【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[コミュニケーション]5-1 情報デザイン

掲載日:2016年11月1日
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5-1-1 情報収集

情報と知識は区別すべきである。現状把握、問題解決、未来予測など目的によって、情報収集の情報源や方法は異なる。
情報は闇雲に集めるものではなく、効率よく情報収集することが重要である。
そのためには、「誰のために・何のために」(WHY)、「何を」(WHAT)、「どこから」(WHERE)、「誰が」(WHO)、「いつ」(WHEN)または「どの期間」(HOW LONG)、「どのように」(HOW TO)、「どのくらい」(HOW MANY)、集めるかが重要である。

➢ 調査

  • 調査は物事の実態や動向を明確にするために調べることである。それには、これまでの経緯を知るための調査、現状を把握するための調査、仮説を検証するための調査、問題を解決するための調査等がある。
  • 調査はこれらの物事を進めるための出発点であり、何を理解したいかを明確な目的としなければならない。
  • まず目的を設定し、調査の手法を決める。その後に具体的な調査計画を行い実際の調査に臨む。調査された結果は整理・分析して、自分や関係者が理解しやすいように表現して共有できるようにまとめる。

➢ 定性調査と定量調査

  • 調査は大きく分けて定性調査と定量調査の2つがある。
  • 定性調査は、調査対象者の思いや感じたこと、また生の声や行動等の数値化できない情報のことで、得られたデータを定性データという。インタビューや観察法等がある。
  • 定量調査は対象を量的な情報で数値化して把握できる調査のことで、得られたデータを定量データという。質問とそれに対応した回答が予め用意されているアンケート等がある。

➢ 分析

  • 分析とは特徴を捉えることである。何らかの目的で収集された複雑な文字や符号、数値等の事柄を一つ一つの要素や成分等に分類、整理、成型、取捨選択した上で解釈し、構成を明らかにして、価値のある意味を見出す作業である。
  • 分析の手法は、分析したい元の情報の形態や得たい結果によってさまざまであり、どのような分析手法が目的に合っているかを見極めることも大切である。また分析結果に対する判断力も重要である。

➢ 定性データの分析

  • 定性調査で得られるものとして、インタビューでのメモや録音、観察で得た写真や映像等のデータがある。これらを分析するには、次の手順で行う。
    1) 要素化。個別の要素に分類し新たな視点で構成する。
    2) グループ化とラベリング。互いに関係のあるデータを1つにまとめて意味を理解し、適切なラベルを付ける。
    3) 構造化。グループ同士の因果関係や包含などの関係性を見出し、構造を整理する。必要であれば説明用に文字や図を用いる場合もある。

➢ 定量データの分析
• 定量データを分析するには主に3つの種類に分けることができる。
1) 比較(比率)、2) 構成(数量やボリューム)、3) 変化(推移)、である。

➢ グラフ化(定量データ)

  • 定量調査等で得られた文字や符号、数値等のデータは、グラフ等を用いて可視化すると良い。
  • 円グラフ、棒グラフ、レーダーチャート、ヒストグラム、折れ線グラフなど、適切な結果を表現できるグラフを選ぶことが重要である。

➢ クロス集計(定量データ)

  • 複数の項目を縦横に分けて分析する手法をクロス集計という。多くの表計算ソフトがこの機能を持っている。
  • 例えば1つないし2つの項目を縦に並べ、もう1つの項目を横に並べて、異なる要素を掛け合わせて集計(クロス集計)することで、単純な集計では得られない傾向や値を見ることができる。

➢ 統計処理(定量データ)

  • 統計分析とも言い、統計学の手法のひとつである。データを客観的に説明できる方法である。単純な集計では得られない隠れた情報を捉えることが可能になる。またデータ全体の概要を理解することもできる。
  • 統計の処理には目的に応じて多くの手法がある。例えば「予測要因分析」、「パターン分類」、「知見の発見」等がある。
  • 標本の分布の特徴を現す平均値、最頻値、中央値といった「代表値」、データのばらつきを現す「分散」、「標準偏差」、2つの異なる集合間に違いがあるかを検証する「検定」といった統計処理の手法がある。

5-1-2 プレゼンテーション

  • プレゼンテーションは限られた条件のもとで、話し手の持つ情報・事実・意見・考え等を聞き手に分かりやすく正確に伝え、受け入れてもらうための行動である。
  • 主役は聞き手であり双方向のコミュニケーションによって話し手と聞き手の要望が一致することが大切である。
  • プレゼンテーションは目的、伝える内容等によって「提案・説得型」、「報告・共有型」、「講演・スピーチ型」の3種類に分けられる。

➢ ペルソナ・シナリオ

  • 製品開発やサービスの目的やコンセプトを明確にするために、調査で示された典型的なターゲットユーザーの特徴や人格を設定した架空の人物をペルソナという。
  • この人物の生活行動や利用パターン、思考、感情等をシミュレーションしストーリー化することをシナリオという。
  • 人物像を設定することで、開発やサービスを提供する異なる分野や立場の関係者間でイメージやビジョンを共有でき、効率的で精度の高い検討を進めることができる。

5-1-3 論理的思考

論理は思考の形式や法則を意味し、思考は思いめぐらせ考えることを意味する。つまり議論や物事に対して筋道を立てて、論理的に考えることをいう。
論理的とは、前提となる考えや根拠となる事実が客観的で正しく、その前提や事実と主張との関係が明確であることを指す。論理的に組み立てられた主張は、客観的で不足や過剰がなく説得力が増す。
近年では課題解決や戦略策定など構造的に物事を考えるために必要なビジネススキルのひとつとして注目されており、学校においても思考力を高める教育が進められている。

➢ 問題認識

  • 問題には、認識されているものと、そうでないものがある。認識されていない問題には、表面化しているが気が付いてないものと、表面化されずに隠れていて分からないものがある。気が付いていないものには、慣れてしまっている、あるいは不便さを感じていない場合等がある。隠れているものには、問題が表面化されずに進行中であり、放っておけば問題が発生する状態であるものがある。
  • また問題には、現在起きてしまった、または進行中の発生型。次の段階や目標等と、現状との差で生じる設定型。予め推測でき将来生じる潜在的問題の将来型がある。
  • 問題認識は問題を定義付け、何のために解決するか目的を明確にする必要がある。

➢ 目標設定

  • 何のため(目的)に何をする(目標)のか、目標は目的達成のために設定するものである。目的と目標は明確に区別しなければならない。
  • 目標は、1) 現状値:現状がどのレベルにあるのか把握する、2) 目標値:現状をどのレベルにするのか、3) 達成期限:いつまでに達成するのか、4) 評価:達成度合いを何で測るのか、といったことを最初に明確にしておかなければならない。

➢ 原因分析

  • 目標が達成されない場合や、問題が生じた場合、また問題が予測される場合には、何らかの原因がある。
  • 問題はあるべき姿と現状との差異であり、この差異の中に原因が存在する。この原因は解決すべき課題である。
  • 原因を調査する手順は、
    1) 現状調査:事実と情報を収集する。
    2) 原因調査:原因を分析する。分析方法には、特性要因図(魚骨図)やこれを反映したQC工程表などがある。
    3) 問題分析:関係する要素を見つけ出し問題を整理して、ロジックツリー等で体系化する。ロジックツリーでは横の要因(区分の異なる原因)と縦の要因(原因のさらなる原因)とを組み合わせて図解化する。

➢ 解決策の立案

  • • 問題の解決策は、原因分析で特定された原因を取り除くことで、問題が起きる前の状態に戻し、これから起こりうる問題を防ぐことである。しかし原因を取り除くことができなければ、新しい方法を考えなければならない。
  • • 新しい方法とは、問題が起きる前の状態に戻すことではなく、あるべき状態への目標に近づけるための別の方法のことである。未知の解決策を考えなければならない場合もあり、柔軟かつ斬新な発想力、幅広い知識と過去の事例の活用力、コミュニケーション能力等が必要になってくる。


➢ 発想の手法

  • • 創造的な発想の種類は大きく分けて次の4つがある。
    1) 発散手法:発散的に思考することで事実やアイデアを出すための発想法で、自由連想法、制限連想法、類比連想等がある。
    2) 収束手法:発散手法で出されたアイデア等をまとめて行く方法である。空間型(演繹法、帰納法)、系列型(因果法、時系列法)等がある。
    3) 統合手法:発散と収束を繰り返す方法である。
    4) 態度手法:創造的な態度を身に付け、心理的な行動等から発想する方法で、瞑想型法、交流型法、演劇型法等がある。

➢ ブレインストーミング

  • 米国アレックス・F・オズボーンが考案した、アイデアを創造する発散型の集団思考法で、自由連想法のひとつである。
  • この手法は、
    1) 批判禁止:相手の意見を批判しない。
    2) 自由奔放:つまらないアイデア、見当違いなアイデアでも良い。思いついたことを何でも歓迎する。
    3) 質より量:アイデアは多い程良い。
    4) 連想・結合:他人のアイデアから関連するアイデアを出したり、組み合わせたりしても良い。

➢ チェックリスト法

  • 発想の視点となる項目を並べて、アイデアを洗い出す発散型の強制連想法のひとつである。
  • 例えばオズボーンのチェックリストでは、
     他に利用したらどうか?
     アイデアを借りたらどうか?
     大きくしたらどうか?
     小さくしたらどうか?
     変更したらどうか?
     代用したらどうか?
     入れ換えたらどうか?
     逆にしたらどうか?
     組み合わせたらどうか?
    という項目がある。
  • 項目に制限はなく、目的に合わせてリストを準備する。

➢ マトリックス法

  • 変数2つを組み合わせ、そこから発想する発散型で、帰納法のひとつである。
  • 例えば、メニュー開発等のテーマを決めて、これに関連する変数(言葉や事象等)を洗い出して2つに絞り込む。例えば季節と食材。次にこの変数を元に関連する要素を洗い出す。例えば春、夏、秋、冬、と海の食材、山の食材、家畜、主食等。次にこれらを表の縦と横の項目に並べる。そして交差するすべての欄に連想するアイデアを記述していく方法である。

➢ NM法

  • 創造工学研究所所長の中山正和氏が考案した発散型類比法のひとつである。思考のプロセスを手順化することで手順に沿ってイメージ発想を行う。
    1) 課題を決める。
    2) キーワードを決める。
    3) 類比を発想する。
    4) 類比の背景を探る。
    5) アイデアを類比の背景と結びつけて発想する。
    6) 5) を使って解決策にまとめる。

➢ KJ法

  • 文化人類学者の川喜多次郎氏が考案した収束型の帰納法のひとつである。川喜多次郎氏の頭文字をとってKJ法と名付けられた。
    1) テーマを決める。
    2) ブレインストーミング等で意見やアイデアを1件1枚の小さな紙に書き出して模造紙等に並べる。
    3) 似たものを小グループとして見出しを付ける。さらに似たものを集めて中グループ、大グループとしてまとめて(10グループ以内程度)見出しをつける。
    4) グループ同士を構造化(上位と下位、原因と結果等)して、線や矢印等で関連性を作図する。
    5) 図や文章等でまとめる。

5-1-4 情報の構造

1つの要素(単体)の情報では価値は低いが、関連するものを1つにまとめたり、まとまった情報同士の関連性を見出したりすることで、新たな価値を生むことができる。また、既にまとめられた情報を新たな視点で再度構造化することで、当初とは異なった価値を生むこともある。
情報の構造化とは、目的に合わせて情報の関係性を示し意味を分かりやすくすることである。

➢ 情報の組織化

  • 個別の情報を1つのまとまりとして扱うことで価値を持たせることを情報の組織化または情報の構造化という。
  • 米国の建築家リチャード・ソール・ワーマン(Wurman, Richard Saul)がLATCH(5つの帽子掛け)という情報の組織化を提唱した。
  • LATCHは次の5つである。
    1) Location(位置):地図やエリア等でまとめる。
    2) Alphabet(アルファベット):順番や順序等でまとめる。
    3) Time(時間):時系列や時間軸等でまとめる。
    4) Category(分野):科目や範囲、関連等でまとめる。
    5) Hierarchy(階層・連続量):大小、重要度等でまとめる。

➢ 情報構造の種類

  • 情報の一要素は他の要素と何らかの関係性を持たせることができる。
  • この関係性は7つの種類に分けることができる。
    1) 線形構造。順序があり直線的な流れを表す。
    2) 階層構造。カテゴリ等の上下の関係を表す。
    3) 並列構造。時間軸や空間軸等において別々の情報が並行に並ぶ関係を表す。
    4) 行列構造。縦横2方向の直線的な情報を表す。
    5) 放射状構造。情報同士がさまざまな関係を表す。
    6) 重ね合わせ構造。情報同士を重ね合わせる関係を表す。
    7) 拡大構造。元の情報から一部を拡大して詳細な情報を表す。

5-1-5 メディア特性

コミュニケーションは、メディアの特性を捉えてその特性に沿った情報発信をすることにより効果を増す。多様化する各メディアの特性を捉えた上で、対象や状況に応じたメディアの選定とコンテンツ展開を計画するコミュニケーションデザインの観点が不可欠となる。

➢ クロスメディア

  • クロスメディアとは、ある情報について、文字や音、映像などのさまざまな素材と、印刷やインターネットなど、複数のメディアを用いて効果的な伝達を行う手法である。インターネットとそれに対応したモバイル端末が普及するに従い、複数のメディアを横断的に使用する手法が一般化している。

➢ 紙メディア

  • IT技術の進歩に伴って情報伝達の手段が多様化しているが、紙メディア(印刷物)には、さまざまな利点があり、重要な媒体として位置づけられる。
  • 紙メディアは、サイズをさまざまに変えることができるのでB全ポスターからチラシやペットボトルなどに貼る小さいシールまで幅広い用途に対応できる。形状も多様に変えることが可能で、多角形、円、不定形、折ることで立体的にすることもできる。また、使われる場ごとで要求される大きさに応じて折る、丸める、などが可能で、携帯性に優れている。
  • 紙メディアは、インタフェースに関しては、使うために特別な道具を必要とせず、子供から大人まで、いつでもどこでも利用できるメディアである。
  • 紙メディアは、文字や写真、イラストはもとより、他の方法でも情報伝達、配信ができる。例えばJANコードに代表される一次元バーコードを印字すれば、商品管理機能の一端を担わせることもできる。
  • 携帯電話やスマートフォンなどモバイルのリーダーからも読み取りが可能になったことで、紙メディアは情報収集のツールとしても考えることができる。二次元コードを印字すれば、インターネット経由でサーバー上のコンテンツや各種の仕掛けにアクセスさせることができる。
  • 個別ニーズの把握・分析が要求されている現在、商品ごとや個人ごとの紐づけを紙メディアへ付加することで、その分析端末とも考えられる。このように、紙メディアは先端技術との連携も可能である。マスメディアだけでなく新しい情報媒体が現れている中、「紙メディア」がネットワークの中心になることも可能である。
  • 新聞折り込みのスーパーマーケットのチラシは、読み手の第一印象や視線を測って設計され、多くの情報が載っている。このようなものをWeb上へ置いた場合、掲載できる情報量は半無限であるが、読み手が一瞥できる範囲は比較的小さい。折り込みのチラシはテレビ、ラジオのマス広告とは異なり、対象地域を絞り込んで重点的に宣伝できる。またチラシからWebページに誘導するためにWebページのアドレスを印刷して紙メディアと電子メディアのそれぞれの利点を活かそうとする方法もある。
  • 環境問題が叫ばれる現在では紙の素材も多様になってきている。CO2削減に向けた動きとともにCSRと密接に関わった環境配慮の姿勢からエコに通じる紙の選択が増えている。代表的なエコ用紙には、リサイクル用紙(再生紙)があるが、最近は環境対応用紙としてケナフやバガスなどの非木材系の紙を使うことも多くなってきた。
  • カーボン・オフセットとは、企業活動や商品製造等によって排出してしまう温室効果ガス排出量(二酸化炭素)のうち、どうしても削減できない量の全部または一部を、他の場所での排出削減・吸収量で埋め合わせする仕組みである。発生してしまった二酸化炭素の量を何らかの方法で相殺し排出を実質ゼロに近づけようという発想である。

➢ デジタルメディア

  • デジタルメディアの特徴として、1) 双方向性、2) 速報性、リアルタイム性、3) 検索性の高さ、4) 再利用、再編集の容易さ、5) 情報量の制約が少ない(大容量のデータが扱える)、6) 配信コストが安い、などが挙げられる。
  • SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)は、インターネット上で提供される、利用者を限定したコミュニティー型の情報サービスで、代表的なものにFacebookやmixi、Twitterなどがある。こうしたサービスの総称をソーシャルメディアという。マスメディアに匹敵するほどのユーザー数を持つようになり、広告・販促活動やECへの影響力が増している。
  • 無料で誰でも始められるという手軽さもあり、商品の情報をFacebookで写真付きで紹介したり、セール情報をTwitterでツイートして誘客する店舗も多い。
  • O2O(オー・ツー・オー)とは「Online to Offline」を略した言葉である。オンラインからオフラインへ、とはすなわちインターネット上での集客を実店舗へ誘導することを指している。このキーワードを耳にする機会が近年増えた背景には、スマートフォンの普及とそこで動作するアプリ、ソーシャルメディアを組み合わせやすくなったことがある。
  • オムニチャネルのオムニ(OMNI-)は「すべて」とか「広く、あまねく」という意味があり、インターネットや実店舗など、あらゆる顧客との接点を連携させて拡販するマーケティング戦略を指している。具体的には、小売業などで実店舗とテレビショッピング、テレビCM、カタログ通販、Eコマースや商品の情報ページ、SNSなど、あらゆる顧客接点を連携させて販売につなげようとする考え方や施策をいう。
  • 顧客が商品を認知して、購入を検討し、実際に購入するまでのプロセスで、どのチャネルを経由して販売店側にアプローチしても、不利益を感じることなく買い物ができる環境を提供するというのが基本コンセプトである。