社長の想い、後継者の想い

掲載日:2016年4月18日

会員向けの月刊誌である『JAGAT info』の取材で、個人的だが何よりも勉強になることは印刷会社経営者の声を直接に聞く機会を持てることだ。

弊誌にはJAGAT会員の経営者の方々にお話をうかがっている経営者インタビューというコーナーがある。これまで80人ほどの社長にお会いしたが、会社の規模や業態、仕事の内容は違えども、皆さんがトップとして日々いかに真剣に、時に身を削られるような思いで会社や社員のことを思って経営に当たっているのかを実感させられることがある。

そんな中で特に刺激を受けるのは、30代40代の若手経営者のお話である。もちろん、印刷業のいい時代も知っており、激動の時代といえるデジタル化以降の縮小する印刷市場を乗り切ってきた50代後半以降の経営者はどなたのお話にも含蓄がある。また失われない意気込みを感じる。それでも、この厳しい時代にもかかわらず2代目、3代目、あるいは4代目として覚悟を持って印刷会社を継ぐ若手経営者のチャレンジには素直に感服することが多い。『JAGAT info』4月号で登場いただいたアサヒコミュニケーションズの新井貴之氏もそんな一人である。新井氏は社長就任以前から、自分が社長になったときにどのような会社にしたいのかという将来の会社のあり方と、そのためにどのような方針で経営をするのかを考えた。そしてそれに向けて着実にレールを敷いてきた取り組みには、企業継承のあり方の一つを教えられた。

また、逆に継承する側の社長の思いについても耳にすることがあり、その中で印象に残っている話がある。中小の印刷会社の後継者の多くは社長の子息であったり、親族であったりするケースがほとんどだ。しかも、外で修業したり、他業種から中途入社したりすることが多く、いきなり役職がつくケースも少なくない。特に他業種からきて、全く印刷のことが分からないという人が後継者だからと役職がつく。当然のことながら、そうなると他の社員は仕方ないと理解して、口には出さないとしても決しておもしろいと思うわけはないだろう。そんな中で、ある社長は後継者に対して、入社するときまでに自分のいた企業から必ず印刷の仕事を持ってこいと言明したという。そのことで少しでも会社のために貢献している姿を見せることができ、すぐに後継者も自社での居場所を確保できる。しかし、それは口にするのは簡単だが後継者にとっては簡単なことではない。そのために後継者は、出身会社の上司に誠心誠意、本音でぶつかって事情を話して仕事をもらえるよう交渉しないとならない。しかし、その社長は、それも後継者の試練であり、後継者教育の一つだと語ってくれた。これからも『JAGAT info』では印刷経営者の想いを伝えていきたいと思いますのでご期待ください。

このほか4月号では2015年の印刷動向を振り返りながら、印刷市場の好転をうかがわせる数字が散見するようになった状況をどのようにとらえるべきに言及しながら、2016年の印刷市場を展望する。

(JAGAT info編集担当 小野寺仁志)

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