試験では、これらを提案書としてまとめることが求められる。

アパレル業界やスーツ市場の専門知識があるかどうかではない。
与件から当該企業の課題を読み取り、対象を絞り込んで訴求できること、どのメディアにどんなコンテンツを用意するか、どのような手法で発信し、ファンを育成するのか、適切なスケジュールと費用を提案書としてまとめることが求められている。
そして、最終的に課題を解決できるコミュニケーション戦略となっているかどうかが問われている。

「デジタル×紙×マーケティング」のスキル とは

現在の印刷企業には、デジタルメディアと紙メディアの強みを組合せ、クライアントの課題を解決すること、つまり、「デジタル×紙×マーケティング」が求められている。
これを実践するスキルを磨くには、何よりも経験が重要である。実践経験なしに、このようなビジネスを推進することはできないだろう。

しかし、基礎的なマーケティング知識や企画提案の考え方を身に付け、将来的に「デジタル×紙×マーケティング」プロジェクトのリーダーとなるには、クロスメディアエキスパート認証試験を通じて得られるものも多い。

(研究調査部 千葉弘幸)

クロスメディア 記述試験 【過去問題と解答例】

「デジタル×紙×マーケティング」を実践する人材の育成

先般のpage2019は「デジタル×紙×マーケティング」をメインテーマとして開催し、盛況のうちに終えることができた。「印刷物の価値を高めるために何をすべきか」という答えのヒントを見つけた方も少なくないだろう。

「デジタル×紙×マーケティング」の基礎力

「デジタル×紙×マーケティング」を一言で表すと、デジタルの良いところと紙の良いところをうまく使って、顧客のマーケティング活動に貢献することである。

それを実現するには、「デジタル×紙×マーケティング」の基礎力をアップすることが重要である。顧客が考えているマーケティングとはどういうものか、デジタルの強みと紙の強みとは何か、まず一般的な知識として身に付けなければならない。

そして、実際に「デジタル×紙×マーケティング」ビジネスをスタートするは、企画・提案力が必要である。

これらは相談や依頼があって始まる受動的ビジネスではなく、自ら企画・提案することで始まる能動的ビジネスである。デジタルの強みと紙の強みを組合せ、顧客が抱えている課題を解決する方策を企画・提案しなければ、ビジネスは始まらない。他社と差別化することもできない。

クロスメディアエキスパートと「デジタル×紙×マーケティング」

JAGATでは、クロスメディアエキスパート認証試験を実施している。ここでは、「マーケティング」「メディアとコンテンツ」「デジタルメディア技術」の3分野に関する知識が問われる。

ここでいうマーケティングは、基本的なマーケティングに最新のデジタルマーケティングを加えた内容である。「メディアとコンテンツ」は、クロスメディアという言葉通り、デジタルの強みと紙の強みを正確に把握しているかどうか問う内容である。

第2部の論述試験は、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を作成するものである。
試験形式であるため、制限時間内に与件文を理解し、一人で解決策を考え、提案書にまとめなければならない。そのため、基礎的な知識や理解力、企画・提案の実力が問われることとなる。

第26期試験では、「コインランドリービジネスをおこなうA社」が与件として出題された。

優秀解答では、以下のような内容が提示されていた。
(1)店舗近隣の住民に対する来店促進キャンペーン
・Web広告
・近隣の駅ポスター、サイネージ
・QRコードでWebサイトのキャンペーンページに誘導
・キャンペーンページで、クーポンを発行し、会員登録を促す
(2)SNS公式アカウントの開設
・twitter、インスタグラムに公式アカウントを開設、発信と交流をおこなう
・サービス紹介、洗たくモノの実用的知識や動画を発信
・画像投稿キャンペーンによる来店促進、ファン化促進
(3)Webサイトコンテンツのリニューアル
・サービス体験談をマンガにして配信
・ランドリーサービスのコストシミュレーションを算出・発信。
・プロが教えるシミぬき・汚れ落としを動画で紹介。
・安全性のPR

顧客から見て、「やってみたい」と思える期待感のある提案内容となっている。
クロスメディアエキスパート認証試験を通じて学習することが、「デジタル×紙×マーケティング」の実践に役立つことは疑いないと言える。

(研究調査部 千葉弘幸)

(※関連ページ)
クロスメディアエキスパート記述試験 【過去問題と解答例】

YouTuberビジネスの進化

YouTuber(ユーチューバー)とは、動画共有サービスであるYouTube  に動画を投稿し、広告収入などを得る人のことである。近年、日本でも有名YouTuberの存在や高収入が知られており、小学生の「なりたい職業ランキング」の上位に挙げられるほどである。

有名YouTuberの場合、ほとんどはプロデュースやマネジメントを代行する事務所に所属し、活動していると言われている。人気が高く莫大な視聴回数を得られるクオリティを維持するには、専門的なチームやスタッフ力が必要と言うことだ。

ライアン・トイズレビュー(米国)は、7歳のライアン君がおもちゃを紹介する大人気のYouTubeチャンネルである。累計の再生回数は200億回以上であり、数10億円の収入を得ていると言われている。実際には、30人規模のスタッフが支えているようだ。
おもちゃ製品のレビューと言うことは、事実上はメーカーとのタイアップであると推測される。

https://www.youtube.com/channel/UChGJGhZ9SOOHvBB0Y4DOO_w

日本国内では、YouTuberの視聴対象は小中学生や10代が中心という印象が強い。
しかし、米国や中国などではあらゆる年齢層に向けた動画マーケティングであり、大きな広告ビジネスに進化しているようである。

(JAGAT 研究調査部 千葉弘幸)

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動画チャンネルの運営、動画制作・配信、YouTuberプロデュースなどの立場から、動画マーケティングの近未来をテーマにディスカッションを行います。