柱・ノンブルの組版処理と校正での確認

掲載日:2016年3月2日

日本語組版とつきあう その52

小林 敏(こばやし とし)

柱・ノンブルの組版処理

柱やノンブル(ページ番号)のように各ページに共通して配置する要素は、一般にマスターあるいはマスターページとよばれる特別なページに設定し、該当する通常のページに適用して表示する。これにより、柱・ノンブルを各ページに同じ内容・同じ体裁で表示することができる。
マスターページは複数作成できるので、柱を変更する場合は別のマスターページを作成し、それを適用する。
また、ノンブルの数字は、開始番号を指定し、自動的に変更する。

したがって、マスターページの設定とその適用を誤らなければ、活字組版のような一部の個別ページだけでの誤りは考えられないことになる。
しかし、いくつか問題点もあるので、そうした事項を主に解説する。

個別ページでの修正

マスターページを適用して表示した柱とノンブルは、一般に個別ページで修正はできない。しかし、組版ソフトにもよるが、特別な処理を行うと、個別ページでもデータが修正できるようになる。したがって、柱が頻繁に変わるような場合には、個別ページでの修正で処理することも考えられ、活字組版でのように個別ページでの誤りもありえるので注意が必要である。

見出しと柱の関係

基本的には、見出しのテキストと同じ内容を柱に掲げる。しかし、以下のようなケースでは、見出しのテキストと柱のテキストは異なる場合もあるので、注意が必要である。

(1)縦組の書籍で、横組の柱にした場合、見出しの漢数字の表記をアラビア数字に変える、あるいは、テン・マルをコンマ・ピリオドに変えるという方法をとっている例がある。
(2)柱の字数が多い場合は、あまり体裁はよいとはいえない。そこで、いくらか表現を変えて、字数を減らす場合がある。
(3)複数の著者が執筆した論文集などで、柱の最後に執筆者名を挿入する例がある。
(4)章番号など見出しのラベル名を省略する、あるいは見出しのラベル名だけを柱に掲げる例がある。
なお、見出しの章番号などは重要であり、見出しのラベル名を省略することは読者に対しては不親切となることも多いので、避けた方がよいであろう。

柱を非表示にする

柱は、次のようなページでは表示しない。

(1)中扉や半扉
(2)配置する図版などが柱を配置する領域と重なったページ
(3)白ページ

また、次のようなページでは表示しない方法もある。

(1)配置する図版や表などに隣接して柱を配置するページ
(2)改丁・改ページ等で始まる見出しが掲げられているページ

こうしたページでは、他のページとは異なるマスターページを適用するか、個別ページで特別に柱を削除する。
しかし、ページの増減があると、組版処理方法によっては柱を削除したページが別の削除しなくてよいページになる場合もあるので、注意が必要である。

ノンブルを非表示にする

ノンブルも柱と同様に表示しないページがある。柱もノンブルも読書する際の助けとなるものなので、大切ではあるが、全ページに必須ではないことによる。ただし、その重要性にいくらか違いがあるので、扱いにいくらかの差がある。

ノンブルは、次のようなページでは表示しない。
(1)配置する図版などがノンブルを配置する領域と重なったページ
(2)白ページ

また、次のようなページでは表示しない方法もある。
(1)中扉や半扉
(2)横組においてノンブルを天側の余白に配置した場合において、改丁・改ページ等で見出しが始まるページ

なお、(2)で非表示とした場合、ページの下側にノンブルを配置する方法もある(図1参照)。

なお、中扉や半扉でのノンブルの表示については、活字組版では、ページ単位で印刷機に組み付けることが多く、ページの順序や配置位置の確認で、ノンブルがあると作業しやすいこともあり(ただし、鉛版では大きな空白が発生し、その部分を削るという作業が必要になる)、表示する例もあった。しかし、今日ではあらかじめ台割単位で前もって面付作業を行うので、その必要性は少なくなり、中扉や半扉にノンブルを表示する例は少なくなった。
また、目次のページではノンブルを表示する方法と、表示しない方法がある。
ノンブルを非表示としたページについては、ページが移動した場合、柱と同様な問題がある。特にノンブルは白ページで表示されたままで刊行される例もあり、注意が必要である。

 

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(図1)

柱とノンブルの通覧

柱とノンブルについての誤りは、活字組版に比べると少なくなったとはいえ、なくなったわけではない。校正では、特に最終段階で柱とノンブルは、それだけを通覧して確認することが大切である。

日本語組版とつきあう (小林敏 特別連載)