投稿者「太齋一江」のアーカイブ

ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造

 

サカタインクス株式会社 取締役オフセット事業部長 三宅 悟氏に聞く

 

創業112周年を迎えるサカタインクスは、環境経営を最重要課題として、コア事業であるインキ製品では「地球に優しく、人に優しく、そして美しく」を製品開発の基本とし、環境配慮型製品を数多く揃え、さらに基盤技術を駆使した製品の研究開発を推進している。また、北米、ヨーロッパはもちろんのこと、中国、ベトナム、インドなど成長著しいアジア地域での生産拠点の拡充も図っている。
2007年6月にオフセット事業部長に就任した三宅悟氏に今後の事業展開などを伺った。

――環境対応に力を入れ、事業的にも伸びているのか。

三宅 当社は環境配慮を経営の重要課題の一つと認識し、早くから環境対応型インキの開発に着手している。オフセット分野では10年以上も前から大豆油インキを提供しており、今ではほぼすべてのオフセットインキを環境対応型インキで提供している。さらに、軟包装用インキもノントルエン化を進めており、さらなる環境対応型インキとしてのノントルエン・ノンMEKインキや水性インキも販売している。
もともと当社は新聞用インキが発祥の製品であり、フレキソインキは水性。ともに技術面でもリードしており、環境対応製品を早くから提供してきた。オフセット業界で、最近一番注目されているインキに水なしノンVOCインキがある。「水なし印刷」は、オフセット印刷で一番環境に優しい方式であり、多くの企業のCSR報告書や環境報告書などに採用されている。当社は業界初のノンVOCタイプを開発し、提供しており、IGAS2007では新製品「NEXT」も紹介している。
顧客も「環境経営」に関心が高く、最近では中国、インドも環境への意識が高まってきており、最新鋭の環境配慮型インキが求められている。

――フレキソやパッケージの環境対応はどうなのか。

三宅 「フレキソ印刷」は水性インキを使用しているので、環境には一番優しい印刷と言え、欧米ではかなり浸透している。ただ、日本では図柄やデザインなど、印刷物の仕上面に対するクライアントの要望が非常に厳しい面があり、やはり最終的にはどうしても現状はオフセット、グラビアが中心であるが、フレキソを推進している印刷会社も出てきている。
パッケージの場合、埼玉などの環境条例による規制が非常に厳しい。軟包装用では、まだまだ主流はグラビア印刷で、それに適合する設備投資が大きくなっている。インキや溶剤の回収装置など、インキメーカーとして、設備などの紹介・提供などで協力している。原油価格が高騰して、フィルムやインキの材料も随分上がって、ある程度価格に転嫁できないと成り立たなくなっている。

――デジタルプリントの市場も、アメリカなどに比べると日本は非常に伸びが遅い。

三宅 POD分野では、以前からXeikonを扱っていて、出荷台数もある程度伸びている。今はミドルエンドを印刷業界がどうやって取り込むかが注目され、市場規模は5年後には10倍と予想される。当社はハイエンドからミドルエンドまで手掛け、各地でのセミナーなどを開催し、欧米での成功事例などを紹介し、その普及に努めている。
印刷需要が全体的に落ちてくる中、印刷会社は生き残りを懸けて、デジタルプレスやニス加工など、新しいものに挑戦している。当社は、これらニーズを踏まえ、デジタル印刷においても、付加価値の高い印刷物を提案し、各地のセミナーでは、バリアブルの活用法などを中心に、デモンストレーションを交えて紹介している。IGAS2007での「Xeikon 6000」と中綴じ製本機「IBIS Smart Binder」のインライン接続による実演も、この一環として効率化を図る目的での提案である。

――新しいインキの評価を伺いたい。

三宅 急速に拡大したフリーペーパーは「新ジャンル印刷物」として位置付けられるまでになっているが、低級紙が多く使用されていて、印刷トラブルの原因となっている。そこで、フリーペーパー用輪転機用インキ「ウェブマスター エコピュアMEGA J Lite(メガ ジェイ ライト)」を2007年5月に発売した。低級紙とコート系用紙の共存印刷時の紙面品質向上とコストダウンを両立する点が評価されて、順調に伸びている。

また、当社は日本で初めて導入された枚葉8色機用インキを担当して以来、豊富な経験とノウハウをベースに、圧胴適性、水幅適性、セット乾燥性、耐摩擦性をさらに進化させた 「ダイヤトーンエコピュアSOY 8 SPEC J」を同時発売した。従来品「ダイヤトーンエコピュアSOY 8 SPEC」に、新しく樹脂分散技術(IMGM)を採用することで、両面多色枚葉機での印刷時の課題であった、印刷後オフ輪並みのインターバルでの出荷が要求される「高い生産性」と、片面枚葉機と同レベルの「高い紙面品質(表裏差、ベタ・網バランスなど)」を両立している。近年、導入台数が増え続ける8色機用の「基準インキ」と位置付けている。

―― 8色機は色の管理などが難しいし、反転すると計測誤差が生じたり、メーカーによって特性の違いもある。営業担当者が個々の顧客に合わせていくのか。

三宅 技術担当が立ち会って、印刷環境や仕事の種類も見ながら、インキを設定している。

――紙との相性も御社でテストしなければいけないのか。

三宅 顧客のニーズによりマッチしたインキを提供するため一環として行っているもので、紙質検査の試験室を設け、酸性・アルカリ性、通気性や浸油速度などを測っている。いろいろな輸入紙が入ってきているが、日本の紙と特性が違うので、紙の検査をしないとインキの設定ができない。

――広色域のインキも出されているが。

三宅 高彩度インキ「ダイヤトーンエコピュアWCS」は7色のプロセスインキの中から任意選択で、独自のオリジナルプロセスを作成できる。既存設備の中で、最大限に印刷品質を上げ、決まった色数、色相を固定せず、フレキシブルに対応できることが最大の特徴である。

――「IGAS2007」で特に好評だったものや話題になったものはあるのか。

三宅 PDFデータの修正・変更を可能にする製版ソフト「NEO(ネオ)」が非常に好評で、会場で要望のあった検証用としての評価版が200本程度出ている。 また、ベルギーのEskoArtwork社の開発したConcentric(同心円)網点を発表した。AMスクリーンの滑らかさとFMスクリーンのインキ皮膜を薄くする特性を併せ持った画期的な網点で、インキマイレージの向上やモアレの解消などを実現する。最大の特徴は印刷中にインキを盛り過ぎてもドットゲインの増加がほとんどなく安定した色調の印刷が得られることだ。現在検証中だが、結構面白いと思っている。
今後とも顧客の要望を最優先に、新しい製品・サービスを提供していきたい。

サカタインクス株式会社
大阪本社:大阪市西区江戸堀1-23-37 TEL 06-6447-5811
東京本社:東京都文京区後楽1-4-25 日教販ビル TEL 03-5689-6600

 

(2008年3月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

EFIの統合ソリューションが、デジタル印刷の入口から出口までをカバー

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:EFIの統合ソリューションが、デジタル印刷の入口から出口までをカバー 

 

イー・エフ・アイ株式会社 セールスディレクター 南 文輝氏に聞く

 

EFIは1991年に、世界初のプリントコントローラ「Fiery」を発売し、現在までにワールドワイドに150万台以上を出荷している。印刷業界向けにはワークフロー・ソリューションやコントローラ・ソリューションを開発している。最近では、スーパーワイドフォーマットプリンタを含むインクジェットシステムも供給している。 新しい分野に活動範囲を広げているイー・エフ・アイの南文輝氏にお話を伺った。

--先日のPAGEに出展された。

 商業印刷のお客様に、新しいビジネスのご提案ということで出展した。大きな機械だったこと、通常の商業印刷とは異なるアプリケーションということで、注目度としては満足のいく結果だ。

--最近のビジネスについて。

 EFIは、もともとはRIPメーカーで、ほとんどのハイエンドの、主に生産機系のプリンタに対してプリントコントローラ、つまりRIPの部分をOEM供給している。それは今でもビジネスのコアであり、われわれの重要な部分だ。数年前からプルーフのソフトウエアを出しているのを始めとして、昨年からは産業用のインクジェットプリンタにも注力している。
EFIとして、コアであるRIP、もしくはカラーマネジメントというものが強みになっているので、そのRIPを使って、商業印刷でもデジタル印刷機でも、産業用のインクジェットプリンタの分野でも製品を提供しようという戦略だ。

--インクジェットプリンタについて。

 基本的には、われわれのコアコンピタンスであるRIPのビジネスでつながっているプリンタと競合しないものという前提だ。今後成長が見込める分野に特化して、一つがVUTEkというスーパーワイドフォーマットで、印字幅が2m以上の、主に野外や看板に使われるもの。 もう一つは、昨年買収したJetrionという製品でラベル、パッケージに対して高速でUVインクを使って運用するものだ。ユーザーは、ラベル印刷をやっている会社が主なターゲットと想定している。アプリケーションとしてバリアブルのバーコードや、当選くじのようなラベルがある。使い方は、フレキソで事前印刷して、可変の部分をインラインで印刷していく。今回PAGE2008で展示したものだ。drupaではフルカラーで白紙から全部可変印刷する製品を展示する予定だ。

--屋外の看板の戦略は。

 世界で最初にスーパーワイドフォーマット市場を立ち上げたのがVUTEk社だ。買収後、EFIとしては溶剤インクからUVインクにマーケットがシフトしているのを後押ししている。UVインクのプリンタとしては最高のスペックを持った製品だ。
また、メディアの相性など、どういうアプリケーションが使えるかというのがキーになるので、そのへんも併せてサポートしながら販売活動をやっていきたい。インクもEFIが供給する。VUTEkチームの中にインク専門事業部があり、開発から製造をアメリカで行っている。
また、Jetrionももともと、アメリカのプリントインクの事業部が母体となっているので、UVインクをJetrionチームが開発している。VUTEkとJetrionの技術者の情報交換もあり、一緒になったシナジー効果が出ている。

--販売ルートは。

 基本的には代理店経由で提供しているが、国内で直接販売してサポートする体制もある。Jetrionは、PAGEへも出展していたコスモグラフと、テイクの2社。テイクは従来からEFIのプルーフ製品の代理店もしている。

--どのような活動をしているのか。

 昨年は業界の展示会出展、セミナーやロードショーといって地方の営業拠点でのセミナーなどを実施した。新しいアプリケーションの紹介を主に行っている。

--お客様や市場の反応は。

 スーパーワイドの印字品質は、常に高い評価をいただいている。従来のEFIの強みであるワークフロー、例えばWeb入稿したものをEFIのRIPで校正出しして、OKであればその後、本機に回すというものがあるが、スーパーワイドフォーマットでもそのワークフローが使えるので、そのへんも評価が高い。
Jetrionに関しては、ほとんどスペック的に競合がない。76m/分(UVインク)で、スピードが圧倒的に早い。インクとメディアの相性も、良好だ。Jetrionは昨年の秋から販売開始したので、これからだ。

--先ほどのワークフローについて。

 Digital StoreFrontとFiery XFというプルーフのソフトウエアがある。デモをすると、パフォーマンスがいいという、高い評価だ。デジタル印刷機を持っている会社や出力センターは自社で開発していたり、FTPを使っていたりということで、それをまだ生かしたいという部分がある。また、インハウス向けの、Eメールでファイルを添付してやり取りしていたようなところは、検討を始めたところだ。今まではメールでやっているが、今後取り入れるならこういうものを検討したいという声を頂いている。Web to Printは、海外では当たり前になってきている。Digital StoreFrontは完全に日本語化しているので、日本市場でも、すぐに導入していただける。

--大判の用途に変化はあるのか。

 従来からある典型的なものは、メディアも変わらない。例えば垂れ幕や、ラッピングフィルムでバスや飛行機に貼るというものはそのまま残っているが、UVになることによって、硬質系が追加の仕事としてできる。ドアに、そのまま印刷していくというのは、UVならではの用途である。
溶剤は溶剤でまだマーケットがあり、EFIではとうもろこしから作ったBioVuインクを提供している。欧米では環境の問題や乾燥の問題でUVにシフトしてきている。印字品質も基本的にUVのほうがいい。さらに、硬質系で、素材を含めて、新たに用途開発するものがいろいろある。それが日本でこれから成長していく、一つのキーになると思う。いわゆるキラーアプリケーション、これが受けるから機械が売れるというようなものを作っていくのがわれわれの役目でもあると思っている。

--Web入稿ソフトについて。

 開発した経験がある会社は、苦労と金額を知っているので、これの金額を聞くと「安い」と言われる。プリントエンジンは、ワークフローを確立させて、あらゆる種類のプリンタを含めてお客様のアプリケーションに合ったものを選んでいただければいい。その選択肢の中で、EFIのVUTEkやJetrionも使ってもらえれば。

--UVのインクジェットは、マテリアルなども含めて、ある意味では各社共通のテーマである。
メディアに関しても、各メディアメーカーともこれからUVになるだろうということで、UVに合ったようなメディアの開発をされている。ワイドフォーマットもラベルもそうなので、間違いなくUVになっていくのではないか。

イー・エフ・アイ株式会社
東京都新宿区西新宿6-8-1 新宿オークタワー14F
TEL 03-3344-3123 FAX 03-3344-3127

 

(2008年4月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

世界にひろがる生活文化創造企業

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:世界にひろがる生活文化創造企業

 

東洋インキ製造株式会社 執行役員 境 裕憲氏に聞く

 

「世界にひろがる生活文化創造企業」を理念として発展してきた東洋インキ製造は、2007年に創立100周年を迎え、「世界に役立つスペシャリティケミカルメーカーとして進化する企業グループ」を企業目標として新たな挑戦を開始している。 印刷・情報事業本部オフセット事業部事業部長の境裕憲氏に、環境調和型製品やスペシャリティ製品を中心に、現在注力している新事業・新製品や今後の展開を伺った。

--drupaでの見どころを伺いたい。

 「drupa2008」には、LED-UV硬化型インキ「FD LEDシリーズ」を出展する。速乾で硬化する点は今までのUVランプと同じだが、ランプ方式と比較して消費電力は約4分の1で、電気代を大幅に節約できるし、UVランプと違って発熱が少ないので、熱に弱い素材にも印刷できる。当面は共同開発先であるリョービの専用資材として供給するが、今後の活用分野は広いと期待している。
導電性銀ペーストインキ「REXALPHA(レックスアルファ)シリーズ」はFPC材料やRFID用アンテナ材料のほか、EMIシールドにも活用可能だ。細線を精密に印刷するための印刷適性を持った銀ペーストで、ほかのメーカーとは視点が大きく違うと思う。さまざまな印刷方式に対応し、従来のエッチング法に比べ小ロットへの対応性や環境調和性が良い。 また、有機溶剤を減らして、大豆油やパーム油などの植物油を使ったオフセットインキを開発しており、オフセットインキは、現在ほぼ100%が環境対応製品になっている。広演色オフセットプロセスインキ「Kaleido(カレイド)シリーズ」や、環境調和型グラビアインキとして、溶剤循環型グラビア印刷システム用インキの「Eco VALUE(エコバリュー)」を展示するので、こちらも注目してほしい。

--Kaleidoの評価や今後も含めた取り組みを伺いたい。

  当初は印刷会社にかなり反響があったが、最近はじわりじわりと、デザイナーやクライアントからの要望が増えている。既存4色機で広演色印刷を実現するために開発されたので、カラーマネジメントができない印刷会社では対応できない。そこで、当社が定めたカレイドプロファイル2.0への準拠を条件に「カレイド印刷可能印刷企業」として当社のサイトで紹介している。 単にインキを販売するという考えではなく、当社のカラーマネジメントセンターでは、プロファイル提供から運用まで印刷会社をサポートし、特に印刷機をどう安定させるかに注力している。
プリプレス上でカラーマネジメントを一生懸命やっても、プレス上でカラーマネジメントができないと意味がない。そこで、定期的にユーザーを訪問して、データを提供してもらって、ある程度時間を掛けて機長たちにも理解してもらっている。 今はオフセットのKaleidが主流となっているが、今後はUV・新聞Kaleidoを広げていきたい。 新聞印刷でもKaleidを使うと明確に違う絵柄になる。新聞の発行部数は減っているが、カラー化が進んでいるし、特に高級ブランドの全面カラー広告などに生きてくるのではないか。
参考だが、アメリカの印刷雑誌『GraphicArts Monthly』の表紙は現在UV Kaleidoで刷られている。アメリカだけでなく、アジア各国でもかなり評判が良く、クライアントからの指定もある。対応できる印刷会社は日本のほうが多いが、シンガポールなどでは実ビジネスが始まっている。

--インクジェットなど、いろいろOEMで出回っているが、そのへんで動きはあるのか。今後の展開と併せて伺いたい。

  今のメインはワイドフォーマットのインクジェットで、一般の商業印刷、出版印刷、それからエレクトロニクス関係まで視野に入れた開発を進めている。インクジェットは商業印刷、出版印刷、バリアブルプリント分野まで拡大していくと思うが、高品位のバリアブルプリントではHPインディゴがかなりのシェアを確保している。 また、普通のオフセットインキやグラビアインキと変わらない校正用途に関しては、既にナノ分散、顔料合成技術、樹脂合成技術を持っている。ワイドフォーマットのインクジェットの品質は、日本製のインクが世界最高レベルであるので、現在の技術で十分グローバル展開できると考えている。
日本の印刷市場は既に成熟しているので、日本で培った技術を活用して海外でインキ事業を展開していく形になると思う。東洋インキは中国でもかなりのシェアを占めているし、今年6月にインドでもオフセットインキ事業を開始する。

--これまでの国内での100年に対し、これからは地球規模での100年という感じになるのか。

  どの化学メーカーも自動車メーカーも、国内の成長プラス海外の成長で発展をしている。幸い、日本の印刷インキ技術は世界最高レベルなので、どこでも十分ナンバーワンのブランドを確立できるのではないか。

--天然物由来の製品開発の経緯と今後の展開も伺いたい。

  以前より天然色素抽出事業の一環として、紅花などの植物抽出を行ってきた。植物原料として古来より防腐・抗菌の目的で用いられてきたクマササに着目し、独自製法で抽出したササエキスを用いた健康補助食品を2007年に製品化した。「リオナチュレシリーズ」として、天然物由来のスペシャリティケミカル製品事業の柱に位置付けている。 ケミカルメーカーとしては、原材料を化学合成して製品を作り上げるのが主流だったが、今後は、天然物由来の製品開発にも力を入れ、メイン事業として育てていきたい。

--フリーペーパーの台頭など、印刷市場の変化にはどのように対応しているのか。

  オフセット輪転インキの新製品「WD LEO-X(レオエックス)」は高級紙からフリーペーパーまで対応でき、低級紙でもロングランが可能だ。独自の乳化コントロール技術と顔料分散技術により、抜群の高速安定性、ロングラン適性を達成した。予想以上にユーザーのリアクションがいい。いろいろな用紙を使ったカタログも非常に好評だった。 --インキメーカーが紙とセットの見本を作ってくれると、仕事の話がスムーズになる。 紙媒体は、いろいろな意味で多様化している。LEO-XのXはクロスメディアを意識している。PODやインクジェットもあるし、いろいろな媒体との融合を考え、広告媒体も含めて多様なメディアにきちんと対応していきたい。デジタル印刷も、HPインディゴだけでなく、いろいろなデジタル印刷機、今までコンペティターだった製品も取り扱いながら多様化に対応していきたいと考えている。 東洋インキは、インキ事業が会社の大きな柱である。今後世界的にはまだ8%くらいは印刷需要は伸びることが見込まれるので、日本から東洋インキの技術を発信して世界中のマーケットに対応していきたい。

東洋インキ製造株式会社
〒104-8377 東京都中央区京橋2-3-13
TEL 03-3272-5731 / FAX 03-3278-8688

 

(2008年7月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

文字を通じて社会に貢献

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:文字を通じて社会に貢献

 

株式会社モリサワ 専務取締役 営業本部長 森澤彰彦氏に聞く

 

 モリサワは、世界でも初めてという画期的な写真による文字=写真植字を発明して以来、一貫して「文字の未来」を見つめて研究・開発を続け、「文字」をデジタルフォント、「組版」処理を自動編集ソフトとして開発し、時代に対応した製品を提供し続けている。


―貴社の特色を含め、これからの方向性について伺いたい。

森澤 まず、モリサワは2つの顔を持っている会社だということを説明させていただきたい。伝統的な組版を継承して提供できる数少ない会社・フォントメーカーという、印刷に関わるソフトウエアメーカーとしての顔が売り上げの3分の1で、残りの3分の2はMacやWindows、CTPやオンデマンド印刷機など、感材を含めた印刷機材の販売となっている。
印刷業界は今、大きく頭を切り換えなければいけない時期に来ていると思う。広告なりカタログなりはいったいだれが読むのか、どのようにしてその情報を得ようとしているのか、どういう情報が必要なのかを、今まで以上にクライアントと一緒になって考えていくくらいの提案力を持たなければ、将来生き残っていけないだろう。モリサワは2つの特色を持った会社として、文字に関するあらゆるニーズにこたえられる提案を行っていきたい。

―最近の文字に対するニーズは?

森澤 参入障壁があり他業界からの参入が難しかった電算写植機の時代は、出力機にだけ書体を入れておけばよかったが、いまやパソコンのフォントは品質が良い悪いは抜きにして容易に作成することができ、安いものもある。MORISAWA PASSPORTもパソコン1台年間約5万円出せば買えるようになった。参入障壁が下がったことで、今後さまざまな業種の方にご利用いただける機会が増えていくだろう。ニーズとして具体的には、テレビのバラエティ番組ではポップ調を多用したいのでそのバリエーションを増やしてほしいとか、出版社などではトラディショナルな明朝体を増やしてほしいなどの要望が出ている。業界が違えばニーズも違うので、モリサワではこれらの要望にこたえられるよう、ラインナップを拡充していこうと考えている。

―紙へのニーズとは違う?

森澤 初めは違うと思っていた。ある携帯電話メーカーで、われわれの提案したフォントとは違うフォントを採用されたケースもあった。ただ、だんだんそれに見慣れてきてデバイスの精度が上がれば上がるほど、最終的には印刷の書体とほとんど変わらない書体がいいと要望が変わってきている。

―Webのデザインも、表現能力が高くなると、ほとんど紙のデザインと似たような形になってきた。

森澤 まさにそうである。MORISAWA PASSPORTのユーザーでも、Web業界は非常に多い。その中のMORISAWA PASSPORTを多く利用していただいている会社での話だが、その会社では当初全くフォントというものにこだわっていなかったという。ところが、アクセシビリティや見やすさの問題などを突き詰めていくと、どんどん紙媒体に近づいていると自分たちで感じたそうだ。その流れで、では「紙媒体にはどんな文字が使われているのか、どういう書体が人気があるのか」と調べていくうちに、モリサワというキーワードが出てきた。社内にはWebデザインだけでなく、紙のデザインの経験者もいたので、モリサワを使うべきだろうということで、多くの契約を頂くことができた。Webには明らかに有利な点があるが、紙がWebに負けないために、紙に何の付加価値を付けるかは、本当に考えなければいけないだろう。Webと紙をどう連動させるかという一つのパターンだと思う。

―モリサワが持っている業界に対するアドバンテージについて、改めて伺いたい。

森澤  一つは、モリサワは北海道から鹿児島まで営業所を持っているので、主要な都市はほぼカバーできるサポート体制が整っている。もう一つは、ソフトウエアの自社ブランドを除くと独立系の商社なので、ユーザーのニーズによって自社製品とセットで提案するメーカーをいくつも変えることができるのが大きい特徴だろう。メーカー系の販社は、自分のところの商品を売らなければいけないので、どうしても自社商品の良いところを中心に強調して説明しがちである。その点モリサワは、客観的にいろいろなメーカーの商品を判断できる立場なので、より良い提案を行うことが可能となる。
プリプレス分野に関しては、自社開発を行っているので、ユーザーのニーズに合わせたシステムを構築することも可能である。特にプリプレスの自動化はこれからの大きなテーマになるが、ここでモリサワは大いに力を発揮できるだろう。文字をハンドリングする技術は他社にはない技術である。

―先日学生向けに販売を開始した「Student Pack」についてお聞かせいただきたい。

森澤  学生がデザインを志しているのに、学校にフォントがないからという理由で、MS明朝やMSゴシックで平気でサンプルを作ったりしている。そこにクリエイティビティがないとまでは言わないが、非常に在り来りである。これで将来本当にデザインに携わる仕事について活躍できるのか甚だ疑問なところがあり、もう少し学生に使いやすい環境を整えたいという思いと、学校にもMORISAWA PASSPORTを導入しやすくしてもらいたいという狙いがあった。今のところ、間違いなく「Student Pack」は学生に浸透し始めている。MORISAWA PASSPORTを教室で利用してもらうのはもちろんだが、学生は学校で課題をやり切れず家に持って帰ってやっているようだ。これまでは家にはフォントがなくて作れないという問題があったが、「Student Pack」はその問題を解消している。

―人材育成を目指して取り組まれている文字組版の教室についてお聞きしたい。

森澤  モリサワでは、長年にわたり培われてきた美しい文字組版を継承するために、フォントや組版ソフトの品質向上に努めるとともに、美しい文字組版が行える人材の養成を目指して、業界の製作担当者、オペレーターを対象に「文字組版の教室」を開催している。これまで延べ2000人に聞いていただいた。今まではゼロだったということを考えれば、美しい文字組版への意識を持ってもらえただけで、一つの成果ではないか。今後はデザイン学校や専門学校との連携なども考えている。

―その他、今後の展開について。

森澤 これまでもそうだが、モリサワにとっては印刷業界がメインなので、印刷業界がどういう方向に向かっていくのかが、最大の関心事である。 印刷業界で今後大きな伸びを期待できる分野としてオンデマンドがあると思うが、モリサワが持っている技術をどのようにオンデマンドマーケットに結び付けていくかということで始めた製品の一つが、オンデマンドプリンタ用可変印刷ソフトウエア「MVP(モリサワ・バリアブル・プリント)」である。可変データを利用したダイレクトメールや小冊子を体裁良く作成し、高速にプリントするための可変印刷ソフトで、これまでの欧米製の製品では苦手だった縦組みや日本語特有の処理に対応した高品質な組版と、面付け作業までを含む一連の流れを効率良く処理できる製品なので、今後の展開に期待している。 印刷業界に携わる人たちが、今までやりたいと思ってもやれなかったことを実現するための一翼を、モリサワが今後も常に担っていきたい。

株式会社モリサワ
TEL 06-6649-2151 / 03-3267-1231

 

(2008年8月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

お客様のニーズに常に目を向けて

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:お客様のニーズに常に目を向けて 

 

リョービ株式会社 取締役 執行役員 グラフィックシステム本部長 石井浩司氏に聞く

 

リョービは、ダイカストで培った精密加工技術、生産技術をベースに、エレクトロニクスやデジタル技術を融合させることで、印刷機の高速化・自動化・省力化を実現してきた。取締役 執行役員 グラフィックシステム本部長の石井浩司氏に今後の展望を伺った。

 

―まず、貴社の特色について伺いたい。

石井  リョービは印刷機の製造、開発、営業・販売までに関わっている社員が現在900名超おり、すべての社員が常に’お客様が今何を求めているのか、何に困っているのか’について目を向けることを心掛けている。これは日本だけではなく、現在170カ国以上に展開している64の代理店すべてで同じ考えを共有しており、集積された情報をベースにより良い製品の開発、製造、各種サービスが提供できる体制を整えている。つまり「プロダクトアウト」ではなく「マーケットイン」という考え方を持って事業を展開しているということである。

―印刷機メーカーとしてリョービのアドバンテージをもう少しお聞きしたい。

石井  お客様に対するサポート体制が充実していることである。アフターサービスを含めたサポートは、現在日本、ヨーロッパ、アメリカにテクニカルサポートセンターという拠点を設け、リョービ独自のきめ細かいアフターサービスを実現している。お客様からもその点への高い評価を頂いている。さらに、リョービがこれから新しく取り組もうとしてこの1年ほどモニターしてきた、「リモートメンテナンスサービス」についても、中型印刷機を中心に10月から展開していく予定である。これにより、現場での問題についてスピーディで効率の良い解決が実現できると考えている。

―マーケットインということであったが、情報源となるのは?

石井  国内の営業担当者から入ってくる情報が一番大きいが、そのほかにも海外担当者が海外のお客様を訪問して得てくる情報も、リョービにとっては製品開発の大きなヒントになることが多い。国内だけの情報ではやはり視野が狭くなりがちなので、広い視野で物事を考える際は海外の情報が果たす役割は非常に大きい。そういった意味で、グローバル展開しているリョービは大きなアドバンテージを持っていると考えている。

―海外展開も広く行っているが、日本と海外でニーズに違いは? また今後の展開についてお聞きしたい。

石井  技術的な面については意外と違いはないようだ。日本の印刷技術は世界でもナンバーワンだと思うので、日本でのニーズに対応できる製品は海外でも十分対応できると考えている。
リョービの現在の国内・海外の出荷割合は3対7だが今後は海外、特に新興国への展開にも注力している。これは景気の後退が日本だけではなく海外の主要国も同様の影響を受けているためである。具体的にはBRICsを中心に、中南米、東欧、東南アジアなどへの展開は重要であると考えている。 日本で培った高い性能を持った製品を海外に広めながら、日本の印刷技術の高さも伝えられればと考えている。

―海外展開において日本以外にも生産拠点は?

石井  将来は分からないが、現在のところ日本以外考えていない。リョービの製品品質を維持するには日本で生産するのがベストと考えている。1モデルに対して1000を超えるバリエーションがあることもあるリョービの印刷機を、海外で生産しようとすると効率がとても悪くなる。それを効率良く行っていくには、機能性の高い生産体制の下でマイスター制度などを導入している日本で、非常に高度な技能者を確保しながら製造していくことがベストだと考えている。

―人材育成について伺いたい。

石井  リョービでは、全社を通じて人材育成に相当な力を入れて実行している。マイスター制度を始め、管理職コースや専門職のエキスパートコースなどを導入しているが、これらは個人の技術スキルアップだけではなく、仕事へのやりがい、働きがいといったモチベーションアップにも役立っている。これらの制度の下で、社員が日々印刷機の開発、製造に従事しているので、お客様に安心して使っていただける、高品質で信頼性の高い製品投入が可能となっている。

―環境対応について、リョービの取り組みは。

石井  あらゆる場面でのリサイクルなども当然実行しているが、例えば機械の検収を効率良く実行して時間を短縮したり、部品加工においては、刃物を変えるなどして部品加工時間の短縮をしたりということで、CO2の削減に取り組んでいる。
それから、この「広島東工場の第2工場」の大きな特長である環境に対応した空調設備でもCO2削減へ貢献している。第2工場は、「限りなき挑戦で、世界のお客様と共に成長する」をコンセプトに2007年9月より本格稼働し、延べ床面積が1万9300m2、1階が組み立て・検収、3階が部品組み立てと組み立て用部品倉庫を備えている。2階は、組み立て・検収を上から眺められる見学通路になっている。地下に空気を通すクールチューブを設けて、自然のエネルギーを活用した省エネ技術を採用しており、温度、湿度を常に一定に保てる品質管理に優れた工場である。

―フォントについてお聞きしたい。

石井  今後は携帯電話の文字や産業用、例えば駅の発着案内表示などへのニーズに対応する機会が増えていくだろう。産業用となると、デザイン性に加え信頼性を求めて実績のあるフォント開発メーカーへのニーズが増えてくるだろうが、リョービはそのニーズにこたえることができる。また高品質な文字を要求しているデザイナーにもリョービのフォントは広く採用されている。今後も印刷機同様、さまざまなニーズにこたえていきたい。

―ユーザー会(リョービ68/75会)についてお聞きしたい。

石井  ユーザー同士で情報交換を行いたいという強いニーズがあって、リョービ68/75会は5年前に設立総会を実施し、中型印刷機のお客様を対象としたユーザー会として設立した。ユーザーの方たちに、事業のお役に立つさまざまな情報をリョービよりいち早くご提供していきたいというのがユーザー会の大きな目的である。また、ユーザーとリョービがお互いの思いや考えを出し合い、両者の関係をより強固にしていく大きなネットワークとして捉えている。

総会は年に1回実施しているが、最近は地域ごとにそれぞれの特色に合った地域情報交換会なども開催している。より細かい技術についての勉強会実施などユーザーの関心も高いようだ。

―最後にメッセージをお願いしたい。

石井  リョービはよく、「小型印刷機のリョービ」と言われる。そういう感覚を根強く持っている人が今でも多いが、現在出荷している印刷機の半分以上は「中型印刷機」である。これまでも各県の印刷工業組合の方々がこの広島東工場を見学されたが、見て驚かれる方が非常に多い。小型印刷機で培ってきたノウハウは大事に生かしつつ、リョービのイメージを変えていくことに今後もっと力を入れていきたいと考えている。drupa2008に参考出品した、’枚葉オフセット印刷機用LED-UV印刷システム’搭載の「RYOBI 525GX」の開発や大型印刷機「RYOBI 1050」への参入などは、そういった考えの表れである。

広島東工場の見学についてはご要望があればいつでもOKなので、経営者だけではなく工場長や社員の方など、いろいろな人たちにぜひリョービの今を体感していただきたい。

リョービ株式会社
グラフィックシステム本部管理部
〒726-0002 広島県府中市鵜飼町800-2
TEL 0847-40-1600 FAX 0847-40-1601

 

(2008年11月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

『印刷博物誌』

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 
書評:『印刷博物誌』
発行所 凸版印刷株式会社 印刷博物誌編纂委員会
本体5万円。

 

「印刷博物誌」は、凸版印刷が創立100周年記念事業の一環として、6年の歳月と4億円規模の事業費を投じて編纂を進めてきたもので2001年7月に発刊された。

印刷技術とともに文化が発展してきた歴史をまとめたもので、印刷が社会において果たしてきた役割や印刷の技術的発展の学問的考察検証など、印刷とコミュニケーションに関するあらゆる事象をまとめ、緻密な検証と考察を加えた世界に類を見ない一書である。

本書は国内外の多彩な研究者、専門家など約120人の執筆陣が参加し、図版2500点を掲載した1200ページに及ぶ学問的にも新機軸をひらく価値ある文献資料で、2001年11月に一般販売された。印刷関係者にとって古代から現代まで、全世界の印刷文化の歴史を一覧できる内容で、好事家にとって垂涎の的といえる書である。

本書の特徴は第1部から第4部に分かれ、印刷技術発明の前史、石器時代の壁画に描かれた絵文字から始まる。4大文明の文字を始め、モンゴル文字や契丹文字、ハングルなどのアジアの歴史も紹介している。

第1部は「印刷文明の考察」として韓国梨花女子大学校碩学教授の李御寧(イー・オリョン)氏の執筆で、西洋より約200年前に朝鮮半島で金属活字が使われていた事実を指摘している。第2部は「印刷の文化と社会」、第3部は「印刷の科学と技術」、第4部は「資料編」で構成されている。20世紀の印刷を集大成した印刷百科事典といえるものである。

(プリンターズサークル2002年1月号「Book Review」より)        澤田 善彦

 

(2002年10月30日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

『真性活字中毒者読本』

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 
書評:『真性活字中毒者読本』 
発行所 柏書房
小宮山博史/府川充男/小池和夫著

 

「活字中毒」という言葉のイメージは読書家、濫読家などを思わせる。よく通勤電車のなかでも、旅先でも、また家の中でも手元に本がないと落ち着かないという人がいるが、これは強度の「本依存症」であろう。

はしがきにも書かれているように「活字中毒」をインターネットで検索すると、数えきれないくらいの「活字中毒……」「……活字中毒」が出現してくるのには驚いた。ここでいう活字の意味は活版印刷の金属活字ではなく、文字全般を表しているわけである。

この本依存症も活字中毒の現象に包含されるのかもしれないが、ここでいう「真性活字中毒者」の症状とは、活字書体そのものに中(あた)っている人達を意味している。活字といっても狭義の金属活字や木活字などにかぎらず、写植やデジタルフォントを含む広義の活字のことを指している。

本書は「日本語組版を考える会」の講演資料や座談会などの内容を、第1章から第7章にまとめているが、今日のDTP時代でも参考になるのが第1章「日本語組版の歴史」と第7章「印刷史研究と電子組版の往復運動」であろう。

そして第4章の「明朝体の歴史とデザインを考える」では、長年本文用書体に明朝体を使っているが「なぜ明朝体なのか」をあらためて考えさせられる。この著者のグループは「印刷史研究会」のメンバーであるが、いつもながら豊富な史料を基にした解説は楽しい。

(プリンターズサークル2002年1月号「Book Review」より)      澤田善彦

 

(2002年11月11日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

『DTPの智慧袋』

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 
書評:『DTPの智慧袋』 
発行所 毎日コミュニケーションズ
井上明著 B5変型 本体価格2200円(税別)

 

本書は「印刷とは何か」,手作業の時代の仕事を振り返り,DTPがどの部分を便利にしたかを噛み締める,という主旨で編集したとある。アプリケーションやバージョンに依存しない「DTPの智慧袋」をまとめ,DTPのおいしいところだけを使いこなす技を紹介する。

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カラーに関する基礎知識にも触れているが,組版・レイアウト・フォントなどに主眼を置いた日本語DTPのバイブルといえる。日本語組版は,漢字・平かな・片かな・数字・記号・欧文などを使い表現する,世界一難しい組版といわれる。

第7章の「システムとフォント環境のチューニング」では,最近のDTPのフォント環境について,知っているようで知らない知識について平易に解説されている。全体的にDTPの上位を目指す中級ユーザクラス向きといえる。

サブタイトルに「ぽろりと,目からウロコが落ちる」とあるが,「DTPのギョーカイ用語」の章で,ページ物に使われる用語解説がされている。これらはDTPのギョーカイ用語というよりは印刷業界用語で,アナログ時代からの組版・製版用語である。これらを知らないと,お互いにコミュニケーションが取れないことになる。

DTP時代になって,これらの単語や意味が通用しない層が増えている。「DTPの智慧袋」という以上,もう少しプリプレス関連用語を取り上げてほしかった。「DTPありき」から育ったDTPオペレータの多くは,これら用語の意味を勉強する必要があるからだ。

しかし技術革新の今日,かつて使われた専門用語は死語になり,新しい言葉が登場し入れ替わることは世の常である。なにも古い言葉に固執する必要はないであろう。

(プリンターズサークル2002年10月号「Book Review」より)        澤田善彦

 

(2002年11月21日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

『JIS漢字字典増補改定』

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 
書評:『JIS漢字字典増補改定』
発行所日本規格協会
芝野耕司著 A5判 本体5500円(税別)

 

とかくJIS漢字が社会問題化して,長年の間,実用面でいろいろな批判と議論を呼び起こしてきた。その批判に対して積極的に規格の公開,普及を目指して出版されたのが初版の「JIS漢字字典」で,本書は1997年に出版された初版の増補改訂版である。

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それぞれの文字を利用する際に,必要とする情報が掲載され,現代日本語を表記し,符号化するために十分な情報が提供されている「日本文字字典」の性格をもつ,他に類を見ない漢字字典で偉業ともいえる。

JIS漢字コードの正式名称は「情報交換用漢字符号系」で1978年に制定以来,1983年,1990年の改正作業を経て,1997年に制定されたのが「JIS X 0208:1997」である。漢字は第1水準2965字,第2水準3390字,非漢字524字,合計6879字となっている。

2000年に,JIS X 0208を補完する4344文字を定義し制定されたが,これがJIS X 0203で一般に第3水準・第4水準と呼ばれるものである。文字数は第3水準漢字1249字,第4水準漢字2436字,非漢字659字,合計4344字である。

本書の内容は,漢字が第1・第2水準に加え,第3・第4水準まで合計10040字,非漢字は1183字に拡大され,それぞれ「確かな用法が確認されている情報」とともに,各種文字コードや字形例が示され,加えて後見返しには「包摂基準一覧」が添付されているので,多目的に使いやすい字典といえる。

(プリンターズサークル2002年10月号「Book Review」より)       澤田善彦

 

(2002年11月29日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

『印刷に恋して』

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 
書評:『印刷に恋して』 
発行所 昌文社
松田哲夫著  A5判変型 本体2600円(税別)

 

本書は,本の文化(印刷文化)からコンピュータ文化(デジタル文化)への移行過程の問題について,編集者の立場からルポルタージュしたもので,「季刊本とコンピュータ」に連載された内容をまとめたものである。

著者は,編集者の立場から印刷技術の勉強のためにルポしたと書いているが,印刷プロセスに対するアナログ時代の印刷技術と現代のデジタル技術を明確に捉えている。活字組版からCTSへの移行,オフセット製版・印刷,グラビア印刷まで,印刷現場の設備機械やシステムに加えて,現場の苦労話なども含めた技術的な解説をしている。

しかしよくある印刷技術関連のハウツウ書ではなく,印刷技術の歴史的変遷とともに現場的知識が得られるようになっている。しかも要所に機械や現場のイラストが挿入されているが,そのイラストが素晴らしい。単に写真で見るよりは詳細が理解できる。

肝に銘ずべきいくつかのフレーズがある。「レタッチはまさに絵描きの世界である」という。これはDTPのカラー処理に生きる言葉である。また組版や製版をDTPがやってくれる時代になったというが,では「印刷所の独自性はどこに」という課題を投げかけている。

印刷知識がある印刷人でも,興味深く楽しめる本である。印刷技術者が書いたものではないことが,内容を面白くしているのではないだろうか。特にDTP関係者に購読を薦めたい本である。

(プリンターズサークル2002年4月号「Book Review」より)       澤田善彦

 

(2002年12月10日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)