インドの印刷工場品質管理

掲載日:2014年11月5日

今回はインド商印や出版物の品質管理について報告する。

田中 崇 THOMSON PRESS

インドの印刷コンテストでは以下の品質比較項目がある(主としてして一般印刷分野。新聞、パッケージは別扱い)。

  1. 印刷物の企画関係の品質
    印刷方式の選定、用紙、インキの選定、製本加工の選定
  2. グラフィックデザインの品質
    ページデザイン、文字組版、写真、背景、配置、全ページのバランスなど
  3. 製版、刷版の品質
    色分解、調子
  4. 刷りの品質
    見当、濃度、色相、ドットゲイン、ツヤ、汚れ、すじ、しわ、折れ
  5. 製本の品質
    函、カバー、表紙、本文、折り、断裁、見返し
  6. 加工関係の品質
    箔押し、PP 貼り、リボン、花切
  7. その他(CMSなど)

製品分野は、色刷りの書籍、文字のみの書籍、紙のカレンダー、紙以外のカレンダー、中とじ、上製本など、30 ほどのカテゴリーに分類して審査する。

インド印刷工場の品質管理

インドでは、国際的な印刷技術情報は、GATF(米)、 PIRA(英)の会員になったり、drupa などの展示会参加やメーカーから学んでいる。各社、テクニカルマネージャーをおき、新技術、新機材の採用を検討している。それとは別に、カスタマーサービスの技術者が、日常的な品質管理をしている。

ここでは、でき上がった製品の品質検討会や、印刷途中の品質の抜き取り検査を行う。さらに、印刷機械の稼働分析、生産性のデータも集めて従業員の成績判定にも利用する。

これらの品質管理は、製品の品質データが中心で、事前の品質計画、進行中の品質保持、事故対応は主としてオペレーターまかせの傾向が強く、工程別、機械別の品質保持システムや手順の実行が不足している。

ISO 9000 などを取得しているところは多く、MIS、 JDF、CMS などの研究は進んでいるが、書類と現場作業との連携が不足している。そのため、日常的なQC 活動も製品のデータ分析になりがちで、日本的カイゼン運動になっていないことが多い。

私の所属する会社では、QC ミーティングをカイゼンミーティングに名前も変えて、改善提案者全員に参加賞を出すような制度を実施している。

工場の環境、設備、資材の品質

発展途上国では、一般に社会的インフラが未発達で、電力、水道などに問題があるところが多い。私の所属している会社では、オフ輪工場やコンピューター部門の工場は、自家発電設備を用意して停電に備えている。水は自家タンクで水の品質保持に対応している。

印刷関係の機械はインドにも多くのメーカーがあるが、先進的印刷会社は主にヨーロッパや日本の機械を使っている。紙やインキについても同様である。特に、紙はいろいろな国からいろいろな紙が輸入され、インド製は品質にバラツキがあるので、大手の工場では、平滑度、透明度、吸油度などを事前に計測しているところもある。

そのため、製品の品質要求に合わせて、ヨーロッパの紙や日本のインキを使うという、管理の難しいところもある。また、地域によっては昼夜、冬夏の気温差が大きく、乾期は数カ月雨が無いこともあるので空調の研究も大きな必要になる。

これらのことは、国家の産業、社会生活への対応政策によるもので、細かな、工具、化学薬品など、の製品の不足、また地域別供給体勢の困難さなどにも問題がある。今後の生産、品質向上の方向性やDTP、印刷、製本工程の改革のために、新しい機械は、デジタル管理技術が進んでいる。

しかし受け取る原稿が規格化されていないので、顧客との連携による改革が必要である。一方で、古い印刷機や上製本工程のように、手作業の工程も多く、これらの工程の生産、品質向上には、日本のような現場作業の標準化、改善わざの採用が必要である。

ヨーロッパは印刷の社会的地位が今でも高いが、発展途上国でも、印刷は欧米の機械を使うことから高級な仕事と見られている。また、業界でも、イメージアップのためのイベントやコンテストに力を入れている。さらに、外国からの受注も多いので、輸出産業として政府の支援もあり、そのためにも日本の中古の機械導入や指導を望んでいる会社も多い。

(『JAGAT info』2013年10月号)