データの所有権

掲載日:2014年8月14日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:知的財産権

Q:データの所有権

A:写真を撮影し,デジタルデータとして保存する時そのデータの所有権は誰のものかということがよく問題になります。
  印刷物の受発注形態は民法632条の請負契約に該当します。この請負契約とは,ある物を製造することを発注者が請負人に依頼し,請負人がその物を完成させその完成品に対して発注者が請負人に報酬を支払うことを約束した契約であり,当事者間の意思表示により成立する諾成契約です。
  印刷物制作にあたっては,写真・フィルム・PS版等中間生成物が発生します。請負契約における取引の対象は,特約がない限り印刷物のみであり中間生成物の所有権は原則として印刷会社に帰属します。

  ところで印刷物に使用される素材である写真などをその印刷物のために制作した場合,その写真の権利の帰属はどうなるのあろうか。
まず,著作権ですが、れについては得意先,印刷会社およびデザインを外注した場合の外注先のいずれが著作行為をおこなったかにより,著作権の帰属が決定します。もし,印刷会社の従業員であるカメラマンにより撮影されていれば,写真の著作権はカメラマン若しくは印刷会社に帰属すると解釈できます。一方,写真の所有権は,その写真が取引の対象となっていない限り印刷会社に帰属すると考えられます。

  また,民法は物権の客体となるものは有体物に限られ,それも有体物の一部であってはならず,必ず独立した固体でなければならないとされています。したがって,デジタルデータは所有権の対象とはならず,そのデジタルデータの入った媒体が所有権の対象となります。それゆえ,この場合,当該媒体が取引の目的となっていないのであれば,印刷会社にその所有権が帰属することから,デジタルデータの入った媒体を返却する義務はありません。
  もし、データを譲渡すという事になったら、有償なのか無償なのか、有償の場合の売却する値段については,当事者の話し合いで決定されています。

 

(2002年1月1日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)