次世代DTPの萌芽と出版支援サービス

掲載日:2016年3月3日

※実用化が始まったクラウド型日本語組版レイアウトと電子出版・印刷サービス

出版分野では、印刷物製作と電子書籍を同時に刊行するサイマル出版が標準になりつつある。現在はDTPソフトウェアを利用した印刷データ製作を先行させ、印刷データを流用して電子書籍データを製作する手法が一般的である。製作作業や校正は2度手間となり、無駄なコストアップとなっている実態がある。

そのため、OSやアプリケーションのバージョンに左右されるDTPデータではなく、汎用性の高い形式でデータを保管・共有し、いつでも2次利用が可能なこと、専用マシンや専門のオペレータが不要で誰でも容易に扱える組版レイアウトの環境が求められている。

このような課題を解決し、コンテンツの一元化を実現する仕組みとして提供されつつあるのが、クラウド型組版レイアウトソリューションや出版支援サービスである。
Webブラウザ環境でコンテンツを共有し、日本語組版や印刷データ製作、電子書籍製作まで可能となる。

page2016カンファレンスでは、「次世代DTPと出版支援サービス」としてクラウド型組版レイアウトソリューション、出版支援サービスを提供する凸版印刷、ビブリオスタイル、ボイジャーの3社に話を聞いた。

TOPPAN Editorial Navi(トッパン・エディトリアル・ナビ)

凸版印刷が提供するワンソースから同時に印刷書籍と電子書籍を制作できるクラウドサービス。Web上で原稿を共有し、ペーパーレスでの誌面確認や共同編集により、場所と時間に囚われない作品づくりを可能とする。制作コストの削減やリードタイムの短縮も可能となる。

Vivliostyle(ビブリオスタイル)

ワンソース・マルチユースで電子書籍、Web、紙の書籍を製作できるWebブラウザベース自動組版システム。HTML5やCSS3、Webフォント、SVG、数式(MathML、他)など最新のWeb標準技術に準拠しており、世界的に注目されている。高度な日本語組版、ページレイアウト機能を備えており、紙の書籍だけでなく、レスポンシブデザインでフルHDのPC画面からスマートフォン・電子書籍リーダーまで対応する。

Romancer(ロマンサー)

ボイジャーが開発・運営している電子出版のためのWebサービス。一般個人でも法人でもWebブラウザベースで原稿を入力・編集することで、EPUB3データとして出版(販売)することが可能なWeb出版システムである。
小説・コミック・写真集などの原稿さえ準備すれば、誰でも容易に出版活動をおこなうこと(セルフパブリッシング)ができる画期的なサービスである。
オプションとして電子書籍データから自動でオンデマンド印刷をおこなうサービスも提供されている。

次世代DTPとしてのクラウド型日本語組版レイアウト

現在のDTPシステムは、事実上、印刷物製作に特化して発展してきたと言える。平易なものから複雑な組版レイアウトまでオールマイティに対応できるプラットフォームであることに異論はないだろう。

その反面、機能を熟知し、専門的な知識やスキルを修得したエキスパートでなければ、使いこなせないという実態がある。ハイエンドのPC環境も必要となる。
結果的に、コンテンツの共有やワンソースマルチユースが進展せず、電子書籍の製作に時間やコストをかけざるを得ない。

このような問題を解決するのが、次世代DTPや出版支援サービスと言える。
印刷物と電子書籍の同時製作が可能でコンテンツ一元化とワンソース・マルチユースを実現するWeb出版・印刷サービスは、次世代DTPの始まりと言える。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)