【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[印刷技術]3-5 プレス

掲載日:2016年11月1日
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3-5-1 有版印刷

  • 印刷には4つの版式があるが、今日の商業印刷や出版印刷では、オフセット(平版)印刷が主流になっている。出版の一部および軟包装印刷ではグラビア(凹版)が主流である。凸版印刷の一種であるフレキソ印刷は、包装材料の印刷に使われる。
  • 扱う用紙が長巻の印刷機を輪転方式、カット紙のものを枚葉方式という。
  • 平版は解像性・価格・生産性において、他の版式に比べて優れている点が多く、印刷版式の中で最も多く使われている。

➢ 平版

  • 水と油の反発作用を利用し平面の版を用いて印刷する。版の画線部は親油性でインキが着き、非画線部は親水性で水の皮膜で覆われることによりインキが弾かれる。
  • 水の代わりに、シリコンを用いてインキを反発させる版を使った水なし平版もある。

➢ 凸版

  • 版の凸部が画線部で、そこにインキをつける。もっとも古くから利用された版式で、活字、活版印刷のほか、シール、ラベル、段ボール、ビジネスフォームなどの分野で用いられている。

➢ 凹版

  • 版の凹部が画線部で、版面全体にインキを付けた後、版の表面をぬぐい凹部に残ったインキが転写される。
  • 凹部にあたるセルの深さによって階調を表現しているコンベンショナルグラビアに対して、最近ではセルの大きさによって階調を表現する網グラビアが主流になりつつある。

➢ 孔版

  • 画線部が孔状になっており、その孔をインキが通過して被印刷物に転写される。

3-5-2 デジタル印刷

  • デジタル印刷は無版の印刷方式である。版を使わずにコンピューター上で製作されたデータ(デジタルイメージ)を、電子写真方式やインクジェット方式により、紙やフィルムなどの原反に印刷する。色材はインクやトナーである。
  • 無版方式であることから、印刷版をつくる手間や材料、コストを省くことができる。また、大量複製だけでなく、小ロットや可変(バリアブル)印刷も可能である。
  • ページ単位で印刷内容を変更することが出来るため、書籍などのページ物では電子(自動)丁合が可能である。
  • デジタル印刷が実用化された当初、小ロット印刷に有効であることから、POD(Print On Demand、プリントオンデ
    マンド)、オンデマンド印刷とも呼ばれていた。
  • 最近ではデジタル印刷の機能が分化・専門化し、ビジネスフォームや軟包装、シール・ラベルなど利用目的に応じた専用機種も開発され、普及しつつある。
  • 新たなトナーやインキなどの開発が進み、多色印刷や金・銀・クリアインキ(トナー)、広色域印刷を実現している機種も存在する。
  • 用紙ごとのプロファイル搭載や定期的なキャリブレーションを行うことにより、カラーマネジメントの精度が向上する。

➢ バリアブル印刷

  • バリアブル(可変)印刷とは、無版という特徴を活かし、ページ単位で印刷内容を変更することである。共通のレイアウトに対し宛名や画像などを部分的に差し替える方法と、ページ全体を差し替える方法がある。特定の印刷方式やデータ処理方式を指しているのではなく、総称である。

➢ パーソナライズ印刷

  • バリアブル印刷の一種で、特定の個人向けに編集した内容を印刷することをパーソナライズ印刷と呼ぶことがある。代表的なものとして、顧客情報に応じて内容を変えるDMやIDカード等がある。


➢ バージョニング印刷

  • デジタル印刷では、用紙と判型が同一であれば、内容や枚数の異なる印刷物を一度に大量に印刷することが可能である。例えば、店舗別、地域別など、個々の内容は小ロットであるが、全体として大量印刷することをバージョニング、またはバージョニング印刷と呼ぶことがある。

➢ ハイブリッド印刷(追い刷り方式)

  • 大量印刷に適しているオフセット印刷と無版方式でバリアブル印刷が可能なデジタル印刷を組合せることをハイブリッド印刷(追い刷り方式)と呼ぶことがある。例えば、DM、クーポン券や入場チケットのID番号・バーコード・二次元コードなどが代表的である。背景の固定イメージはオフセット印刷(プレプリント)した上で、デジタル印刷機を使用して、可変データを追い刷りするという方式である。

➢ データプリント分野における一括印刷

  • ビジネスフォームや請求明細書などデータプリント分野などでは、以前はあらかじめオフセット印刷された台紙(プレプリント)に、データ部分のみを追い刷りする方法が多用されていた。昨今、プレプリントの在庫管理の手間やコストが小さくないこと、デジタル印刷機のスピードやカラー画像品質が向上したことから、白紙への一括印刷が主流となりつつある。

3-5-3 品質管理

印刷においては工程変量があることと、その要因、印刷方式による色再現の違い(濃度再現域)を理解する。品質管理は、印刷物製作における入力から出力までの工程をトータルに考えなければならない。

➢ オフセット印刷と品質

  • オフセット印刷で適切なカラーバランスが得られるのは、印刷紙面上でインキ膜厚が1ミクロン前後で刷られている時である。
  • インキ膜厚が大きくなると裏つきなどのトラブルの原因となる。反対に膜厚が小さいと印刷物の色調にボリューム感が不足し、ベタのつぶれが悪くなる。
  • インキ膜厚は濃度と一定の関係がある。膜厚が増すにつれてカラー濃度も高くなる。印刷工場の実作業ではカラー濃度を測定してインキ膜厚の適正量を管理する。
  • 実際の印刷インキはCMYの色相が理想値とは少しずれているのでCMYの等量混合ではニュートラルグレーとはならず、少し赤みのグレーとなる。そのため50%付近の平網でCに対してMとYを10%程度少なくしたカーブで色分解をしておく。
  • カラー印刷物のシャドウ部は墨インキだけではつぶれが悪いので、墨ベタの下には色版の平網を入れることが行われる。通常はC60%程度の墨下を入れるが、黒の色味の調整のために必要に応じてMYを入れることもある。これをリッチブラックと呼ぶ。

➢ 品質基準

  • Japan Colorは、ISO/TC130国内委員会が中心になり、日本印刷学会の協力のもとに作られた印刷における色の標準である。1993年に設定されてから何度か改訂され、最新版は「ISO準拠 ジャパンカラー枚葉印刷用2011(略称:Japan Color 2011)」である。
  • 印刷分野はもちろん、カラーハードコピーの色再現基準として、カラープリンターなどの関連分野も対象になる。また、印刷発注時の品質基準の指標としても利用できる。アート紙、マットコート紙、コート紙および上質紙の4種類の印刷物を用意している。
  • Japan Colorを印刷できることを認証する制度もある。
  • JMPAカラーは、同じ広告データでも印刷会社ごとに色調が異ならないように、日本雑誌協会が策定した雑誌広告用の色標準である。雑誌広告をDTPで制作した場合に、そのDTPデータの色再現が広告会社、出版社、印刷会社で同じとなるように色基準を設定している。

➢ 品質確認

  • DTPからCTP出力する際には、製版印刷の品質管理のために日付・担当・JOB名・刷り色・改版情報(バージョン名など)やカラーパッチ(カラーバー)、テストチャートなど必要な情報をトンボの外側に入れる。
  • 本機校正の品質管理にはカラーパッチを濃度計や色彩計などで計測する。
  • 品質管理上のカラーパッチの役割は、一般にインキの濃度をベタパッチで測り、ドットゲインが正常かどうかを平網でチェックし、CMYの色の偏りをグレーでチェックする。
  • 分色刷りは、各版単独の色校正であり、特に特色や補色が間違いなく印刷されているかどうかを確認できる。また印刷現場に対する版と刷り色の確認用にもなる。
  • 顧客に提出する色校正は、顧客にカラー画像の品質の確認をしてもらい、本刷りの了承を得るためのものである。校正結果は、製版工程への修正の作業指示となり、印刷工程への本刷りの作業指示となる。

➢ 検版

  • 主な検査、検版の種類は、企画デザイン制作時の修正箇所や修正ミスの確認、クライアントやデザイナーからのゲラ(プリント出力)と入稿データの比較、製版の面付け違いの確認、出力時の初版または一つ前の版との比較確認、印刷のためのプレートの出力状態または版面設計の確認などがある。
  • 製版システムのプラットフォームやソフトウェアの相違から生じる文字化け、フォント違いなどのトラブルや文字の変更・訂正、写真の差し替えやトリミング、調子変更、平網指定の変更などを比較・確認する必要がある。
  • プレート出力やデジタル印刷の前に、デジタルデータ同士を比較するデジタル検版システムがある。同システムでは、同一RIPによるRIP済みデータを使用して修正前後のデータを比較し、修正ミスや相違を識別する。
  • 検版結果は例えば初校と再校の差分は、ディスプレイで表示し確認するかプリンター出力して確認するのが一般的である。
  • アナログ媒体の検版すなわち印刷物、プリント出力物等の検版では、通常目視または媒体をスキャナー入力し、デジタル化して検版を行う。この時、比較する媒体自体の伸縮や特性による変倍に対しての補正処理を施し、さらにスキャナー入力時の角度の変化や変倍を補正する必要がある。