約物が連続した場合の処理

掲載日:2016年10月7日

日本語組版とつきあう その62

小林 敏(こばやし とし)

アキがある約物

括弧類、句読点、中点(中黒)は、字面の前後にアキ(空白)をもっている。
字面部分を二分と考えると、句読点は、その後ろに二分のアキ、括弧類は、その前または後ろに二分のアキ、中点は、前後に四分のアキをもっている(“句読点と括弧類の字幅”を参照)。

括弧類や句読点の連続

句読点や括弧類が連続する場合の例を図1に示す。それぞれの約物のすべてのアキをそのままにして配置した例を右側、そのアキを調整した例を左側に示す。
句読点や終わり括弧類の後ろに始め括弧類が連続すると、両方のアキが合わさって、空白が目立つので、詰めた方が望ましい。
また、始め括弧類と次に配置する文字との間、あるいは句読点や終わり括弧類と、その前の文字との間(括弧類の内側と句読点の前)は、空けるのは原則として好ましくない。空いていると余分な空白が目立つ。
中点の場合も、すべてのアキをそのままにして配置すると、括弧がつかない場合とでアキが異なって見える。
そこで、図1に示したようにアキを調整する必要がある。

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(図1)

句読点・括弧類が連続する例

句読点と括弧類が連続する例は、いくつかあるが、句読点と終わり括弧類をまとめ、仮に終わり約物類とし、これと始め括弧類の2種類で考えてみよう。
この場合、4つの組合せがあるが、問題となるのは、次の3つの組合せである。
(1)始め括弧類と始め括弧類が連続
(2)終わり約物類と終わり約物類が連続
(3)終わり約物類の後ろに始め括弧類が連続
(1)と(2)は、2つの約物間にある二分アキを修正し、ベタ組に変更すればよい。(3)の場合は、2つの約物のアキの二分+二分、つまり合計で全角アキを二分アキにすればよい。

中点と括弧類の連続

中黒と括弧類が連続する場合は、括弧類のアキは無視し、常に、中点が見た目に、字面の二分とその前後の四分のアキを確保するようにする。

約物が連続する場合の処理

以上のような約物が連続する場合の処理は、コンピュータ組版では、原則として自動処理であり、今日ではほぼ問題なく処理できるようになっている。
しかし、中点と括弧類が連続した場合、初期のコンピュータ組版では自動処理ができない例もあった。また、設定をしっかり行わないと処理できない場合もあるので注意が必要である。

括弧類の内側をベタ組

括弧類の内側(始め括弧類の直後と終わり括弧類の直前)をベタ組にするという原則は、和文の中に欧文を混ぜた場合も適用される。和文と欧文の字間を四分アキにするのが原則であるが、欧文を括弧でくくる場合、括弧の内側はベタ組にする。これも自動処理されるが、市販されている本でも、欧文を括弧でくくる場合、括弧の内側にアキをとっている例もあるので注意が必要である。

空白と括弧類などの連続

全角の空白と括弧類が連続する場合も問題となる。例えば、文末の疑問符や感嘆符の後ろは全角アキとするのが原則であるが、その直後に始め括弧類を配置する例がある。また、注記番号を括弧でくくり、その後ろを全角アキにする場合もある。この例では、括弧類の二分アキと全角アキが合計され、全角二分アキとなっている例も見掛ける。ここは二分つめて、全角アキとする。図2に例を示す。いずれも左側がアキを調整した例である。
全角の空白と括弧類の連続も、自動処理が可能なシステムが多いが、設定を忘れてしまう例もあり、注意が必要である。

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(図2)

パーレンをベタ組にした場合

図3に示したように括弧でくくった書名の後ろにパーレンで補足する例は多い。ここのアキをどう処理するかが問題となる。
パーレンをベタ組にしない場合は、図3の(1)にするのが原則である。ただし、(2)のようにパーレンの前をベタ組にする方式もある。つまり、ここは、できるだけ詰めたい箇所といえよう。
パーレンの前後を原則としてベタ組とする方式もある。この場合は、(3)には一般にしないで、(4)にしている。ここはパーレンの前後をベタ組にすることを優先する。

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(図3)

日本語組版とつきあう (小林敏 特別連載)