今年の『印刷白書2015』特集ページは

掲載日:2015年6月11日

今年も印刷白書の編集に取り掛かる時期になった。今年の特集は、『未来を創る』を読み込むことからテーマを探り出していきたい。

特集は『未来を創る』の先にあるもの

印刷白書では毎年第1章に「特集ページ」を組んで、その年のトレンドや経営課題について内容を掘り下げている。そしてそれはJAGAT大会、pageイベントなどにも直結するものである。

この直近の2年間の特集は、2013年が「デジタルイノベーションと新領域ビジネス」で、DTPは印刷業界にとってイノベーションであったか? と問いかけた。2014年が「デジタルマーケティングからみたメディアビジネス」であり、ポスト『未来を破壊する』の世界を特集に組んだ。

どちらもデジタル化が前提になっている。デジタル化の総括と今後の新たな挑戦、事業展開、印刷会社がもつべき知識やスキルについても考察した。これは世の中がデジタルで覆われている現実から目をそらせてはいけないとの思いからである。

いまや誰もがスマホを使っているし、営業マンで持っていなかったら仕事にならないだろう。そこでのキーワードはビッグデータであり、位置情報であったりする。そこにデジタル印刷やWeb to Printのビジネス、さらにはBPOなどをどのように絡めるかが、新規ビジネスの答えの一つになっているだろう(もちろん今の時代すべて正しい答えなど存在しない)。

なぜITやマーケティングのことを知らなくちゃいけないのか

おっしゃる通りで、知らなくても構わない。だが、ビジネスのリアリティを感じていなくてもよいのなら、という但し書きがつく。

DTPが普及したことにより、一番大きく変化したことは、個人が情報を発信することが可能になったことであろう。その昔は、自分の書いた文章が活字になるなんて夢のような話であった。それはプロフェッショナルのみに許されたものであった。それがどんな情報も誰でもが発信可能な時代になった。つまり、ITやマーケティングのことを知るのは、DTPを知ることと同じように重要なことなのである。

JAGAT刊の『未来を創る』では、第2章にマーケティングに関する記述が続く。そして、最後のほうに「他人事のつもり?」という見出しがあり、以下のように書かれている。

印刷業に従事する人は、この章を読んで(流し読みかもしれないが)こう思っているかもしれない。「自分に何の関係があるのだ?」
正直に言おう。何も関係はない。
そして、それこそが問題なのだ。

続けてマーケティングオートメーションについて詳細を述べた第3章には、呼応するように「まだ他人事のつもり?」という見出しがある。

さて、印刷業に従事する人は、この章をざっと読んでやはりこう思っただろう。「だから自分に何の関係がある?」
大いにあるのだ。

メトリクスと印刷

メトリクスとは、データを収集・定量化し、計算や分析によって管理しやすいデータに変換した指標のことである。ここで課題になるのが、果たして印刷物が測定できるか? ということである。『未来を創る』では、もちろん可能だと言っているのだが、印刷業界の中にいる人でも「できる」と言い切る人もいる。なぜできないと思うのか? つまりは「やらないだけだ」というのである。

今年の「特集ページ」は、『未来を創る』の重要なキーワードでもあるメトリクスやマーケティングオートメーションといった新たなマーケティング手法についても触れていきたい。カタカナばかりで恐縮だが、適切な日本語がないのも事実だ。マーケティングオートメーションはそのものズバリ、「マーケティングの自動化」であるが、言い換えれば、マーケティングの見える化であり、営業手法の見える化、そして経営の見える化・可視化にまでつながるのだと思う。

JAGAT自身もこの辺の事情を研究して、セミナーやイベントに活かしていきたいと考えている。印刷会社が補完できるビジネスとは何か、『未来を創る』からインスパイアされたビジネスモデルの可能性について探っていきたい。

『印刷白書2015』は9月末~10月上旬に発行する予定である。今年もJAGAT会員企業の代表者には献本する。『未来を創る』と併せて読んでいただくことで理解が深まるように編集していくつもりである。ご期待ください。

(JAGAT 研究調査部 上野寿)

 

 ThisPointForward_150-216hakusyo2014