今回は、いつものキーワード解説ではなく、「生成AI技術」を印刷業界ではどのように応用していくのか? 個人的な見解(独断)も含めて述べてみたい。
いまさら「生成AIとは?」と言っても、皆さん興味がないと思う。それくらいに「生成AI」は広く普及してしまったし、普及しただけでなく「皆さん自身も実際に使っている」というのが(お試し以上に?!)、今までの新技術と大きく違うところである。とりあえずAIに聞いてみれば「それなりの回答はしてくれる」し、実際にやってみると便利なので、癖になる人も多いと思う。それくらいに実践的な技術なのだ。
そこで今回は、いつものキーワード解説ではなく、「生成AI技術」を印刷業界ではどのように応用していくのか? 個人的な見解(独断)も含めて述べてみたい。
生成AIと著作権
その割には、印刷業界の仕事で生成AIが使われていないのは不思議である。印刷業界で生成AIが話題になると、誰でも最初に思い浮かぶのが「画像作成」「画像レタッチ」「デザイン」だと思う。それでも実際の仕事で使われていないのは、やはり著作権が気掛かりなのだろう。
現在の生成AIの技術レベルは、ひらめきや空想によって新しい画像・デザインを創造するのではない。世界中に氾濫しているデザインや写真などを検索し、それを参考にして画像を作成するのが生成AIの技術なのだ。そのため著作権についてはハッキリしていないので、著作権フリーをうたっているアドビのソフト(膨大な著作権フリーのライブラリーを持っているだけでもアドビは有利)など以外は、現在のところ二の足を踏んでしまうというのが正直なところであろう。従って、印刷業界以外での応用例、つまりマーケティングの事例なら世界的にもたくさんあるのでリスクも少なく、印刷業界でも使われるということだ。
One to Oneマーケティングへの活用
具体例としては「One to Oneマーケティングに対してのDM手法」などが挙げられる。AI技術が使われるのはターゲットの仕分け、完全なOne to Oneというより8種類のグループ化など、「何種類に仕分けしたらよいのか? 文面は??」等々の相談相手としての生成AIはとても頼りになる。8種類ならグルーピングした方が効率はよいが、20種類以上なら完全One to Oneマーケティングの方がワークフロー的にもスッキリする。
生成AIの技術は、今まで手付かずにしていたホワイトカラーの仕事を合理化するわけだから、手間暇がかかる部分は無視できる。そのため、完全One to Oneマーケティング化のコストを考慮する必要はなくなるわけだ。印刷もデジタルでRIPスピードも高速化するのだから、印刷に対するイメージも大きく様変わりしてしまう。
グルーピングは本来アナログ印刷向けのものだが、デジタル印刷システムがいまだ中途半端だとグルーピング化のメリットも出てくる。しかし、理想的な高速デジタル印刷システムならその必要もなく、完全One to Oneマーケティングの方がスッキリするのだ。
何度も言うが、一番手間暇がかかるOne to Oneに対応するための人件費がかからないのだから、少しでも効果が大きいならマーケティングもOne to Oneの方向に向かうはずである。そして、効果が大なら印刷単価も上げられるし、「印刷ビジネスが大量複製から脱却する」ということなのである。マーケティングに関しては印刷業界以外でも生成AI技術の応用が進むので、「最大の効率が得られる仕分け方法」「アプローチ手法と具体的な中身」については、生成AIの応用がますます進むであろう。
新たな印刷メディアに期待
デザインの話に戻るが、生成AI技術が話題になったときに、かつて折込チラシに関わった人間からすると、「折込チラシのデザインはAI化できるよなぁ??」と思ってしまう。しかし、いまだ実用化されていない。チラシのデザインというのは、ひらめきというよりは論理的にデザインされているので、AI化はたやすいと思っていたのだ。
例えば売り出し商品を左上に配置し、家電なら白モノ、冷房、空気清浄機等々とまとめていくというルールがある。AIによるチラシデザインシステムをなぜ商品化しないのか?不思議で仕方がないのだ。いまさら折込チラシでもないのかもしれないし(その割には効果があるので判断が難しい)、チラシをDM化したら効果はあるのだろうが、その費用対効果はというと「?」が付いてしまう。
折込チラシ・パンフレット・DMに代わる(替わる)新しいメディアの登場がないと、費用対効果の点でチラシに代わるDMは難しいのかもしれない。生成AIが新しい商業印刷メディアを創出するのか? 天才マーケターが新メディアを生み出すのか?? 印刷の未来に期待している。
(専務理事 郡司 秀明)
				
			

