新デジタル入稿の常識(USM編)

掲載日:2014年10月1日

きっちりしたアンシャープマスク(USM)をかけてやれば、差別化できる可能性はあるはずである。

かつてデジカメといえば、画素数が足りずに困っていたものである。しかし、最近のデジカメの画素数は膨大で、ハイアマチュア機のD800 でも3630 万画素(36.3 メガピクセル)というハイスペックになっている。

Adobe InDesign で拡大することはまれであり、ほとんどのケースは縮小することになっている。チラシやパンフの場合は縮小率が10% などということも珍しくなく、昔だったら全く画にならなかっただろう。

またAdobe Photoshop CCになって、再度テストしてみると拡大に関してのアルゴリズムが素晴らしく、一昔前とは比べ物にならない品質だ。ボケないし荒れない。アルゴリズムが良いことに加えて、画素数も多いから拡大に関しては全く問題ないが、縮小に関しては、かなり問題が多くなってくるのである。

本来画質というものは画素が多ければ良いというものではなく、適正な画素数に適正なUSMをかけるのが理想なのだ。昔のことばかり言っていても始まらないが、CEPS 時代は台紙に従って画像の倍率を決め、適正画素数になるようにスキャニングし、その画素に関して適正なUSMがかかっているのが理想の形であり、そのようになっていたのである。

USM はRGB にかけるという人もいるが、鼻薬的にRGB にもかけるのは、見た目の解像感も増すので好ましいと思う。しかし本格的にRGB にUSM をかけ、CMYK 変換すると、CMYK変換した後の墨版にエッジが強くついてしまうので、好ましい画質とは言い難いと思っている。

最近のデジカメはUSM をかけなくともそこそこ見られるのだろうが、紙の場合はUSMアリとナシでは品質的に大きな開きがある。「やっぱり紙にはUSMが良く似合う」ものである。デジカメ時代になって、この辺のUSM をどうするか?ということで、ColorGenius のプラグインでレシピを付け加えれば、RIP で変倍した後にCMYK 変換した後に適正なUSM をかけるというフローが考えられた。しかし、実際には印刷前に画像品質をチェックしたいということで、USM をかけたものをDDCPなどでチェックして、校了にするので、あまり使用されないようである。

理想的なワークフローが行われている訳でもなく、RGBフローとはいえRGB にUSM をかけて、それをCMYK 変換している状況である。レシピやジョブチケットで理想的なワークフローを実現できる設備を持っているところは、理想に近いものを実現していただきたい。そんな状況だからこそ、きっちりしたUSMをかけてやれば、差別化できる可能性はあるはずである。

倍率10% は極端だとしても、25% 程度の倍率はごく普通であり、デジカメのRGB 画像をCMYK に変換し、ちょっと強めのUSM をかけてやっても25%に縮小してしまっては、下図のようにエッジ効果(横軸が白黒のバーパターン、縦が256 階調)が激減してしまうのだ。これを防ぐにはUSM の幅を幅広の3pixel くらいにする(奇数画素分かけるというのは理にかなっている)のも一つの方法だ。もっと理にかなっているのは、普通のチラシやパンフ程度なら一回50% 程度に縮小してしまい、その段階で幅広のUSM をかけておくという方法が考えられる。

本当は撮影の際に仕上がりを考慮した画素数で撮影すべき(本来は撮影に応じて画素数を選択できるはず)なのだが、カメラマン側からするとそうもいかないので、USM の効き具合を考慮に入れると、50% 程度で幅広のUSM をかけるというフローが一般的だ。皆さんもご一考していただきたい。

(JAGAT 理事 郡司 秀明)