拡大するデジタルプリント市場

掲載日:2014年8月21日

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:拡大するデジタルプリント市場

 

富士ゼロックス株式会社 執行役員 プロダクションサービス事業本部 事業本部長 栗原博氏に聞く

 

 ここへきて急速に拡がってきたデジタルプリントの分野で、PODとマーケティングを連動させたビジネスなど新しい事業を展開する、富士ゼロックスに現在の市場と今後の取り組みを伺った。

--現在のデジタルプリント市場について。

栗原 日本の市場は欧米に比べ、市場規模のわりに立ち上がりが遅い。アジア、特に中国などが大きく成長し、日本をはるかに超える台数のPOD機器が中国へ出荷され、一部の市場では中国が上回っている。日本が段階的にデジタル化しているのに対し、中国では輪転機からいきなりPODを導入したり、輪転機よりも先にPODを導入して新規参入したりする会社もある。ビジネスモデル自体が日本とはかなり違う。
日本もようやく市場が拡大してきた。品質も向上し、新しいアプリケーションもできている。さらに印刷会社のお客様のビジネスにどう紐付けるかだ。そのメリットをエンドユーザー側が認識してきたことも大きい。印刷会社のお客様でのニーズがかなり上がってきた。

--現在の販売展開は。

栗原 一般企業では、社内で印刷部門をもつ会社だ。印刷会社に対しては、事務用ではたくさん導入しているが、生産財としては、ようやく数年前に参入したところだ。ちょうどこのタイミングで、富士フイルムの資本が少し増えた。
富士フイルムは印刷市場を熟知している。弊社の商品を印刷市場に投入して、チャネルの一つとして一緒にビジネスを展開するのは、相乗効果としてプラスだ。富士フイルムグラフィックシステムズに印刷に強い販売チャネルとしてかなり注力してもらっている。日本国内、アジアパシフィックエリアでは直接に活動している。欧米には、アメリカのゼロックスを通して参入している。国内では富士フイルムグラフィックシステムズと協業し、海外ではゼロックスというチャネルを通して商品を出す。メーカーとしては、そういうグローバルな戦略を位置付けている。

--マーケティングと販促、印刷、PODの連携は。

栗原 一つはエリアを絞った、エリアマーケティングで、その地域でのデータを層別し、そこに合ったマーケティングを展開するためのツールとしてPODを使う。
もう一つは、企業がもつデータベースの属性を分析し、PODをつなげて、個の点でアプローチをする手法だ。郵政公社と協業し、新しいビジネスモデルが立ち上がってきた。お客様のビジネスを一緒に考え、どういう層のお客様を拡大したいのか、分析をする。結果として、そこに弊社の機械が入るケースもあれば、同じことを印刷会社に依頼することもある。その印刷会社は、ビジネスとしては弊社の機械を使っているところを紹介するが、それでも基本的には使える、役に立つということをまず実感してもらう。

--そういうコンサルティングのビジネスをされているのか。

栗原 お金はいただいていない。ただし、後者のほうは、企業のもつデータベースを全部分析するようなことをする。例えば、保険会社がある層に保険を販売したい場合に、どういう内容に一番反応するのか、属性を細分化して、数回に分けて勧誘のDMを打つ。そういう手の込んだことをやる場合には、コンサルティングフィーをいただく。あるいは、いただかなくてもPODをフルカラーで1枚100円という値段を付けて買っていただく。そこにはマーケティングのノウハウが全部詰まっているので、100円を高いとは言われない。リターンがあれば、「次はどういうキャンペーンを打とうか」という相談が逆に弊社に持ち込まれる。そういう効果が表れなければ、継続できない。マス広告より、費用対効果が明確だ。

--PODが先行しているアメリカのモデルは参考になるのか。

栗原 日本の商習慣、考え方にカスタマイズして導入するほうが、うまくいく。ヒントはたくさんあるが、そのままでは良くない。アメリカは印刷の注文に対して24時間以内に全部納品しろと言われる。そうなるとPODしかない。ロジスティクスまで全部含めての提案が必要だ。今後、日本でもそうなると考えたとき、ビジネスモデルも大きく変わる。印刷会社でもそれに対応するのであれば、従来の印刷機とPODは何の違和感もなく同居し、要求に応じて、これはPOD、これは印刷と決めることになる。近い将来、日本もそれが印刷会社のスタンダードな設備になると思っている。そのきっかけは、エンドユーザーがそういうニーズを喚起し、印刷会社もそれに合わせて業態変革をしていくということだ。

--インライン化については。

栗原 従来は単体の機械があって、きれいに出れば良かったが、今はインプットをいかに自動化するか、アウトプットをいかにインライン化して、いかに簡単に処理ができるのか。それは自社でやるケースと、ホリゾンなどといった専門メーカーと協業しながらやるケースとで、上流から下流まで一貫してやる。そこに新しいワークフローを入れて、標準化し、効率を上げる取り組みだ。画質の向上と品質の安定にプラスして、いかにしてソフトウエアで、後処理機で印刷機並みの効率を上げられるかというのは、本当に大きなチャレンジだ。これから出す機械はすべてそうなる。

--前処理について。

栗原 前処理は非常に重要だ。いくら真ん中が速いといっても、本当の意味での生産性は上がらない。結局、上流工程が何であっても、印刷がいいのか、PODで出すのがいいのか、どちらでも選べるようなワークフローを流して、あとは自動的に判別して、これはPOD、こういう原稿でこの枚数でこの画質を要求するならオフセットということで、ワークフロー自体を統合して一元化する。これは弊社としては、FreeFlowというオンデマンド用と、富士フイルムの印刷用のワークフローをもっているので、統合して、印刷とPOD、どちらでも使えるようなワークフローを提供していくことに注力している。drupa2008には、それをもっと分かりやすく、使いやすいものにしたいと考えている。

--今後の市場について。

栗原 日本の印刷会社は極めて丁寧な仕事をし、品質に非常にこだわる。そのことが多少PODの発展を妨げている面はあると思う。海外は、国にもよるが、そこまでやらない。とにかくぱっと見て同じならいいのではないか、PODでも問題ないという判断に立てば、そこまで施設を揃えずに処理してしまおうということだ。「むしろ印刷会社としては仕事の幅がもっと広がる」という発想になるには、その辺が多少バリアとして、ほんの少し残っているのではないか。
印刷会社の場合にはビジネスライクに商品を納品して、「あとはちゃんとメンテナンスやりますから」というだけではなく、少しウェットな関係の構築も、ビジネスとして必要ではないかというのは、一方では感じている。

富士ゼロックス株式会社
〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3 東京ミッドタウン
TEL 03-6271-5111(代表)

 

 

(2007年8月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)