多品種/小ロット/バリアブル時代のプロセスオートメーションのアプローチが始まっている

掲載日:2019年9月11日

印刷業界において売上大幅向上が厳しい中、業務効率を上げ利益を増やしたい、というのは切実な想いである。

ITや他の分野の技術革新を使って効率向上に取り込むのは、システム全体に関わるケースが多く、トップダウンで方針を出すべき、大きなテーマである。 着眼点としては、プロセスオートメーション(印刷工程自動化)だ。生産システムを有効に利用し、顧客からのオーダーを経済的に処理して、無駄をなくしていくのである。

また、印刷業界において多品種/小ロット/バリアブルは、避けて通れない状況にある。これらの対応に親和性のよいデジタル印刷システム、および印刷工程管理の自動化は重要なポイントである。

「プロセスオートメーション」という言葉は、世界大百科事典的には、加工される対象が流体や粉体であることの多い化学工業などの装置産業のパラメータ制御として語られていた。 対比した言葉として「メカニカルオートメーション」があり、自動車に代表される組立機械産業では工程の連続化に必要な自動化制御が使われている。

これらの言葉は、ネットワーク、コンピューターを軸にしたシステムが、サービスも含めたさまざまな分野に浸透していなかった時代に定義されたものである。現在では工程全体を通して自動化する意味で、プロセスオートメーションをとらえるべきだ。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)という言葉がある。 これは、認知技術(ルールエンジン・機械学習・人工知能等)を活用したホワイトカラー業務の効率化・自動化の取組みである。人間の補完として業務を遂行できることから、仮想知的労働者とも言われ、業務の対象が限定されているようだ。

ファクトリーオートメーション(FA)やスマートファクトリーという単語もあるが、工場内に限定される言葉だと言える。 印刷の受注から発送までの印刷に関わる全ての工程を総合的に自動化していくことに対応する言葉は見当たらない。

そこで、総合的な印刷工程の自動化として対応する言葉として、あえて「プロセスオートメーション」と記してみた。RPA、FA、MIS、自動検品、自動スケジューリング、自動トラブル対応処理‥‥、さまざまな技術アプローチがある。 これらに共通するのが、IT技術、AIアルゴリズムといったこの時代のトレンディな技術である。 近い将来は、これらの技術を総合的に連携させ、全工程を自動化できる真のプロセスオートメーション時代を夢見てはいかがだろう。

キヤノンは、ネットワークカメラと得意の画像処理とで、印刷工場内の自動化を開発している。ネットワークカメラで検知した情報によって製造に関わるロボットと連携し、省人化と品質向上を目指している。 ネットワークカメラは防犯面で画像解析によって、犯人同定、追跡、解析で活躍しているのは、ここ数年のニュースで示されている通りである。ネットワークカメラと解析技術を使って、印刷工場内の状況把握を行うのはもちろん、印刷工程そのものに利用できる可能性が高い。例えば、印刷の品質管理の入力装置としても利用可能である。印刷会社からの具体的な依頼があれば、連携できることはまちがいない。

タクトピクセルは、印刷画像を深層学習(ディープラーニング)で画像分類するソフトウェアを開発している。 AIには、制御、推論、機械学習、ディープラーニングと、複数のレベルがあることはご存じと思うが、一番レベルの高いディープラーニングを使って画像分類を行っている。 先端技術に取り組んで、市場に適合させようとしている話はたいへん興味深い。

日本HPは、IGAS2018で HP PrintOSを紹介してる。 HPデジタル印刷機の所有者は、安全性の高いオープンなクラウドベースのPrintOSプラットフォームに、いつでも、どこからでもアクセスできる。そのため、グローバルに、例えばカルフォルニアから東京へデータ送信を行い、受注から発送までの業務を効率的に管理する、というソリューションを展開している。
多数のモジュールで構成されており、モジュールの追加によって印刷工程全体に対応したプロセスオートメーションとなる可能性を秘めている。
HPはグローバル企業であり、グローバル視点でシステム全体を考慮した戦略やアーキテクチャー構築に長けており、見習うべきところが多々ある。

富士フイルムグローバルグラフィックシステムズは、デジタルプルーフシステム、インクジェットデジタルプレス、プリントオンデマンドシステム、ワイドフォーマットインクジェットシステム、ワークフローシステム、カラーワークフローに関わる製品群を持つだけでなく、印刷材料の開発力もあり、それらを組み合わせて印刷システムを円滑に動かす 印刷業務運用の将来像を持っている。 総合的な取り組み状況から、印刷会社のあるべき姿を共有してほしい。

(JAGAT 笹沼信篤)

以上の4社は、10月8日の研究会「プロセスオートメーションがもたらす未来」で、登壇いただく。 特徴ある技術紹介と、個別の技術を取り込みながら印刷業務全体を見てアプローチしているソリューションと、微視的観点と巨視的観点の両方が聴ける。という、目から鱗情報満載の研究会である。

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プロセスオートメーションがもたらす未来

2019年10月8日(火) 14:00-17:10