投稿者「Hiroyuki Chiba」のアーカイブ

DTPエキスパート認証試験 2本立てのねらい

JAGATは、2019年10月28日、DTPエキスパート認証制度を2段階制への改定を発表した。つまり、今後のエキスパート試験は、学科だけを受験するDTPエキスパートと、学科・実技の両方を受験するDTPエキスパート・マイスターの2本立てとなる。

従来のエキスパート制度の経緯

DTPエキスパート試験は、1994年の創設以来、DTP・印刷に関する知識を問う択一式の学科試験、および与えられた期間内に課題を提出する実技試験から構成されていた。
幅広い知識と制作実務の技能の両方を備えていることを認証していた。

DTPは、言うまでもなくデジタルデータとして印刷物を制作する技術であり、制作実務の重視は当然である。また、この試験の特徴として、制作部門を統率するリーダーの能力を問うために、制作指示書の作成を課している。プレーヤーとして実務を全うするだけでなく、チームリーダーとして他者に的確な指示を行い、業務を遂行する能力を求めている。

また、営業担当者や営業企画部門の受験も増えている。近年の傾向として、制作・製造部門に属する受験者が50〜60%、営業部門の方が30%前後である。

DTPエキスパートの有効性として、共通言語の理解を挙げる方も多い。
印刷業界では、営業部門と制作製造部門、デザイナーやクライアントとやり取りする際に、専門用語や業界特有の表現は欠かせない。
若手社員や経験年数が少ない方など、それらをあやふやに理解しているために、誤解や不測事態を生じることもある。共通言語を理解していれば、どんな部門や立場の人とも、正しいコミュニケーションを取ることができる。

実技試験のあり方を再構築

実は、以前より受験を推進する企業などから、実技無しの試験方式を望む声があった。つまり、実技試験の内容や技能を実務で必要とする人間は一部に限られている。実技課題に取り組むには、PCやDTPソフトウェア一式を用意し、習得のための研修費用も安価ではない。

DTPエキスパートの制度を検討する認証委員会でも、数年前から実技試験の意義やあり方について議論を重ねていた。
実技試験の有用性について異論は少なかった。実技に触れる機会が無い方こそ、エキスパート試験の受験をきっかけに実技に触れることができる。実技試験が貴重な機会を提供するという考え方である。
反対に、実技試験があるために受験を見送り、その結果、学習の機会を逃しているという考え方もあった。学科試験だけでもバランス良く知識を身に着けることができ、共通言語を理解することができる。

そうして行きついた結果が、今回のDTPエキスパートとDTPエキスパート・マイスターの2本立て試験である。

(新)DTPエキスパートは実技試験を必要としない方のものである。
DTPエキスパート・マイスターは、従来と同様に学科・実技の両方を受験する。2つの試験で実施される学科試験は、同時に実施され、内容も同一である。DTPエキスパートが難易度が低いという意味ではない。

したがって、初回はDTPエキスパートを受験して合格した方は、次回以降に実技試験(アップグレード試験)を受験し、マイスター取得を目指す2段階方式を選ぶこともできる。アップグレード試験の受験には期限はなく、半年後でも数年後でもチャレンジが可能である。

また、DTPエキスパート・マイスターを受験し、学科試験が基準に達していれば、実技試験が不合格でも(新)DTPエキスパートとして認証される。

DTPエキスパートの2本立ては、DTPエキスパートという機会を利用して、知識や技術を身に着けたいという人のための制度である。人によって、またバックアップする企業によって求めるものに違いがあり、その道筋をいくつかに分けている。使い分けて利用してもらえると幸いである。

(JAGAT 研究調査部 千葉弘幸)

■DTPエキスパート認証試験、2020年3月より2段階制に改定

2019の印刷関連トピックと技術を振り返る

12月になると流行語大賞や今年の漢字などが話題となり、年末には10大ニュースも発表される。このように1年を振り返ることが多くなる。

JAGATがその年を総括する目的で開催しているイベントがトピック技術セミナーである。1年間の印刷関連のトピックや技術を発表していただく。
12月恒例のイベントとして定着しており、今年で46年目の開催となる。

■これまでの特別講演

近年、特別講演として取り上げた内容には以下のようなものがある。

・2013年「3Dプリンター技術と新ビジネス展開」
・2014年「POD出版サービスNextPublishing」
・2015年「講談社のデジタル印刷と小部数出版」
・2016年「欧州の印刷ネット通販」
・2017年「家庭とビジネスを変えるスマートスピーカー」
・2018年「スマートファクトリーの目指すもの」

印刷ビジネス・技術や出版だけでなく、最新のIT機器なども幅広く取り上げている。

Think Smart Factory2019で見えてきたもの

2019年の特別講演ではホリゾン・ジャパンの宮崎氏に、11月11日~13日、京都「みやこめっせ」で開催された「Think Smart Factory2019(TSF2019)」について、振り返っていただく。

TSF2019では、近未来の印刷工程として自動化、省力化、スキルレスなどのソリューションや印刷業務管理システムと印刷・加工機器との連携などが提示され、密度の濃いセミナーも多数開催されていた。
国内外から多くの見学者が来場されていたとのことである。

オンライン校閲・推敲ツール「文賢」

もう1つの特別講演では、オンライン校閲・推敲ツール「文賢」による文章作成支援を取り上げる。
文章の言い回しや用字・用語などをオンラインでチェックし、適切な表現を提示するサービスである。

近年ではウェブなどの文章を作成するライターの質の低下が問題視されている。このサービスを利用することで、執筆に慣れていない人でも、平易で読み易く、伝わり易い文章を作成することが可能となる。

主要メーカーの講演

Samba JPC関連製品と技術(富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ)

高画質インクジェットデジタル印刷機「Jet Press750S」の基幹部品であるインクジェットコンポーネントを製品化したもので、他の印刷機メーカー向けに先日、発売された。

Primefire(プライムファイア)106(ハイデルベルグ・ジャパン)

drupa2016で発表されたB1インクジェットデジタル印刷機である。CMYK+オレンジ・バイオレット・グリーンの7色でPantoneカラーの95%をカバーし、パッケージ印刷に対応することができる。

先般、国内1号機が共進ペイパー&パッケージ社に導入され、稼働したばかりである。

SCインクとTruepress Jet520HD(ScreenGPジャパン)

「Truepress Jet520HD」はフルカラー対応のインクジェット印刷機で、2006年の発売以来、累計1,500台の出荷実績がある。
SCインクは、前処理やプライマー処理を施すことなくコート紙に印刷することが可能であるため、応用範囲が広いことが特徴である。本セミナーでは、SCインクを中心に解説していただく。

Impremia NS40とナノグラフィー技術(小森コーポレーション)

「Impremia NS40」は、ランダ社のナノグラフィー技術を搭載したB1サイズデジタル印刷機である。超微細な粒子で水性のナノインクをブランケットに噴射し、原反に転写するという画期的な方式で、高速で高品質印刷を実現する。

2020年春から国内のベータサイトとして新和製作所が参加することが発表されており、注目されている。

2019年を振り返ることで、今後の印刷技術とビジネスを考える機会としてもらいたい。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)

12/12(火)トピック技術セミナー2019

DTPエキスパート認証試験、2020年3月より2段階制に改定

公益社団法人日本印刷技術協会(略称:JAGAT、東京都杉並区、会長:塚田司郎)は、2019年10月28日、DTPエキスパート認証制度を2段階制に改定することを発表しました。

DTPエキスパート認証制度の概要と改定の背景

DTPエキスパート認証制度とは、DTPによる印刷物製作および印刷ビジネスに必要な知識を体系化したカリキュラムにしたがって試験を行い、その知識を習得した方をDTPエキスパートとして認証する制度です。
1994年以来52回の試験を実施し、延べ合格者数は22,000人を超えています。DTP・印刷の知識をバランス良く身に着ける手段として、国内印刷業界ではスタンダードなものとなっています。

この試験は、DTPおよび印刷に関する知識を問う択一式の学科試験、与えられた期間内に課題を提出する実技試験から構成されています。

しかし、実技課題に取り組むには主要なDTPソフトウェアを入手し、操作を習得する必要があり、制作部門従事者以外には高いハードルとなっていました。

例えば、営業担当社員の育成を目的として受験促進を図ろうとする企業からは、学科試験のみの受験制度を要望する声が上がっていました。

「DTPエキスパート」「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制に改定

このたび、DTP エキスパート認証制度を「DTPエキスパート」「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制に改定します。

新たに学科試験だけの試験を実施し、その合格者を「DTPエキスパート」として認証します。
従来と同様の学科試験・実技試験の合格者は「DTPエキスパート・マイスター」となります。
「DTPエキスパート・マイスター」試験を受験し、学科試験のみ合格(実技試験に不合格)となった方は、「DTPエキスパート」として認証されます。

2020年以降にDTPエキスパートに合格した方は、将来、実技試験だけを受験することができます(アップグレード試験)。この試験に合格すると、DTPエキスパート・マイスターとして認証されます。

また、2019年までにDTPエキスパート資格を保有している方は、実質上 DTPエキスパート・マイスター と同等と見なされます。そのため、次回の更新試験に合格した時点でDTPエキスパート・マイスターとして認証されます。

2020年3月に実施する第53期試験より、この2段階制に改定します。

この改定により、印刷ビジネスに携わる多様な職種の方々に、DTPおよび印刷関連知識の習得機会を提供します。
例えば、若手社員や企画・営業担当でDTP・印刷の基礎を着実に習得したい方にとって、DTPエキスパートは取り組みやすい試験となることが予想されます。

次回DTPエキスパート認証試験の実施予定

第53期DTPエキスパート認証試験は、2020年3月15日(日)に実施します。
受験申請期間は1月7日(火)~2月13日(木)となっており、同サイトの申請フォームから申込むことができます。
次回試験の詳細や受験料は、受験要項と共に近日中に発表されます。


【2段階制の概要】

種別 試験科目 備考
DTPエキスパート・マイスター 学科・実技 DTP・印刷に関する広範な知識と制作・管理の実務能力を備えている
DTPエキスパート 学科 DTP・印刷に関する広範な知識を備えている

※DTPエキスパート・マイスターを受験し、学科試験のみ合格された方は、DTPエキスパートとして認証されます。次回以降、アップグレード試験を受験することもできます。

【DTPエキスパート・マイスターへのアップグレード】

2020年以降のDTPエキスパート取得者は、認証有効期限内であれば、任意の期にアップグレード試験を受験することができます(2020年9月より実施)。

種別 対象者 試験科目 合格後
アップグレード試験 DTPエキスパート(2020以降) 実技 エキスパート・マイスター認証

【2019までのDTPエキスパート保有者】

2019年までにDTPエキスパート資格を保有している方は、実質上DTPエキスパート・マイスターと同等と見なされます。そのため、次回の更新試験に合格した時点でDTPエキスパート・マイスターとして認証されます。

種別 対象者 試験科目 合格後
更新試験 DTPエキスパート(2019まで) 学科(CBT) エキスパート・マイスター認証

※CBT:時間・場所の制約を受けずに、Webブラウザ上で実施する試験方式

(資格制度事務局)

DTPエキスパート・マイスター実技試験

デザイン性とデータ制作力を重視 (DTPエキスパート・マイスター実技試験)

第28期クロスメディアエキスパート 論述試験の出題意図と講評

2019年8月25日(日)、第28期クロスメディアエキスパート認証試験が実施された。第2部論述試験は、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を作成するものである。今期より解答方式を一新している。

観光牧場への企画・提案

テーマは、「富士山麓にある観光牧場」である。提案先は、長く牧場を運営し、独自ブランドの牛乳やチーズ・バターなどの乳製品を製造・販売している。自社製品のブランドを広く認知してもらうことを目的として、新たに第2牧場を増設し、観光牧場としてオープンした、という設定である。

ファミリー層や若者向けに新ブランドを浸透させ、来場者を増やすにはどのようなメディア、コンテンツを用意すべきか。SNSや動画配信をどのように活用するか。来場促進イベントとして何ができるか。これらを提案書の要素として記述することが求められる。

新解答方式のポイントと採点基準

従来の解答形式は、いくつかの個別設問とA4用紙3ページにフリーフォーマットで提案書全体を記述するものだった。そのため、提案内容だけでなく、提案形式についても熟考する必要があった。

新形式は、提案書の検討段階において、内容を整理しつつ所定のフォーマットに記述するという設定である。その結果、提案内容に集中して考察し、解答することができる。

【問1】[課題設定]

【問2】[ターゲット]

【問3】[提案の基盤・方針]

        ※「問4」の施策内容の前提となる方針・方向性を記述する。 施策内容との一貫性は重要

(1)A社へ提案する施策を発信する主メディアとその選定理由
     (認知促進、興味・関心の醸成)
(2)メディアを通じて発信・訴求する主要コンテンツとそのねらい・意図
(3)(1)の主メディアを含む複数メディア間の連係を誘導するしくみ
(4)共有・拡散を促すしくみ

【問4】[提案する施策内容]施策内容を3件にまとめる

【問5】[実行スケジュール]準備・実行・フィードバックなどのスケジュール

【問6】[概算見積]スケジュール項目と対応により費用の妥当性が増す

【問7】[タイトル]施策内容を分りやすく伝えることが重要

【問8】[序文(挨拶文)]企画・提案に臨む姿勢・背景など

【問9】[施策の総合的効果]問4に記述した施策のまとめ
(1)自社(X社)の強み・採用する意義
(2)提案先企業(A社 ) における競合他社との差別化対策
(3)施策内容の総合的な効果・まとめ

講評

新解答方式は、提案書の要素となる部分を一問一答式で回答するものである。その結果、従来と比較して、答案内容が詳しく記述される傾向があった。
複数メディアの連係、コンテンツ、共有・拡散の方法、提案先における差別化、自社アピールなど、施策内容とは別に個別の設問に解答することに変更されている。そのため、より明確に記述されているものが増えた。

提案内容としてはファミリー層にアピールするための牧場祭り、マスコット牛の選挙などのイベント開催や、WebサイトやSNSにおける動画でのアピール、クーポンの発行など通じて、認知度を高め、来場促進を図る施策などを記述したものが多かった。また、実行スケジュールや概算見積は、表形式のフォーマットに記述する形式に変更されている。結果として、項目の選定や期間の設定と費用算出など、全体的により明確な回答が増えた。

今回の変更では、事前に設問・解答方式を公開し、提案書に必要な要素を明示したことにより、大きな混乱はなかった。受験者にとっては事前の準備を通じて、クロスメディア企画・提案に関する理解が深まったと考えられる。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)

急成長する動画マーケティング

スマートフォンが普及したことで、動画を視聴する機会が飛躍的に増えた。動画サイトで関心のある動画を自ら検索して視聴すること以外にも、ニュースサイトやSNSの閲覧中に動画枠が表示され、動画広告が再生されることがある。
日本国内の動画広告市場は急成長を続けている。サイバーエージェントの調査によると、2018年の動画広告市場は約1,843億円で、2024年には4,957億円に達する見込みとのことである。

ターゲットにダイレクトに伝えるビデオリリース

NewsTVは、ビデオリリースの製作・配信を行っている。

新製品やキャンペーンを発表する際、通常は記者発表会を開催してメディアに取材してもらう。記事やテレビ番組で取り上げてもらうことで、生活者に情報が届く。

ビデオリリースは、記者発表会そのものを60~90秒程度の動画にし、自社のアドネットワークを通じて配信する。FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSでも、ターゲットを絞った配信を行っている。生活者のスマートフォンにダイレクトに配信できる。エリア限定の配信も可能である。スーパーであれば、店舗の半径5キロ以内のようにチラシ的な配信も可能である。動画制作費は無料で、配信料をいただくサービスである。

自社のDMPがあり、8千万ユニークユーザーのデータを保有して、その動向を分析している。配信時の離脱状況を1秒毎に把握しており、その結果をクリエイティブに反映させている。

「3秒ルール」とは、ワンカット3秒以上なら離脱されるということである。また、タレントが同席する記者発表会では、シナリオがあってタレントに言わせる決めのセリフがある。例えば「世界で初めて」のようなインパクトのある一言を冒頭に持ってくる。反対に、広い家や雑踏、木漏れ日などのイメージ映像を差込むことはやってはいけない。男性のコメントは短めでなければならない。

なぜ離脱を恐れるのかというと、視聴時間が長いほど態度変容に効くからである。その分だけ認知度や好意度、購買意欲が上がるという法則がある。

動画広告の自動生成ツールRICHKA

カクテルメイクは、代理店に特化した動画生成ツール「RICHKA for Agency」を販売している。インターネット広告を扱う代理店には、「動画制作コストをできるだけ下げたい」「複数のクリエイティブを用意したい」「PDCAを回して効果を上げたい」という課題がある。動画広告の自動生成ツールによって、これらの課題を解決し、動画広告ビジネスを成長させることができる。

実際に最後まで見てもらえる動画広告はめったにない。伝えたいことは最初に伝えることが鉄則である。スマートフォンで見る動画であれば、2秒以内に注意を引くアテンションを入れる。

リチカでは、動画制作が容易であるため、さまざまなパターンを試すことができる。例えば、同じ動画でテキストだけを変えたものを複数用意して、試してみる。そうすると、一番効果の高い動画がどれで、どのパターンが最強なのかを検証できる。自動生成ツールを使うことで、このようなノウハウを確立することができる。 特別なスキルや知識は必要とせず、営業マンでも扱える。代理店が動画を提案する場合、通常は絵コンテを提示する程度である。リチカなら見本をいくつか製作して持っていくことができるため、営業面でも有利となる。

今後も成長が期待される動画マーケティング

動画が伝える情報量は、たとえ数秒であっても膨大でありインパクトが大きい。成長が著しいインターネット広告も動画広告が中心である。テレビ放送と違い、ターゲットを絞って送り届けることも可能である。
今後も新しい動画のパターンが誕生し、成長が続くと考えられる。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)

プログラミング教育、情報教育の重要性

小学生のプログラミング教育

2017年に発表された新学習指導要領では、小学生からプログラミング教育を導入することが盛り込まれた。「プログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付ける学習」と記されており、情報機器の操作やプログラミング体験を通して、プログラミング思考を習得するという主旨らしい。2018~2019年の移行期間を経て、2020年度から全面実施となるそうだ。

これだけ聞くと、素晴らしい取り組みと思える。プログラミング教育を通じてIT社会の発信側の考え方を学ぶことは、情報リテラシーの基礎となり、たいへん有意義である。しかし、コンピュータ機器や環境の整備、指導者側のスキルなど、十分に用意できているのだろうか、自治体や都道府県で温度差があるのではないか、と多くの方々が懸念されているようでもある。

高校における「情報」教科

高校においても、2003年から「情報」科目は必修となっている。2013年の高校の学習指導要領の改訂で「情報の科学」 「社会と情報」 という教科が新設され、どちらかの科目を選択することになっている。試しに2科目の教科書、「情報の科学」(東京書籍版:2018年発行)と「社会と情報」(東京書籍版:2018年発行)を入手してみた。

「情報の科学」では、フィルムカメラとデジタルカメラの違いからアナログとデジタルを比較するなど、的確で分かりやすい解説がある。文字コードや3原色の原理から、コンピュータで文字や画像を表示する仕組みを説明している。通信ネットワークやWebサーバーからインターネット環境が構成されていること、電子メールの仕組みなど、基本的な内容が簡潔にまとめられている。

さらに、問題解決の章があり、情報の分析・モデル化・アルゴリズム・プログラムといった項目がある。また、情報社会の分野では学習・仕事・家庭の環境、セキュリティ、情報の信頼性、メディアリテラシー、コミュニティ、モラル・マナーといった項目もある。

今日のIT社会を理解する基本的な仕組みや知識、リスクなどが網羅されており、良く考えられた教科書だと感じた。限られたページ数であり、詳細な解説は望むべくもないが、IT教育として重要な項目が網羅されている、という印象である。

20代の若手職員に、高校生当時に「情報」科目についてどのような勉強をしたか、聞いてみた。すると、「『情報』の教科書を開いた記憶がない。試験もなかったので勉強したこともない。」「実際にやったのは、ワープロ、表計算、プレゼンテーションソフトの実習だけ。」という言葉が返ってきた。

最近の学生は幼少期からパソコンに触れ、習熟している者もいれば、スマートフォン以外にはほとんど触ったことがない者など、情報格差が拡大しているとも聞く。

印刷業における体系的基本知識の習得は?

新入社員研修でDTP実習や印刷実習を課す印刷企業は、少なくない。ビジネスマナーや印刷知識、営業研修などと共に、1~2日程度の実習が取り入れられている。つまりは体験目的の実習であり、体系的な知識や判断力を修得することはできないだろう。

例えば、印刷物制作で付加されるトンボは、何のために必要で、なぜあの形になっているのか、印刷工程の全体像が見えていなければ、簡単には理解できない。

プロ用途のアナログカメラがほぼ皆無となり、デジタルカメラのデータ入稿だけとなった。つまり、RGBデータを印刷するにはCMYK変換が伴うため、カラーマネジメントの知識は必須である。

オフセット印刷のビジネス全体は停滞しているが、デジタル印刷の市場は年々成長を続けている。これは、単に印刷方式の変更やコストダウンが目的ではなく、在庫レスの実現、最新情報を反映した印刷物をタイムリーに提供する、パーソナライズDMで絶大な効果を上げる、など顧客の課題を解決する手段が求められているからである。

印刷業務に関わる専門家、つまり印刷人であれば、営業担当であろうと制作担当であろうと、印刷工程の体系的な理解や専門的な知識が必要となる。

DTPエキスパート試験は、DTPだけでなく印刷技術、カラー、情報システム、情報コミュニケーションという現代の印刷業務に必須で基本的な分野をカバーしたもので、合格者は印刷工程を体系的に理解し、専門的な知識を有するとされている。基本に立ち返って学習することで、今後のビジネスに大いに役立つことは間違いない。

現代社会で体系的なIT教育の重要性が高いことは明らかであり、学校教育でプログラミング教育や「情報」教科などが充実されることは望ましいことである。しかし、実現可能なのは薄く広く程度であることは致し方ないと言えるだろう。

一方、社会人に求められる情報リテラシーやスキルは、より専門的で体系的な学習が必要である。組織としても、個人としても、体系的な知識を習得して専門性を高めることが重要である。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)

第52期DTPエキスパート認証試験 新出題項目

2019年8月25日(日)に実施する第52期DTPエキスパート認証試験の新出題項目を、下記の通り発表します。

■新出題・修正項目

(1)印刷用紙の組成と印刷適性

(2)DTPアプリケーションの基本操作

(3)RGBワークフロー

(4)色差の表現方法

(5)レンダリングインテント

(6)オフセット印刷機の用紙搬送

(7)オフセット印刷の版材

(8)電子写真の仕組みとトナー

(9)校正・校閲と検版

(10)油性インキとUVインキ

(11)インクジェット印刷の仕組みと色材

(12)欧文組版

以上の項目がそのまま問題数と対応するわけではありません。項目によっては2つ以上の出題になる場合があります。
また、新出題にともなって従来問題の入れ替え、統合、削除や改訂を行ないます。その結果、新出題項目を中心として全体の10~20%程度の問題が入れ替わることになります。

※ご注意

この発表はあくまでも新項目であり、新問題の発表ではありません。
試験の公平性維持の観点から、詳細な情報提供は行いませんのでご承知下さい。

(JAGAT 資格制度事務局)

クロスメディアエキスパート認証試験 解答形式を改定

公益社団法人日本印刷技術協会(略称:JAGAT、東京都杉並区、会長:塚田司郎)は、2019年5月27日、同協会クロスメディアエキスパート認証制度の試験形式の改定内容を発表しました。

クロスメディアエキスパート 論述試験の解答形式を変更

クロスメディアエキスパート認証試験とは、「デジタル×紙×マーケティング」ビジネスを推進する「企画提案型人材の育成」を目的とした制度です。2006年以来、27回の試験を実施しており、延べ受験者数は約4,000人、合格者累計は1,323人となっています。

この試験は、「マーケティング」「メディアとコンテンツ」「デジタルメディア知識」を問う択一式の学科試験と、顧客企業のヒアリング報告書を読み、コミュニケーション戦略の企画提案書を作成する論述試験の2部構成となっています。

受験を通じて、クロスメディアビジネスに求められる知識と企画提案力を習得することができます。

第2部の論述試験は、従来、提案書全体をフリーフォーマットで記述する方式でした。新たに提案書の要素を個別に記述する固定フォーマット方式に変更します。

この変更によって、設問に対してより適切な解答を記入しやすくなり、結果的に実践的で質の高い企画提案を記述することが期待されています。新解答フォーマットの詳細は、同協会のWebページにて公開しています。

論述試験形式の変更は、2019年8月に実施する第28期試験より適用されます。

クロスメディアエキスパート論述試験 新解答形式サンプル

次回クロスメディアエキスパート認証試験の実施予定

【 試験日 】   2019年8月25日(日)
【受験申請期間】 2019年 6月25日(火)~8月5日(月)

クロスメディアエキスパート論述試験 新解答形式

JAGATは、第28期クロスメディアエキスパート認証試験における論述試験形式の改定を発表しました。下記に、解答形式のサンプルをリンクします。

クロスメディアエキスパート論述試験 第28期 解答形式サンプル

第28期試験以降は、この形式に基づいて出題されます。
(ただし、出題形式は予告なく変更される可能性もあります)

論述試験 新解答形式の解説

問1【課題設定】
※課題設定と施策内容の一貫性は重要となります。

問2【ターゲット】
※メインターゲットを絞り込むことで、そのターゲットに効果的な作用を及ぼす施策が可能になります。

問3【提案の基盤・方針】
(1)A社へ提案する施策を発信する主メディア(認知促進、興味・関心の醸成)とその選定理由
[メディア]
[選定理由]
(2)メディアを通じて発信・訴求する主要コンテンツとそのねらい・意図
[コンテンツ]
[ねらい・意図]
(3)(1)の主メディアを含む複数メディア間の連係を誘導するしくみ
(4)共有・拡散を促すしくみ

※「問4」の施策内容の前提となる方針・方向性を記述することが求められています。施策内容との一貫性は重要です。

問4【提案する施策内容】A社に提案する施策を3件にまとめ、記述しなさい。
※施策内容を3件にまとめることが求められています。

問5【実行スケジュール】
※表の区分に従って、準備・実行・フィードバックなどのスケジュールを記述します。

問6【概算見積】
※施策内容に即した項目を設定し、概算見積を記述します。

問7【タイトル】
※施策内容を分りやすく伝えるタイトル (およびサブタイトル) を設定し、記述します。

問8【序文(挨拶文)】提案書の序文を(ですます調)で記述しなさい。
※企画・提案に臨む心情や姿勢、背景などを提案先に伝わるように記述します。

問9【施策の総合的効果】問4に記述した施策のまとめとして、下記項目を記述しなさい。
[自社(X社)の強み・採用する意義]
[A社の競合他社への差別化対策]
[施策内容の総合的な効果・まとめ]

※提案書のまとめに相当する部分です。
自社の強みや採用の意義を記述して下さい。
また、A社から見ると、(A社の)競合他社への差別化を実現できるかどうかは、採用の大きなポイントとなります。
そして、提案書の最後に施策内容の総合的な効果を簡潔に記述することは重要です。

(JAGAT 資格制度事務局)

第27期クロスメディアエキスパート 論述試験の出題意図と講評

2019年3月17日(日)、第27期クロスメディアエキスパート認証試験が実施された。第2部の論述試験は、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を140分の制限時間内に作成するものである。

8ページほどの与件文には、ある企業の事業推移や市場環境、競合企業の動向などが記述されている。提案ではターゲットを的確に絞り込み、適切なメディア選択、メディア連携を実現し、顧客の課題解決をおこなうことが求められる。

オーダースーツを製造・販売する企業への企画・提案

今回のテーマは、「オーダースーツを製造・販売する企業」という設定であった。新ブランド構築に際して、新たなコミュニケーション戦略を模索しており、企画・提案を求めている、という設定である。

提案先は、かつて大手百貨店のオーダー部門のスーツ製造(下請け)に特化していた企業である。早くから中国に製造拠点を立ち上げ、アパレル用のCAD/CAMを活用して効率化を実現していた。
百貨店の破たんによって経営危機に陥ったが、格安のオーダースーツ直販ビジネスに切替えることで再建を果たした。
しかし、大手紳士服チェーンなどオーダースーツ参入業者が増え、競合が激しくなったため、より高級感のある新ブランドを創設した、という設定である。

大学生を始めとした若者や女子向けに新ブランドを浸透させるには、どのようなメディア、コンテンツを用意すべきか。SNSや動画配信を通じて双方向コミュニケーションを実現するには何をすべきか。会員登録促進のため、どのような施策を講じるのか。集客や認知を広めるイベントの具体的なプランはどうするか?
クロスメディアエキスパートの論述試験では、これらを提案書としてまとめることが求められる。

提案書の採点基準

提案書の採点においては、以下のような記述が重要視されている。また、これらのポイントは実務上でも有効である。
今後、取り組む際には、このような点に留意するとさらに完成度が上がるだろう。

(1)コンテンツの企画・制作と発信

Webサイト、冊子・フリーペーパー、チラシなどどのメディアを使用するにしても、どんなコンテンツを発信するかが重要である。Webサイトの改定を行うのであれば、どのようなコンテンツを誰に向けて発信し、どのような効果を狙うのか。訴求力のあるコンテンツをどのようにして準備するのか。コンテンツの企画・編集、制作費用は適切かどうかも重要である。

(2)メディア選定理由

メディア選定理由を問う設問があり、なぜそのメディアが適しているかを回答することが求められている。つまり、メディアの特徴(長所・短所)を正しく認識し、それを活用しているかどうかが問われている。

(3)提案書の挨拶文

挨拶文であるため、分析・評論するような文体は避けるべきである。例えば、顧客の業績や状況に関する認識を表現する場合、リスペクト感が伝わるような記述が望ましい。

(4)消費行動モデルに即した提案内容

消費者・生活者の心を動かすには、消費行動プロセスモデルに即した方法が有効である。インターネット時代に有効とされるAISASモデル(注意・関心・検索・行動・共有)やAISCEAS(注意・関心・検索・比較・検討・行動・共有)に即した施策は効果的である。また、SNSやコンテンツマーケティングに即した消費行動モデル(SIPS、DECAX)も有効である。

消費行動プロセスにおける位置付けを明確にすることで、提案内容の説得力を高めることができる。

(5)コミュニケーション施策の全体設計と自社の強み

例えば3つの課題に対して、バラバラに施策を立て、それらを並列で実施するだけでは大きな効果を期待できない。複数の施策の連係によって相乗効果を生み出すような記述が期待される。
また、自社(提案する側)の強みをアピールすることも重要である。いくつもの提案の中から自社の提案を採用することが、もっとも適切で効果的であることを伝えなければならない。

(6)スケジュールと費用

スケジュールは費用算出の根拠ともなる。実務上でも、工数配分をベースに費用を算出することが多い。スケジュール上の規模感が、結果的に費用に反映されていると提案の妥当性が増す。例えば、企画・設計の期間や費用を適切に見込んでいるか、Webサイトの維持・改善の工数を見込んでいるかどうかなども、妥当性を示すポイントとなる。

印刷物を使用する場合、原稿を受領してデザイン制作をするのではなく、印刷物の企画・原稿執筆・データ制作を含める必要がある。さらに、印刷・製本して納品することがゴールではなく、エンドユーザーへの配布方法や費用を見込む必要がある。

(7)競合他社との差別化

提案先とその競合他社との差別化は、もっとも重要な項目の1つである。最終的に「競合他社との差別化」を実現する提案でなければ、採用されることにはならない。提案書の中で強調されていなければならないポイントである。

講評

画一的でサイズやフィット感に制約のある既製スーツと比較すると、オーダースーツは魅力的な製品である。価格が同等であれば、関心を持つ者は少なくないだろう。
就職活動などで初めてスーツを購入する男女学生が、オーダースーツを通じてこの企業のファンになれば、リピート購入だけでなく、周囲へのインフルエンサーになることも期待できる。そのための仕掛け作りが求められている。

展示即売会を開催し、集客することができれば、オーダースーツを実体験するだけでなく、購入に結びつくことになる。ブランド力のあるメーカーや店舗であれば、そのようなことも可能であるが、新興メーカー・ブランドでは容易ではない。

例えば、店舗での採寸から完成・試着までのプロセスを動画で視聴できれば、オーダースーツの実態を知ることだけでなく、フィット感や満足度などを疑似体験することになる。
さらには、オーダースーツの購入者自身が画像や動画を発信し、コミュニケーションを図る場を設けることで、ユーザー側の評価を浸透させることが可能である。

解答における施策には、大学構内のPOP広告からスマホを通じたWebサイトへの誘導、動画による疑似体験や基礎知識の発信、SNSの活用によるコミュニケーション促進などがあった。InstagramやTwitter、FacebookなどのSNSを活用し、双方向コミュニケーションやファン作りを意識したものも多かった。
AISAS、AISCEASなどの消費行動モデルを反映したシナリオがあると、さらに説得力が上がるだろう。

(資格制度事務局)