スマートフォン時代における折込チラシの活用法をどう考えるか

掲載日:2016年6月13日

新聞折込広告は厳しい状況が続いているが、新たな試みも出てきている。

新聞が先か折込が先か

新聞を読むのに、正しい読み方があるだろうか。おそらくあるはずだが、人によって読み進める順番はマチマチだ。頭から読む人もいれば、必ずテレビ欄から読み始める人もいる。習慣になっているとそう簡単には変えられないようだ。

また生活者のシチュエーションによっても新聞の意味合いが変化するものらしい。マンション住まいのときは、新聞を購読しなかったが、庭付きの一軒家に移ったときに、夏の夕暮れに縁側で新聞を読みたくなったという人がいる。

新聞の折込広告があるから、新聞を購読するという女性もいた。新聞から折込広告の束を抜き出して、新聞の前にチラシから先に読むという。この場合は、もしかしたら新聞に書かれている内容よりも広告のほうが好きなのかもしれない。

スーパーのチラシなどを比較して一番安い店の商品にマジックで印をつける。アナログな手法だが、今でもそのようにしている人もみかける。ただし、これはデジタルの得意分野である。

総広告費は4年連続増も折込広告費は減少

2015年の日本の総広告費は前年比0.3%増の6兆1710億円、4年連続プラスで推移している(電通『2015年(平成27年)日本の広告費』)。しかし、折込広告は4687億円で同4.7%減となった。『日本の広告費』では、「新聞の部数減に加え、折込枚数と用紙サイズの縮小に伴い、減少した」とある。

新聞発行部数は2004年以降減り続けている。2015年は一般紙、スポーツ紙あわせて4424万6688部で前年比2.5%減である。2005年の5256万8032部と比べてみると実に15.8%減となっている(日本新聞協会「新聞の発行部数と世帯数の推移」)。

若年層を中心に新聞を読まない人が増えている状況において、どうやって情報を届けることができるのか。新聞以外の媒体を使って、折込広告を行うことも視野に入れなくてはならない。

実際に読売ISによる登録制のチラシ宅配サービス「チラッシュ」や朝日オリコミのポスティングサービス「ぽすけっと」など、新聞無購読層へのチラシ配信のサービスが既に始まっている。

折込広告の新たな試み

今後の折込広告サービスの特徴は、折込広告を起点にしたインターネットへの誘導が鍵になっている。例えば、三越伊勢丹では、折込広告を入口にWebサイトに誘導して、リッチコンテンツを提供している。

またセブンネット(求人広告サービスのアイデムグループ)の『チラシプラス』は、よく行く店舗のチラシやお得情報や生活情報をまとめた生活便利帳アプリである。大規模流通から1店舗の食品スーパーまで、チラシをレギュラーで発行する小売・流通業に、チラシのインターネット配信ツールとして利用されている。チラシのほか「タイムセール」「クーポン」などのセール情報を、プッシュ配信で直接かつタイムリーに消費者の手元に届けることができる。

タイヘイグループの東洋紙業では、デジタル印刷による「くじ付きチラシ」のサービス提供をしている。これはチラシにシリアルナンバーやQRコードを印字して、ログがとれるチラシ印刷である。シリアルナンバーを事前管理することで、エリア集客集計が可能になった。

印刷会社は、単にチラシを刷るビジネスから付加価値を与える印刷物を制作することを求められている。この場合、ログをとれることが付加価値で、ダイレクトマーケティングの手法を取り入れている。

生活シーンに合った広告配信

広告手法としては、生活者の行動パターンとメディア接点を見出していくことが不可欠になる。生活者の一日の行動から考えてみても広告に触れる機会は数多い。

朝起きてからテレビや新聞、スマホに触れることから、通勤・通学途中や職場や学校にいる時間、また主婦の場合は自宅での過ごし方や買い物先など、それぞれの立場や場所によって接触するメディアが異なる。また平日と休日では過ごし方が違うし、接触するメディアも異なる。

それぞれのシーンを想定して、性別、年齢別、エリアごとの特性を考慮し、最適なメディアに最適な情報を配信することが必要になっている。印刷会社もそこに踏み込んでいくことで、仕事の幅が広がるだろう。

(JAGAT 研究調査部 上野寿)

 

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2016年6月30日(木)14:00-17:00(受付開始13:30より)