「早く、美しく、環境に優しい」が付加価値を生む

掲載日:2014年8月21日

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:「早く、美しく、環境に優しい」が付加価値を生む

 

日本アグフア・ゲバルト株式会社 代表取締役社長 松石浩行氏に聞く

印刷業にとって、環境問題と生産性の両立は最も関心の高いテーマである。アグフア・ゲバルトは「高品質、最大の経済性、トータルな環境保護。これらの課題は、等しく重要である」ことを企業理念に掲げ、現像処理が不要で、高品質と利便性、高耐刷力を兼ね備えた革新的サーマルプレートの分野でリーダー的役割を果たしている。

この4月に日本アグフア・ゲバルト初の日本人社長となった松石浩行氏に、環境問題を中心に日本国内のニーズをどう捉えるかを伺った。

――現在特に力を入れている分野を伺いたい。

松石 基本的なスタンスとしてはワークフローとプレートに力を入れている。 CTPのプレートセッタは技術的には差別化が困難になって、JDFを中心としたワークフローシステムが重要になっている。次世代JDFベースデジタルワークフローシステム「:ApogeeX(アポジーエックス)」では、Adobe PDF Print Engine搭載の次期バージョンを今夏発売する。CIMとの連携をキーワードに開発を進めている。

また、Webベースのプロジェクトマネジメントシステム「:Delano(デラノ)」は顧客からの入稿データをページ校了まで進行させるWeb承認機能と、ページ承認終了後:ApogeeXにページが送信され自動的にプレート出力まで実行する自動製版機能をもつ。顧客とWebを介してやり取りすることで入稿プロセスを効率化し、顧客とのコミュニケーションを向上させ、かつ校了後の自動製版機能により生産の自動化を実現できるという2つのメリットにユーザーの関心が高まっている。

CTPの登場によって、印刷業界は可能性が広がった。オフセット印刷のオンデマンド化が可能になり、4色機や8色機が使いやすくなって、小ロットなどの分野も活気づいた。プレートの需要は今後さらに拡大が予想され、特にケミカルレスプレート市場は急速に拡大するだろう。プレート工場は全世界に8つあって、中国工場が最大規模だ。韓国に建設する新工場は、ケミカルレスプレート「:Azura(アズーラ)」の専門工場とする予定だ。

――:Azuraの特長は?

松石 :Azuraは環境に優しいだけでなく、欠点が一つもないプレートとして、アグフアとしても自信をもっている。機上現像ではないのでヤレ通しが不要で、オフ輪でも使用できることが最大の特長である。独自のケミカルレスCTP技術により、サーマルレーザー露光後、版面を保護するための専用のクリーニングユニットでガム洗浄するだけで完成し、現像液を全く使用しない環境に優しいプレートになっている。画像コントラストの高い高品質の刷版を得られるので、印刷前検版が可能である。プレートの取り扱いやすさはPS版と同等で、オペレーターに負担を掛けることもない。

環境保護印刷推進協議会(E3PA)によるE3PAゴールドステータスに適合し、国内では商業印刷はもちろんチラシ専業者や食品関係のパッケージ印刷などにも導入されている。

drupa2004で発表以来、ワールドワイドで高い評価を得て、導入ユーザー数は世界一となっている。4月に大阪のダイコロに導入された:Azuraが世界2000台目、日本国内ユーザー50社の記念すべきもので、現在の国内ユーザーは60社に達している。

――デジタル印刷分野はどうだろうか。

松石 デジタル印刷の分野では、産業用印刷向けのUVインクジェットプリンタに力を入れている。サインボードや建材印刷、パッケージ市場向けの「:Dotrix(ドットリックス)」は、既にヨーロッパではコンスタントに売れていて、日本でも来年ごろから販売を開始する準備を進めている。:Dotrixが特殊グラビア、フレキソのオンデマンド化を可能にするのに対して、世界初の完全自動ハイブリッドインクジェット出力機「M-Press(M-プレス)」はスクリーン印刷のオンデマンド化を可能にする。ヘッドはザール社との共同開発によるもので、アグフア製のUVインクを使用する。M-Pressの日本国内発売は未定だ。商業印刷・出版印刷向けのPOD分野に参入する予定はない。

――アグフア本社の体制は?

松石 フィルムメーカーとしてスタートして、その技術に関連する事業領域に拡大し、現在はグラフィックシステム事業、ヘルスケア事業、マテリアル事業の3つが柱となっている。しかし、全分野でフィルムが消え、部門共通の開発テーマがなくなって、部門間のシナジーもなくなった。そこで、2008年1月から資本関係のない3つの会社に分かれ、グラフィックシステム事業はAgfa Graphicsとして分社化される。日本ではどのような体制になるかはまだ未定である。

――ユーザー会が盛んだが。

松石 年に2回東京と大阪で「:Apogeeユーザー会」を開催し、合計で300人ほど集まる。ユーザー同士のフェイスtoフェイスの場として、会の中では情報をオープンにして情報交流を促進している。仕事のやり取りまで発展できればと考えている。

IGAS2007には本社から社長または副社長クラスを呼んで、日本のユーザーの声を直接聞く機会として、ユーザー会でコミュニケーションを図る予定である。 アグフア全体の売上比率では、ヨーロッパが半分を占め、残りの半分を北米とアジアが2分している。アジアの中でも日本が最重要国の一つであることは言うまでもない。

――IGAS2007は環境が切り口になるのか。

松石 「Stay Ahead. With Agfa. アグフアと共に一歩先に」をテーマに、「:Azura」および対応CTP「:Avalon(アバロン)LF」「:Acento(アセント)Ⅱ」の実演と導入ユーザーの声とともに紹介する。先行している成功事例として、オフ輪によるチラシ印刷のニシカワや、A倍判の食品関係のパッケージ印刷のクラウンパッケージを紹介する予定だ。また、JDFインテグレーションをキーに、「:ApogeeX」の最新バージョンと「:Delano」をWeb承認機能、Web入稿機能と自動製版機能を中心に紹介する。さらに「だれにでも刷れる高精細印刷」として高い評価を得ているXMスクリーニング「:Sublima(スブリマ)」の展示を行う。

IGASでは印刷機メーカーは「小ロット対応」を売りにしていることから、メイクレディを短縮化しヤレ紙を削減する観点から、複数のメーカーから:Azuraを使ったデモの申し込みもある。

ケミカルレスで一番メリットが大きいのは印刷会社だ。フィルムからCTPに切り替わって、オープン化に逆行してCTPプレートについては現像装置に縛られることになった。しかし、ケミカルレスなら現像装置が不要なので、CTP、プレート選択の自由度が高まることを強調しておきたい。

世界の中でも日本の市場は業種を問わず、最も顧客の要求度の高い国であると言われている。反面、日本市場で受け入れられた商品・サービスのほとんどが、日本以外の多くの国でも評価されている。1950年の設立以来、日本人初の社長として行うべき最大の目標は、日本の顧客に高く評価される商品・サービスを具現化し、お届けすることだと信じている。日本人の「商品・サービスに対する厳しくかつユニークな感覚」を大切にし、顧客と直接接して得た情報・要望を最大限に商品開発・サービスに反映させるべく努力していきたい。

日本アグフア・ゲバルト株式会社
グラフィックシステム事業部
〒153-0043 東京都目黒区東山3-8-1
TEL 03-5704-3140 / FAX 03-5704-3089

 

 

(2007年9月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)