「JAGAT印刷産業経営動向調査」より新技術、サービスの導入状況、満足度、導入意向を紹介する。
続きを読む「研究調査」カテゴリーアーカイブ
製造業にもサービスにも活用される、IoTのしくみとは
IoT(Interner of things)は「モノのインターネット」という説明がされることが多いですが、それだと、わかるようなわからないような。今回はIoTのきほんのしくみと活用事例を紹介します。
続きを読む印刷業定点調査 各地の声(2019年3月度)
3月の売上高は△0.6%。2月のプラス(+0.3%)からマイナスに転じたが、微小な変化であって実質的には2カ月連続で±0の前年同水準であったと見て良いのではないか。 続きを読む
第30回 国際 文具・紙製品展 ISOTに見る2019年の文具トレンド
第30回 国際 文具・紙製品展 ISOTと第28回 日本文具大賞の結果から、印刷業界に関わりのあるトピックを紹介する。
ライフスタイルに生きる、紙ものたち
2019年7月17日(水)から19日(金)に開催されたインテリア・デザイン市場のための国際見本市「インテリア ライフスタイル」では、紙素材や印刷・製本加工技術を応用した製品も多数発表された。
印刷経営の現在と方向について、分析の過程から
印刷経営を取り巻く環境が変わるなか、印刷会社経営はどのような状況なのだろうか。「印刷産業経営動向調査2018」の分析過程で見えてきたことを速報段階ながら伝えたい。
スキルレスな動画制作ツールが増えている
YouTubeやInstagram、Twitterなど、スマホでの動画視聴が日常的になりました。SNSやニュースアプリで目にする広告も動画形式が増えていることに気づきます。
続きを読む印刷業定点調査 各地の声(2019年2月度)
2月の売上高は△0.2%。9月から6カ月連続のマイナス。落ち込み幅は大きくはないが浮上しきれない状態が続く。 続きを読む
地域活性化のフィールドワーク
地域と企業の両方を同時に活性化する手法に産業観光がある。そしてこの取り組みを印刷会社が主導する場合が見受けられる。工場見学をマーケティングに活用、あるいは地域の観光資源に活用する潮流も生まれている。実際にどうすれば良いか、実地の勉強会を行った。
地域活性化のフィールドワーク
業界内外から、全国からの多彩な11名で、台東区南部を舞台に開催された「モノマチ」の視察ツアーを行った(19年5月24日)。地域活性化に関心の強い有志の発案から成立した企画である。趣旨は、モノマチを見学しながら、まちづくりと企業の関わり方、地域活性と地場産業活性の両立のあり方を考えること。台東区南部の約2キロ四方には、財布・バッグ、神・仏具、玩具・文具・人形、繊維・手芸など多様な産業がかつてほどではないがひしめく。前実行委員長である望月印刷の田中一博氏とJAGAT研究調査部がガイドを務め、主要な拠点に立ち寄りながら見学して説明に耳を傾け、議論しながら歩いた。
フィールドワークの対象とした台東区南部の特徴1
当日は11時に集合、休憩を挟みながら夜7時まで、最短の行程を組んだつもりだったが12キロ近く歩いた。今回フィールドワークの対象とした台東区南部は、いまや国際観光都市となった上野・浅草を擁する華やかな台東区北部と比べれば、対照的な中小零細企業中心の地味な商工業集積である。特に昭和50年代以降は、機械化による職人の減少、大手との競争、中国への生産移転などによって衰退の一途をたどっていた。
フィールドワークの対象とした台東区南部の特徴2
しかし現在は、モノづくりを中心にした産業の再興、デザイナーの流入によって変貌しつつある。要因はいくつかあるが、例えばインキュベーション拠点(台東デザイナーズビレッジ、2k540)の設置、業種横断的なプラットフォーム「モノマチ」の開催が挙げられる。減少した職人の代わりにデザイナーが住み着き、地場産業と結び付いて独自ブランドを生み出すようになった。空き家・空き工場がアトリエ兼ショップやコワーキングスペースに生まれ変わっていった。既存産業の横断的協力が進み、新規開業も増えた。まちにはこれまでになかった都会的なカフェなども目に付くようになった。これまでの地味な下町が洗練された雰囲気をも包摂するまちになったのである。
参加者による視察ツアーの感想
地場産業の不振に喘ぐ多くの地域にとって、変化の途上にあるまちのフィールドワークは参考になる。さらに「モノマチ」期間中は、工場やデザイン事務所の見学を通して企業の内実に触れられる。ツアー参加者は、長距離を歩きながらも疲れを感じさせずにモノマチを通して台東区南部から多くを感じ取ったようだ。「自分の地域でもやりたい」「イベントのクオリティが高い」「『産業を観光資源にする』という意味がわかった」「大いに刺激を受けた」「また企画して欲しい」などの感想が聞かれた。そして懇親会での意見交換は夜遅くまで続いた。
産業観光・産業ツーリズムの可能性
参加者側の勧めから有料で企画したが、早々と定員に達した。ツアー参加者が、見学先で地場産業製品を予想以上に買い物したことも主催者としては驚きと喜びであった。台東区南部に多少なりとも経済的な貢献ができた。今回はテストケースながら、産業を観光資源に活用することの事業可能性を実地に体験できたのも収穫だった。産業観光の定義は*「(略)生産現場および産業製品を観光資源とし、それらを通じてものづくりの心にふれるとともに、人的交流を促す観光活動をいう」。当然ながら、今回のような機会でもなければ観光地でもない商工業地帯に、遠方からわざわざ来て一日中歩くことなどない。産業観光を通して地域と企業の双方に良い影響を与えるあり方はないか、モノマチなどを参考に自地域での可能性を考えてみたい。
*産業観光推進会議(2014),『産業観光の手法』,学芸出版社
(JAGAT 研究調査部 藤井建人)
関連セミナー
6月11日(火)14:00~17:30
アニメを活かした地域活性化と事業展開
~聖地巡礼によるツーリズムと印刷会社の役割を事例に~
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地方創生/地域活性ビジネス研究
デジタル印刷機を活用するアニメ産業への進出
デジタル印刷機も普及し始め、パーソナルDMや極小ロット重版など様々な活用事例が生まれている。そんな中、デジタル印刷に適したビジネスとしてアニメ産業が注目されている。今回は、デジタル印刷機のアニメ分野での活用事例を紹介する。
アニメが印刷に向く理由
デジタル印刷機の活用でアニメが注目されている理由は消費行動の変化にある。出版業界の不況は印刷業界にとっては身近な話題だが、その背景の一つにはコンテンツの多くが無料になり、視聴者が作品単体にはお金を払わなくなってきたという点がある。ユーザーにとって、作品はまず無料で楽しむものなのだ。
その代わり、好きになった作品やキャラクターに対しては気前よくお金を払う傾向がある。広く作品を投げかけ、コアなファンから作品の派生的グッズなども合わせて資金を回収するのである。タペストリーやイラストボード、Tシャツなどを買っていくうち、すぐに数万円という出費になる。コアなファン向けということで当然小ロットだが、ある程度高額でも成立する。こういった特徴はデジタル印刷向けだと言える。実際、アニメ業界ではクリアファイルや、16ページでも1000円することもある同人誌などでデジタル印刷機が活躍している。
こういったアニメのコア層向けビジネスに注目し、印刷会社が本格参入した例としてサイバーネットが経営するアニメコラボカフェを紹介する。
印刷機を持つ強み
サイバーネットは異業種から後発で参入したが、今や名刺の有力プレイヤーとなった企業である。そんなサイバーネットがデジタル印刷機を活かす新たな事業としてコラボカフェを始めた。
コラボカフェとは、アニメやゲームといったコンテンツとコラボし、その作品をイメージした内装の中で食事やイベントを楽しんでもらうカフェのことである。通常のカフェよりも割高だが、作品のコアなファンが訪れるため消費意欲が高く、料理だけではなく店舗で販売しているグッズもよく売れる。
印刷会社がカフェを経営するというと意外に思えるが、ここには印刷会社ならではの勝算があった。店内を見てみると、垂れ幕やテーブルクロス、壁紙など、その作品に合わせた印刷物に囲まれていることに気付く。通常は、コラボカフェであっても、印刷物は減らしていく方向で考えるそうだが、サイバーネットの場合は印刷機を持っているため、安価に制作できる分、内装に徹底的に拘れる。その分、没入感のある空間を演出できるのである。これは母体が印刷会社だからこその強みとなっている。
コアなファンの集まる場所を作れれば、グッズなども売上が伸びていく。勿論、新規参入でコラボ相手を見つける際には体当たり的な苦労もあったそうだが、コラボ相手にとっても魅力的な販路であることは、アピールポイントだっただろう。
現在はコラボカフェで作ったオリジナルの限定グッズの中でも、売上の大きかったものについてはより広く売り出すように提案を行っている。コラボカフェがデジタル印刷の新たな仕事を生み出す場にもなっているのである。
コンテンツホルダーとの付き合い方
6月11日の研究会では、実際にサイバーネット会長の高原一博氏とコラボカフェ店長の村上直樹氏にご登壇頂き、新規事業開拓の経緯や苦労を語って頂く。ビジネスモデルとしての計算だけではなく、キーマンの発掘やコラボ相手とのマインド的な部分での付き合い方など人的な部分も含めて語って頂く。他にも、地域の印刷会社がアニメ聖地巡礼に関わり地域活性に繋げた例など、アニメ事業に進出する上でのメリットや乗り越えるべきポイントなどを議論する研究会となっている。
(JAGAT 研究調査部 松永寛和)
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アニメを活かした地域活性化と事業展開 ~聖地巡礼によるツーリズムと印刷会社の役割を事例に~
聖地巡礼に注目が集まっている。アニメのファンが舞台となった場所を訪れる地域活性効果から、旅行会社やコンテンツホルダーも動いている。しかし、聖地巡礼の成功事例の多くは着地型観光であり、地域の積極性が不可欠である。地域社会でアニメ制作会社が先頭に立つのは現実的ではないため、地元を知り尽くし、地域でのメディア制作、発信を担当できる印刷会社にも商機がある。 本研究会では聖地巡礼の概論を理解すると共に、印刷会社がアニメコンテンツ事業に参入する際のポイントと強みについて実際のアニメコラボカフェの参入事例から考える。さらに、アニメ制作会社ピーエーワークスの作品『花咲くいろは』から北陸地域に実際にお祭りを創り出し、地域の持続的な発展に聖地巡礼を活かすアニメツーリズムの事例などから印刷会社の関わり方を考える。