変わる新卒採用トレンド「通年採用」がもたらす影響

掲載日:2019年10月4日

経団連が2018年10月に表明した「就活ルール撤廃」により日本の新卒採用状況は転換期を迎え、経団連と大学の合意により2022年新卒から通年採用へ移行する方向だ。

日本の採用方法は新卒一括採用が主流であり、企業が横並びで採用活動を始め、4月1日に一斉に入社するのが一般的だ。一方、その対極に位置するのが通年採用であり、企業が年間を通して必要性に応じて、欲しい人材を自由に採用することである。採用が自由化になることで、優秀な学生に対して早期にアプローチができることや、卒業時期の違う海外の大学生、第二新卒人材等、採用できる人材の範囲が増える等のメリットが生じる。採用難による優秀な人材の獲得が困難を極めるなかで、その選択肢が増えることはプラスに働く。また、学生にとっては、年間あるいは大学1年生から、就職活動の一環として、多くの企業をゆっくり見極めることができるため、メリットとして捉えることができる。

一方、これらのメリットを裏返せば、通年採用により人材獲得競争がさらに熾烈化する可能性があり、特に中小企業にとっては厳しい競争を強いられる。例えば、早期に学生へアプローチができることで、優秀な人材を早い段階で確保することができるが、そこは知名度の高い企業や安定力の高い大企業が優位に働く。また、学生にとっては通年採用により就職活動ができる機会が増えるため、他企業の内定を獲得できる可能性は継続的に生まれる。中小企業が人材を確保したとしても、内定辞退を受ける確率が高まり再度募集をかける必要がある。また、新卒一括採用と違い通年採用は採用時期の明確な区切りが無いため、採用活動期間が長期化することでコストが増える懸念も生じる。

通年採用により新卒募集のプロモーション方法も変化する。一括採用とは違い採用期間に明確な区切りがないため、常に採用に関する情報発信を行う必要がある。そのためには、求職メディアへの広告出稿だけではなく、自社の採用Webページの充実が不可欠である。特に中小企業の場合は、「企業風土」「理念や経営者の想い」「仕事内容」「やりがい」「職場環境」など、学生が重視する価値観に焦点を当てることで、給料や安定性だけではなく、自社の仕事環境に興味を抱いてもらうことが重要だ。 印刷会社には様々な業務がある。印刷業務は学生でも容易に想像できるだろうが、企画からデザイン加工まで一貫して携わることで世界に一つだけのモノを作ったり、デジタル施策と融合したプロモーション支援をしたりなど、印刷会社には印刷「プラスα」の魅力がある。こうした業務の広がりや、仕事の社会的意義を学生に伝え、さらに実際に働いている「人」を織り交ぜながら訴求していくと説得力が増す。そうした情報を、採用Webページを起点に、学生が接触するインスタグラム、Twitter、Facebook等のSNSやユーチューブ等の動画で能動的に発信することで、通年で訴求していくことは効果的である。

中小企業にとって、通年採用は厳しい競争下に直面するが、2022年以降は避けては通れないテーマとなる。印刷業界向けに通年採用に関する対策セミナーを企画し最新情報と対策について考察していきたい。

CS部 塚本 直樹

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