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印刷顧客を生むメディア展開のヒント

印刷会社からこれまでになく、印刷営業におけるメディア展開の話を聞くようになった。容易に訪問営業できない時代の新規受注はどうするか。足で稼ぐことも重視しつつ、一方ではメディアによる接点創出の模索が活発化している。

 

テレワークによる新規営業の変化

メディアの使い方が変わっている。いままでは生活者や印刷発注者の動向を見てきたが、いま変わりつつあるのは印刷会社自身のメディア活用である。発注者がテレワークで自宅勤務になってしまい、気軽に訪問できなくなった。彼らにどのようにリーチすればよいのか。印刷会社がこれまでになく様々なメディアによるアプローチを試み始めている。

印刷におけるBtoBマーケティングの難しさ

そもそも、印刷会社の顧客はどこからどのように生まれるのか。仮説であっても、この問いへの答えを持っておくことが必要なように思われる。印刷ビジネスはBtoCではなく法人営業なので、どうにも一般的なマーケティング理論を適用しにくいのが難しいところだ。BtoBは消費財と違い、個人の選好や感情に左右されて取引されることは少ない。その購買プロセスは秘匿性が高く公開されるような成功モデルは少ないのである。とはいえ、自社なりの顧客創造シナリオをつくってみなければメディア設計ができない。

地域商圏での事例を広域発信

今までは訪問営業が絶対的な存在感だったが、コロナ禍によって大きく変わった。遠方への営業が難しくなり、地元商圏に回帰せざるを得なくなった。他方、情報発信に秀でた印刷会社では、ウェブサイト経由などで遠方の見知らぬ顧客から引き合いが舞い込み、受注にまで発展する例が増えている。つまり、オンライン体制を整えつつ地元商圏を重視すれば、地域での成功例を広く発信することで、商圏を広域に広げる手法が可能な時代なのである。

対面以外のチャネルを確保する

多くの受注が続々と飛び込むことを期待するのではなく、顧客が自然流入するようなメディアの導線をつくる。元々、飛び込み営業の打率はとても低いのだし、既存顧客の一定数が失注する分を補える仕組みができれば充分だ。コロナ後に向けて、いわば顧客が自然発生的に生まれるメディアの組合せをいくつ持つかが成長性を分けていく。そしてウェブサイトに来てもらうにもまず自らの発信が必要になる。

人的営業は依然強いがデジタル移行も確実

JAGATの調査では、コロナ前、印刷会社の顧客の6割強は訪問営業から生まれていた。しかしコロナ禍以降は5割強に低下、約1割がデジタル手法に移行した。独自製品開発志向や地域活性化志向の高かった企業は発信コンテンツに事欠かないが、従来型の受注スタイル企業において苦戦が顕著になっている。自社の強みや独自性がないと、注目を集めようにも発信するものがない。メディアに乗せる以前にコンテンツの制作から議論を始めることになる。

自社の強みとメディアで創注する

ただし、現代まで存続したすべての印刷会社には他社と違う何かがある。印刷会社が自社のウェブサイトなどのメディアを見直していくことは、自社の強みや独自性を再発見し、明確化していくことになる。コロナ禍で加速したデジタル化によって、メディアの全体動向はどのように変わり、自社はどのように対応していくべきか。印刷会社は顧客のデジタルメディア化に対応してきたが、自社のメディア展開を考えるべき局面になっている。
(研究調査部 藤井建人)

■関連セミナー

2022年3月30日(水) 14:00~16:40
広告と通販、印刷営業に見るメディア最新動向2022
-印刷顧客を生むメディア展開のヒント-

 

ビジネス環境の変化に対応する新入社員研修

新型コロナウイルスの影響もあり、近年「リモートワーク」の重要性が認知され、自宅など場所にとらわれない働き方が定着しつつあり、働く環境が大きく変化している。こうした変化に対応して、これから入社する新社会人の教育は、どのように変化してきているのだろうか。 続きを読む

コロナで変わる印刷営業とその体制

コロナ禍は営業を変えた。需要水準は切り下がり、発注者の価値観は変わり、訪問営業しづらくなり、オンライン会議システムとオンライン校正は急速に普及した。JAGAT調べでは印刷会社の約3/4は外勤営業しかいない。これからの営業はどうすれば良いか。

 

長引くコロナ禍の影響

コロナ禍以降、初回の緊急事態宣言の発出を経て急減した印刷需要は、20年5月に未曾有の落ち込みを記録した。以降は感染の縮小と拡大に合わせて一進一退となっている。全体には持ち直しつつあるが、コロナ前の水準には戻らないだろう。さらにオミクロン株によって不透明感が増すなど、悪材料が出るたび観光業界などへの打撃を通して商業印刷に影響する繰り返しだ。

コロナ禍は施策の差が業績差に現れやすい

市場縮小とは裏腹に、売上高の落ち込みが軽微、むしろ増えた企業もある。現在のように売上高が大きく変動する局面は、施策の差が業績の差として表れやすい。そこでこうした企業の戦略を分析して、ニューノーマルに向けた手がかりをひとつでも多く得ようと試みている。市場は企業にとっての戦場なので、現状や方向感を掴むことはまず何より基礎である。

対策は売上高構築に求める必要

次に施策をどうするかである。コストダウンでは追い付かないほどの変化である以上、対応の中心を営業・売上高対策に置かざるを得ない。一般に印刷会社の損益分岐点比率は95%程度なので、売上高が5%落ちればほとんどの企業は赤字化してしまう。とはいえ従来型の訪問営業を活発化させるわけにはいかない。売上高構築には新たなアプローチが必要である。

営業担当者を経由しない仕事が増えている

コロナ禍以降の印刷会社を見ると、営業のあり方が大きく変わっている。インサイドセールスと呼ぶべき内勤営業がウェブサイトやメルマガ、SFA/CRM/MAなどのデジタル施策を駆使する例がある。顧客要請もあって制作がオンライン校正を活用し始めた例もある。webを充実しておいたおかげでコロナ禍以降は新規引き合いが増えた印刷会社も少なくない。こうして、従来はすべての業務が営業部門を経由したが、各部門が顧客と直接につながり始めた。

変わる顧客との接点、営業からマーケティングへ

したがって印刷会社と顧客の接点は、営業担当者と印刷発注者のクローズドで線的なもの、ではなくなった。多様な接点のそれぞれが顧客とつながる面的なものに移行した。そしてそれは、見込み客の創出において、もっと顕著になっている。地域社会あるいは自社の得意な業界と複数の接点を持つ必要性の有効性が高まった。コロナ禍でも堅調な企業は、将来の見込み客が持続的に生まれるフィールドの育成に長けている。営業の役割はどのように変わるのか。

受注・顧客創造企業へ、工場見学など自社拠点を活用

JAGATは中小印刷業を対象に「顧客・地域接点実態調査」を行い、顧客創造の仕組みの解明に取り組み、分析は『JAGAT info』2021年11・12月号に掲載した。企業経営は短期的な受注獲得を重視せざるを得ないが、持続成長のためには、各方面から相談や受注が流れ込む関係性の構築が欠かせない。たとえば「工場見学」の実施有無は最も大きな業績差の要因だった。

受注・顧客創造企業へ、研究所・ラボの展開

下記セミナーに登壇する1社は「訪問営業すれば価格競争になってしまう、来てもらう仕組みが大事」と語る。次に大きな業績差は「研究所・ラボ」の有無だった。下記セミナーに登壇する2社がノウハウを持つ。ほとんどの印刷会社は営業企画機能や研究開発機能がないので参考になる。一見して非財務の様々な活動が、実は背景的に長期の財務を形づくる。

訪問から発信へ、営業からマーケティングへ、線から面へ

堅調な企業の分析から、営業の潮流は、訪問から発信へ、営業からマーケティングへ、線から面へのシフトが確認される。デジタルチャネルの開設も重要だが、デジタル施策はアナログ施策と両輪になって初めて機能する。単体ベースで比べるなら、デジタル施策よりはインサイドセールスや研究所・ラボ運営のような人的施策の方が優位で、さらには工場見学や地域活性化のような背景的施策の方がもっと有意なことも明らかになった。

ニューノーマル時代の営業を議論する

これら変化の一要因は、印刷業が基本的にBtoB業態であることによる。コモディティ化した製品を除けば、産業材の取引は基本的に長期固定的であり、新規開拓は容易ではない。たとえば最後の刈り取りは営業の属人的スキルに頼るところが大きいが、持続的な成長性は先述のフィールドにどれだけ有形無形の投資をしたかによる。研究会とpageカンファレンスは、こうした印刷業ならではの特性と調査結果を踏まえた営業とBtoBマーケティングによる造注、創注に焦点を当てる。
(研究調査部 藤井建人)

■関連セミナー、関連レポート

2022年1月26日(水) 15:00~17:00
広告とメディアの動向と展望 2021-2022

2022年2月8日(火) 10:30~12:00
インサイドセールスの機能と役割
マーケティング部長2人が語るニューノーマルの営業

2022年2月9日(水) 13:30~15:00
webと地域活性化による事業創造
自社拠点を生かして事業を継続的に生む仕組み

2022年1月31日(月)~2月10日(木)
page2022オンラインカンファレンス・セミナー 計12本
基調講演・プレセミナー 2本
カンファレンス・セミナー 10本

関連レポート
2021年11月24日 マーケティングの潮流、BtoCとBtoBの視点から

 

『JAGAT info』2021年12月号

JAGAT info 2021年12月号表紙

特集

ニューノーマルに向けたマーケティング戦略変容の解明

―印刷会社の顧客・地域接点実態調査から―(後編) 公益社団法人日本印刷技術協会 研究調査部長 主幹研究員 藤井 建人

営業環境の変化について経営者の声

―印刷会社の顧客・地域接点実態調査から―(後編)

特別企画

『印刷白書2021』を読み解く

CS部 吉村マチ子

連載

■印刷界OUTLOOK 印刷会社の経営資源 研究調査部 藤井 建人

■キーワード2021 BNPL 専務理事 郡司 秀明

■マーケティング・ナウ 第7回 アメリカ流マーケティングを日本で活用するには 本間 充

■専務のつぶやき 9 これからは意味のある印刷物を 専務理事 郡司 秀明

■デジ印奏論 31 新入社員に夢を語ろう 星 輪太郎

■経営者に聞く 地域のコネクターハブ企業を目指して ―人材を育み、地域戦略・デジタル戦略に取り組む― 真生印刷株式会社 代表取締役社長 河内 克之 氏

■技術トレンド グラフィックス 生活者のデジタルシフトに対応するDM 研究調査部 花房 賢

■デザイン・トレンド SPREAD by SPREAD 明日は何色? 色と光で人の心を動かす展覧会 研究調査部 石島 暁子

■デジタル印刷最前線 デジタル印刷でアルバム製作のワンストップサービスを ―グループ企業の強みを生かし、アルバムコンテンツを多方面に展開― 株式会社遠藤写真工芸所

■マーケティング情報 ポートフォリオ分析からの近未来示唆 ⑤PPM-生産方式編 ―需要調査結果と日米比較から― 研究調査部 藤井 建人

■page2022 新企画ゾーンを活用して、新たなチャレンジを CS部 堀 雄亮

■Education 印刷の品質管理を工程でつくり込む ―鍵を握るのは教育と人材育成、コミュニケーション― CS部 古谷 芸文

■西部支社便り いよいよ年末、準備と過ごし方 西部支社長 大沢 昭博

■ワールド・プリント・サテライト 第6回国際ポスターコンテスト授賞式 ほか 研究調査部 丹羽 朋子

■森 裕司のデジタル未来塾 117 Adobe MAX 2021

■エキスパート資格 第56期DTPエキスパート試験、学科試験の出題傾向 資格制度事務局 千葉 弘幸

■DTPエキスパートのための注目キーワード Photoshopの基本操作 研究調査部 千葉 弘幸

■クロスメディアのトレンドワード 小売店舗のパーソナライズサービス 次世代型ショールームでメーカーと消費者をつなぐ 影山 史枝

■ニュースラウンジ 大日本印刷 DNPプラザを拠点に複数のプロジェクトを展開 ほか

■印刷経営ウォッチング

■ニューメンバー・消息

■JAGAT事業のご案内 「page2022」開催のご案内/「JAGAT トピック技術セミナー2021 オンライン」開催のご案内/『JAGAT印刷産業経営動向調査2021』のご案内/『印刷白書2021』のご案内/「JAGAT印刷総合研究会」のご案内/図書のご案内/「page2022」新企画ゾーン/出展相談会のご案内/JAGAT新入社員研修2022のご案内/『新版 DTPベーシックガイダンス』のご案内

2021年12月15日発行 A4判60ページ

JAGAT info 最新号

JAGAT info バックナンバー

『JAGAT info』2021年11月号

JAGAT info 2021年11月号表紙

特集

ニューノーマルに向けたマーケティング戦略変容の解明

―印刷会社の顧客・地域接点実態調査から―(前編) 公益社団法人日本印刷技術協会 研究調査部長 主幹研究員 藤井 建人

営業環境の変化について経営者の声

—印刷会社の顧客・地域接点実態調査から—(前編)

特別企画

印刷会社の新卒採用・教育に関する実態調査 2021

公益社団法人日本印刷技術協会 CS部長 塚本 直樹

■印刷界OUTLOOK 従業者数 研究調査部 藤井 建人

■Recreating the future―印刷の現在とこれから― 第7回 顧客データを扱うことで、印刷会社のビジネス変革を 山口 実

■キーワード2021 レストアサービス(G-SHOCK) 専務理事 郡司 秀明

■デジ印奏論 30 最近の製品開発でのデジタルアプローチ 星 輪太郎

■経営者に聞く 創業100周年を迎え、未来永劫に続く会社へ ―「運」を呼び込み、着実な成長を目指す― 山口証券印刷株式会社 代表取締役社長 山口 明義 氏

■専務のつぶやき 8 高い品質とレストア 専務理事 郡司 秀明

■技術トレンド グラフィックス 次世代スマート工場とMESの役割 研究調査部 花房 賢

■デザイン・トレンド 次世代に残る紙媒体を育てる 「第92回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2021」に見る紙と印刷の提案 研究調査部 石島 暁子

■デジタル印刷最前線 「Horizon Smart Factory 2021」視察レポート 株式会社ホリゾン

■page2022 2年ぶりの開催に向けて準備が進む CS部 堀 雄亮

■Education 通信教育を活用して、内定辞退防止や入社前準備に有効なフォローアップを CS部 橋本 和弥

■ワールド・プリント・サテライト 10月12日から15日までFESPA開催 ほか 研究調査部 丹羽 朋子

■マーケティング情報 ポートフォリオ分析からの近未来示唆 ④PPM-製品編 ―最新調査結果と日米比較から― 研究調査部 藤井 建人

■森 裕司のデジタル未来塾 116 オンラインミーティングを改善する

■エキスパート資格 第56期DTPエキスパート認証試験講評 DTPエキスパート認証委員会

■西部支社便り 指名される存在になる 西部支社長 大沢 昭博

■DTPエキスパートのための注目キーワード デジタルサイネージの進化 研究調査部 千葉 弘幸

■クロスメディアのトレンドワード BtoC-EC市場を牽引するインスタントEC 影山 史枝

■ニュースラウンジ 光村印刷創業120周年記念展「perspective 阪本トクロウ」開催 ほか

■印刷経営ウォッチング

■消息

■JAGAT事業のご案内 『印刷白書2021』のご案内/『JAGAT印刷産業経営動向調査2021』のご案内/「JAGAT大会2021」開催のご案内/「page2022」新規出展社募集相談会のご案内/図書のご案内

2021年11月15日発行 A4判60ページ

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