学び続けるエキスパート

掲載日:2016年9月2日
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今期のDTPエキスパートおよびクロスメディアエキスパートの更新試験が始まった。試験期間は9月1日より9月30日までの1ヶ月間で、受験者はCBT(Computer Based Testing)方式の試験に取り組む。

更新試験を課す意味

DTPエキスパート、クロスメディアエキスパートともに、資格制度発足当初より2年毎の更新試験を設定していた。業界において実務に即した資格である以上、1度取得すればよし、というものではなく常に現役のエキスパートであり続けることを求めたからである。つまり、ビジネス現場から乖離することなく、有資格者である以上最前線で戦い続けることができる人材を目指してきたのである。

DTPエキスパートで言えばまずは変化への対応力が重要な資質として求められた。DTP導入~普及期にあっては、DTPソフトそのもののバージョンアップや、ネットワークの進展など制作環境の進化に対応していくために、知識やスキルのアップデートは必須であった。DTPエキスパートカリキュラムも2年毎に改訂を続けている。
クロスメディアエキスパートにおいても、顧客にクロスメディア展開の提案をするベースとして、自らの“引き出し”をたくさん持っていることが求められ、常に知識や情報の拡充をしていかなければならない。

以上のことから、更新試験問題は、自身が合格した本試験、その後の更新試験以降に出題された新問題、つまり新しい知識や時代のトピックとして加わった新たな項目等を中心に構成される。CBT方式であるため、期間内であればフレキシブルに取り組むことが可能であるし、合否もその場で判定が可能である。

これらの意味において、2年毎の更新は強制的に学び続けるための機会や、きっかけを作るものであると言えるし、場合によっては新たなモチベーションとなるかもしれないと考えている。

高い更新率を維持し続ける

第1期DTPエキスパート試験の実施は1994年なので、更新試験は2年後の1996年からスタートした。今年で21年目に突入したということは、第1期合格者はすでに11回の更新試験を経ており、今期は第2期合格者が11回目の更新に取り組んでいる。

毎期の更新率は85%前後で、この高い更新率は更新試験スタート時から維持し続けている。クロスメディアエキスパートでも母数は少ないものの90%前後の更新率を維持している。
ちなみに第1期合格者104人のうち、前期11回目の更新をクリアして継続している方は17名である。また、同時期に5回目の更新をした第25期DTPエキスパートは、10年前に最初に取得した634人のうち34.2%の217人が現役有資格者である。

この高い更新率の要因の一つは、前回8月の試験報告にもあったように、エキスパート試験は6割近くが団体受験の形態をとっており、企業の人材育成の一環として取り組んでいることから、その企業に勤める限り資格の継続が求められるということも少なからず影響しているであろう。
ただし、基本は個人資格であり、長年更新し続けることは免許ではない以上本人のモチベーションがなければ不可能であろう。

この資格の価値はどこにあるのか、資格を持つ意味はあるのか?などの問合せを受けることがある。その際にはこの更新率の高さを示し、有資格者自身が価値と意味を認めているからであると説明をする場合もある。

学び続けるエキスパートを評価する

第1期DTPエキスパートの更新が5回目を迎えた頃、JAGAT内部でも彼らの今後の処遇をどうするかの議論があり、以後は永久資格として認証してはどうかと、認証委員会に諮ったこともあった。
しかし、永久資格にしてしまうことに反対の声が上がったのは、大手を中心とした団体受験に取り組む企業側であった。社内で資格制度として取り入れている以上、彼らを“塩漬け”にしてもらっては困る、更新料を払ってでも学び続ける環境を提供して欲しいし、そうした人材を評価するのだ。とのことであった。

以来、JAGATとして更新試験の意味を再認識するとともに新たな時代に向けた人材育成を目指した試験制度を維持すべく、カリキュラムの改訂や問題の内容の検討を行ってきている。
今後の評価も、受験者や教育担当者に委ねていきたい。

なお、DTP、クロスメディア両資格とも、更新できなかった(申請できなかった、不合格となった)方の救済措置として、失効後2年以内であれば再取得制度を設けているので、詳細は事務局まで問合せいただきたい。

(JAGAT CS部 橋本 和弥)