見える化と評価制度

掲載日:2018年6月4日

急速なデジタル化や人手不足対応など社会環境が大きく変化するなかで人事評価制度に求められるものも変わりつつある。

原価の見える化による収益改善の取組みというと、細かい時間管理で社員を縛り付ける仕組みと捉えられることが少なくない。 しかし、本質は社員の自主性や自発性を引き出す取組みと考えている。そのベースとなるのが作業時間などの精緻な実績データとなる。数値をベースに考えることを習慣づけ、指示を待つのではなく、自ら気づき、考え、動けるようになる人材をつくり、全員経営や自走集団といった言葉であらわされるような組織づくりの取組みとなる。

原価の見える化の次のステップとなるのが評価の見える化(仕組みづくり)である。極論ではあるが、社員の改善活動によって増えた収益が、そのまま役員報酬の増額となるようではモチベーションは続かない。100%は難しくとも納得感のある適正な評価に基づいて賞与、昇給、昇格などのかたちで報いることが必要となる。当たり前といえば当たり前ではあるが、中小企業では制度の設計、運用ともハードルは低くない。

折しも評価制度そのものも転換点を迎えつつある。プライムコンサルタント代表の菊谷氏によれば、担当業務の経験度や熟練度に対して給与水準が決まる職能級制度は、会社の業績が伸びていればフィットするが、業績が頭打ちで変化が必要な局面ではうまく機能しない。また成果主義はデフレ対応で人件費を抑制するための手段として用いられたため社員のモチベーションを落とす結果となった。目標管理制度は、会社の事業戦略が明確で、社員とビジョンが共有されていればうまく機能し人材育成にもつながるが、そこがあいまいだと何年か経つと目標が形骸化、マンネリ化してしまうという。 変化が激しく「先の見えない」時代に対応していくためには、社員の創造力や発想力を重視し、ボトムアップ型の自由闊達な組織風土づくりが求められる。それを支える評価制度として、失敗を減点するのではなくチャレンジすることが評価されるような仕組みを「脱平成型人事」と称して提唱している。

空前の人手不足のなか良い人材を採用するためにも社員の成長を支援するようなマネジメントの仕組みづくりは優先度の高い課題であろう。

(研究調査部 花房 賢)

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