紙は情報伝達素材の一つ~思いを伝えられる紙製品作りを目指して

掲載日:2014年8月21日

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:紙は情報伝達素材の一つ~思いを伝えられる紙製品作りを目指して

 

株式会社竹尾 代表取締役社長 竹尾 稠氏に聞く

 

竹尾は1899年の創業以来、紙の専門商社として、特に紙自身に色や風合、そして模様を施した特殊紙の研究・開発・提供に注力し、多くのオリジナル商品が高い評価を得ている。 竹尾の歴史の中で培ってきた紙へのこだわりとまなざしは、全国主要都市で1965年以来毎年開催している「TAKEO PAPER SHOW」にその一端をうかがうことができる。「TAKEO PAPER SHOW 2007」を盛況のうちに終えた竹尾稠社長に、同展への思いを中心に今後の取り組みなどを伺った。

―「TAKEO PAPER SHOW」は’特殊紙の竹尾’と呼ばれる貴社ならではの充実した展示内容によって、業界唯一の、 そして最大規模の展示会として各界からも評価されています。「TAKEO PAPER SHOW 2007」は、 以前とは様変わりしたような印象を受けましたが。

竹尾 「TAKEO PAPER SHOW2007」は4月12日からの3日間、東京丸の内・丸ビルホールで開催しました。42回目を数える今回は、会場をこれまでの青山から丸の内へ移し、新たな「TAKEO PAPER SHOW」を展開しました。 「FINE PAPERS」をテーマとして、A~Zの頭文字の26銘柄のファインペーパーを使い、丸ビルおよび周辺のショップやカフェ、そして国内および世界で活躍するアーティストとのコラボレーションによる作品を展示し、展示作品は会場内展示と同時に開催期間のみ各ショップにて、数量限定で配布することもいたしました。 ファインペーパーは紙市場全体の2~3%程度と考えられますので、市場を拡大していくためには何か大きなプロモーションを行う必要があるというところから企画されました。今年も含めここ数年は毎回常に企画内容に変化を与えるようにしていますが、以前はお客様が使った紙製品そのものや紙を使った成果物などを並べて、「こういう使い方があるのか…」「他の人たちはこう使っているのか…」ということを感じていただく内容でした。それが段々と「この製品はこう使ってほしい」「こういう印刷加工技術を使うとこうなる」といった、われわれから新しい提案をしていく「TAKEO PAPER SHOW」に変わってきました。 竹尾の営業担当者が、来場されたお客様に印刷の周辺市場にある、例えば「グリーティングカードはどう使うのか」「カタログもここまでできるようになりましたよ」と、その周辺市場の技術がどこまで進んできているかをお話しすると、お客様がそれに刺激を受けて自分たちももっといい印刷物を作ろうと感じていただけます。これによって、紙と印刷加工技術とデザインそれぞれのレベルが上がってきますので、竹尾・印刷業界・お客様ともにメリットのあるイベントとなっています。 また、「TAKEO PAPER SHOW」にとって紙と印刷加工技術とデザインの3つはとても大事な要素です。どれが欠けてもいけません。デザイン性が前に出過ぎるとファッションショーのようになってしまいますし、技術が出過ぎてしまうとマニアックな感じになってしまいます。つまり、「TAKEO PAPER SHOW」が独り歩きしてしまうわけです。これでは見る方々にとって面白くないものになってしまうので、原点に戻りながらそれぞれがバランス良く感じられるイベントであるように定期的に軌道修正を行っています。

―過去の「TAKEO PAPER SHOW」を振り返ってみて、印象に残っていることなどをもう少しお聞かせ下さい。

竹尾 「TAKEO PAPER SHOW」では日本にないような海外のいろいろな市場を紹介することも随分やりました。例えば非常にニッチなものであった「アニュアルレポート」を紹介したこともありました。日本は機関投資家が多くて個人株主が少ないので、今でもあまり定着したとは言えないかもしれませんが、日本にはなかった紙に関わるアメリカの文化を紹介したことはとても印象に残っています。ただ、今後については「アニュアルレポート」よりも「環境報告書」のほうが重要となりニーズが高まってくるかもしれません。

―ニッチな市場も大切ということですね。

竹尾 印刷の定義・範囲が広がってきて、印刷技術が多様化しているように思います。コンピュータが個人のものとなって、当然限界はありますがデザインも印刷も個人でできてしまう。それに比例してニーズも多種多様になりますので、ニッチな市場が多くなってくる。これらの多種多様な少量生産ニーズに竹尾はこたえてきました。 私は、紙は情報伝達素材の一つと考えております。紙には、インキをのせてデザインで勝負するための土台というイメージが強いかもしれませんが、紙そのものにも勝負する力があると思っています。個人の感情や企業のイメージを伝えることができる紙があれば、ニッチな市場でのニーズにもこたえていくことができると思います。

―貴社はグラフィックデザイナーを中心としたクリエーターの方々とのお付き合いも長いかと思いますが…。

お客様とのつながりとして、二つの側面をもっています。一方は、紙を製品の素材として使っている紙文具や封筒、出版関係方々で、竹尾にとって直に接することの多いお客様となります。もう一方は、印刷業界を通じたお客様で、こちらは間に印刷会社が入りますので、エンドユーザーの方々はその先にいます。 それぞれ求められるニーズはさまざまですが、それらをしっかりと捉えることは非常に重要だと考えています。竹尾がこれまで提供してきた各種ファインペーパーも、こういったさまざまなニーズにこたえていく中で、研究・開発・販売へとつながってきたものです。常に良い紙製品をご提供していくためにも、今後もエンドユーザーの方々とのつながりはあらゆるチャネルを使って大事にしていきたいと思います。 お客様との接点としては、見本帖本店もあります。1Fでは、竹尾の常備在庫品のうち300銘柄(2700種類)の紙が色のグラデーション別に一覧できるシステムを用意し、2Fでは紙やデザイン関係書籍を閲覧いただけるほか、紙とデザインの作品をサンプルとして常時展示しています。年に何回かの、紙とデザインに関するさまざまな企画展やセミナーも開催しています。

―環境への取り組みを非常に熱心ですが。

竹尾 竹尾では、「『環境対応紙GA(グリーンエイド)商品』の積極的な開発を展開し、地球環境への負荷がより少ない製品を提供していく」をスローガンに、環境対応を行っています。「GA(グリ-ンエイド)商品」は、竹尾の非木材紙・再生紙・ 無塩素漂白パルプ紙、およびその他の方法で環境保護に貢献する紙の総称で、効率的な材料確保のための森林管理、印刷適性に合うような製品・技術の開発、原料問題への対応など、多面的に考えております。 ただ、今は原料価格が上昇してきており、数年単位で「竹尾に求められること」「竹尾ができること」が変わってくるかもしれませんので、今後も環境への対応には力を注いでいきたいと思います。

株式会社竹尾
本社:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-12-6
TEL 03-3292-3611 / FAX 03-3292-9202
見本帖本店:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-18-3
TEL 03-3292-3669 / FAX 03-3292-3668

 

 

(2007年7月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)