システム化による印刷ビジネスの革新

掲載日:2022年11月7日

イギリスにある印刷業向けMISベンダーのTharstern社は自社の専門家の知見をさまざまな形で公開している。システム化の進め方について紹介したEBOOK「AN INTRODUCTION TO SYSTEMIZATION」から、その概要を紹介する。

本書では、まず、印刷会社の経営者や取締役に対して次の問いを投げかけるところからスタートする。

  • 何もかも自分でやらなければならないことにうんざりしていませんか?
  • いまの事業から自由になる、あるいは引退を考えていませんか?
  • 企業価値を上げたいと思っていませんか?
  • 印刷事業の売却、あるいは新経営陣への承継を考えていませんか?

システム化とは、あなた自身(経営者)の代わりをつくることである。あなたの知識、経験、ビジネスのやり方がシステムに組み込まれる。システムとは相互に管理する一連の工程と手順であり、何らかの方法で形式化され、従業員はそれに従うように訓練される。

あなた自身が会社にいなくてもなんの問題もなくスムーズに会社が運営されることが理想であるが、現実には以下のような問題が起こっている。

  • あなたのように、正確に正しいことをする方法を理解している人は誰もいないようである。
  • 社員が何かをする姿を見て、自分ならもっと早くうまくできるのにと思う。
  • あなたが以前に業務改善したことが、いつのまにか以前の状態に戻っている。
  • 以前に似たような取り組みをしたにも関わらず、ゼロから始める改善プロジェクトを何度も目にする。誰も前回の取り組みから何かを学んだり、取り組みを元にさらに改善しようとはしない。

これらの問題の解決策は、ビジネスのさまざまな側面をすべてシステム化することである。システム化により、あなたがそこにいるかどうかに関わらず、社員の誰もが何をすべきか、どのようにそれを行うべきかを正確に知ることができる。

■最終目標「ターンキービジネス」

ターンキー ビジネスとは、新しい企業オーナーが会社にやってきて「キーを回す」だけですぐにビジネスを開始できる状態にあることを意味する。何を生産または販売するか、どの材料を注文する必要があるか、顧客が誰であるか、そして顧客を引き寄せる方法を瞬時に理解できる。ビジネスがシステム化されており、あらゆる業務において手順が明確化されているためである。それがフランチャイズモデルであり、ビジネスオーナーになりたい人にとって魅力的である理由である。
システム化の取り組みの最終目標は、 あなたの会社をターンキービジネスにすることである。ビジネスを売却したり、フランチャイズに変える意志がなかったとしても、システム化のプロジェクトは、そのようにアプローチすべきである。継続的に改善された標準手順をもとにシステムを介して、経営者がいてもいなくてもビジネスがスムーズに実行され続けることを目指す。ターンキービジネスの最良の事例がマクドナルドである。

システムは従業員の自律性を阻害しない
システム化をすると従業員の自律性が失われるのではないかと言われることが多い。しかし、そのようなことは断じてない。システムを運用するのは従業員であり、その逆ではない。従業員は定められた作業手順にやみくもに従うことを求められてはいない。システム化されたビジネスに関わる誰もが、システムを継続的に改善すること、システムの不備を発見して対応する方法を考え出すことについて責任がある。
さらに、システムは従業員に自由に判断する裁量を与える。会社の存在意義(パーパス)と戦略的目標について従業員が正しく理解していれば、重要な決定であっても簡単に判断を下すことができる。会社をこうした状態にすることは、システム化の取り組みの一部である。

一般にビジネスマンの大半は毎日の勤務時間の少なくとも40%を定型的な業務に費やしていると推定されている。これらの業務をシステム化すると、直接関与しなくてよくなるか、少なくとも必要な時間を半分に削減できる。
効果の大きなところからシステム化に取り組むべきであるが、小さな問題への取り組みもおろそかにしてはならない。システムの改善に時間を費やすほどビジネスの価値が高まる。たとえ、その改善効果が1%あるいは0.1%にすぎないにしても継続することで、長期的には大きな違いを生むことになる。

システム化の進め方

  1. あなたが直面しているフラストレーションを特定し、次の言葉で文章化する。
    「私を悩ませているのは…」。例えば、「私を悩ませているのは、サムがたびたび不備のある入稿データを受け入れていることで、その対応で余計なコストがかかっていることだ」。
  2. フラストレーションが特定の人に集中している場合は、システムの問題として言い換える必要がある。これにより、フラストレーションの実際の原因に対処できる。ここでの考え方は、人が原因で問題が発生することはなく、システムが壊れているかシステムが不足していることが原因であるととらえることだ。前述した具体例の言葉は「私を悩ませているのは、顧客の入稿データが正しいかどうかを確認するプロセスが整っていないことである」と言い換えることができる。
  3. 根本的な原因を特定する必要がある。 次の質問を自問してください。
    -このフラストレーションは、私の部門/ビジネスに具体的にどのような影響を与えますか?
    -どのくらいの頻度で発生しますか?
    -誰が関与していますか?
    -このフラストレーションの具体例は何ですか?
    -このフラストレーションの代償は? (時間のロス、無駄になる資材、イライラする顧客)
    -問題を放置するとどのような結果になりますか?
  4. 上記の質問に対する答えを検討して、フラストレーションの影響を判断し、それが本当に改善したいものかどうかを判断する。お客様からの苦情は切迫感を従業員に与えるかもしれないが、それが将来再び発生する可能性が非常に低い場合は、対処することで貴重な会社のリソースを浪費することになる。このチェックのプロセスは重要であり、省いてはならない。
  5.  問題の原因となっているシステムの欠落または破損した領域を特定する。 ここで、次の文を完成させることで、属人的なフラストレーションをシステム関連のフラストレーションに変換することができる。「本当の問題は、○○のシステムがないことで、そのシステムがあると○○を実現できる」。上記の例では、「本当の問題は、不備のある入稿データを自動的にチェックするシステムがないことで、そのシステムがあるとエラー箇所を特定し、システムが修正する、あるいはオペレーターにエラーを知らせることができる」となる。
  6. このように表すことで、新しいプロセスの設計、導入テスト、および実装に進むことができる。同時に誰が責任者となるか、主な手順は何か、必要なドキュメントは何かを決める必要がある。

もとのドキュメントは30ページ以上あるもので、かなり省いたり意訳しているところがあるので、興味を持たれた方は以下から原文をダウンロードいただきたい。
コンタクト先を登録すれば無料でダウンロードできる。
https://www.tharstern.com/resources#read

「AN INTRODUCTION TO SYSTEMIZATION」

研究調査部 花房 賢