【マスター郡司のキーワード解説2023】RGB印刷

掲載日:2023年1月24日

「RGB印刷」に注目が集まる

このところ本欄ではマーケティングの話題が多かったので、今回はIGAS2022の開催直後であり、またpage2023の開催直前であることから、「RGB印刷」を取り上げてみたい。

一口に「RGB印刷」といってもさまざまな捉え方があるが、印刷業界でよくいわれている「RGB印刷」とは、デジカメで撮影した大きくて鮮やかな広色域RGB画像データを小さなJapan Color 2011色域にCMYK変換(=圧縮)して印刷するのはナンセンスなので、RGBデータをそのまま入稿して、再現色域の大きい鮮やかな印刷を行うことを指している(デジタル印刷の再現色域はアナログよりも大きい)。

この言葉は、FFGSがJet Pressに関して、広色域再現が得意であることに目を付けて「RGB印刷」と言い出したのが始まりではないかと思う。非常に上手なキャッチ(表現)で、大ヒットである。Jet Pressは新たなターゲットを生み出したのだ。従来、蛍光ピンクなどで差別化することは同人誌では行われてきたのだが、写真やイラストでも広色域再現での差別化が注目され始めている。

もちろん、広色域再現を売り物にしているHP Indigoも負けじと「RGB印刷」を言い出した。HPは(印刷)製品のPRを大得意にしているだけに、印刷ワークフローが変わる可能性を思わせる節もある。また、ザイコンは表裏対向ローラーで印刷しているため、もともと表裏の見当性はすこぶる良いのが特長であるが、ここに目を付けて、RGB入稿した広色域RGB画像をユポ(合成紙)の両面に印刷し、さらに多色印刷が可能なので広再現色域にプラスして超ロングレンジの濃度域を実現している。一例として、花火の写真をバックライトで照らした写真品質には何とも言い難い表現力を持っている(写真1)。まさしく藝術の領域である。

写真1:昇寿堂が手掛ける「ピュアWプリント」のサンプル

自動的にUSMがかかる?

さて、RGB入稿=RGBワークフローと一足飛びに考えると、昔のプリプレス工程を知る私のような人間からすると、さまざまな問題点が気になる(“重箱の隅”っぽいかな?)。例えばUSMだが、紙の上に画像を再現するとなると、USMをかけた方がよい。嫌う人も中にはいるが、99対1くらいの割合で「USMあり」の圧倒的勝利という感じだ。特にインクジェットの場合は、USMは必須だ。

さて、USMをかける際に、RGBにUSMをかけて、USM付きのRGBデータをCMYK分版するとどうなるだろう? RGBのUSMエッジは墨版の黒縁に変換されてしまい、非常に不自然な仕上がりになってしまう。アナログ印刷と違ってデジタル印刷には見当ズレがないので問題ないということもできるが、私には納得できない。インテグレートRIP(ワークフローRIP)も、製品によってはJOBチケットなどの指示で分版してからUSMをかけることができるようになっており、唇には赤い縁ができて自然な仕上がりになる。

このように、製品によってさまざまなのである。「デジタル印刷は関係ない」というかもしれないが、デジタル印刷機の多くでは、出来の良さ・悪さはあるものの、裏でUSMが自動でかかっていることがある。「このデジタル印刷機で印刷するとシャープですね」などという場合は、十中八九、USMがかかっていたりする(?)。

 

本誌の「RGB入稿」に向けて

「RGB印刷」といっても、ワークフローまで考えるケースもあるのだが(私は昔からの癖で、つい考え込んでしまう)、この辺に関しては、その都度報告させていただく。『JAGAT info』の実践編としてテストしていきたい。

なお、JAGATがRGB入稿にこだわるのは、「品質」というよりもデータの流用性が一番だからである。JAGATの職員は講演の機会が多いので、カラーのRGBデータをそのまま使いたいのだ。CMYKになっていると相当に面倒だし、白黒もしんどい。現在、『印刷白書』が白黒なのだが、ここからグラフなどを引用する場合は、色を付け直している。白黒をそのまま使うと、やはり違和感は拭えない。

IGAS2022やpage2023に合わせて本誌の連載「デジタル印刷最前線」をムック化しようと検討したのだが、ここでも過去の白黒ページがネックになった。カラー化の再編集は思いの外大変で、デジタルで印刷した連載分がたまるまで様子を見ることになった。「白黒でも、この原稿は使いたい」というものだけ再カラー化するのが、現状では得策のようだ。

(専務理事 郡司 秀明)