印刷会社の働き方改革

掲載日:2017年9月25日

大手広告代理の女性社員が過労自死して違法な長時間労働が問題視されて以降、長時間労働の是正を中心に「働き方改革」が注目集める。政府も一億総活躍社会を目指す中で、「働き方改革」を推進している。

印刷業界では紙の市場が減少する状況で、デジタルメディアへの対応や印刷付帯サービスの提供、ソリューションビジネスへの取り組みなど、印刷業のサービス化が進む中で「人」のウェートが高まりつつある。少しでも優秀な人材を確保するうえでは、労働環境を見直して、社員が働きやすい職場づくりが欠かせないため「働き方改革」は他業界の話として済ませるわけにはいかない。

JAGATinfo9月号では恒例のJAGAT「2017年度新入社員意識調査」の報告を掲載しているが、「会社に入社する上で重視こと」として「仕事内容」「親・知人・先生のすすめ」「安定がある」についで「休日・福利厚生がある」が4番目に高い。6位には「通勤に便利」という回答があり、最重要ポイントではないが、より良い職場環境や働きやすさが会社選択の上で重視される傾向がうかがえる。「残業」については8割が受け入れを肯定しているが、前年よりは若干ポイントは落ちており、自由回答からのコメントを見ると、決して積極的に残業を肯定しているわけではないようだ。つまり、状況によっては社員の不満を高めることにつながりかねない。

ところが印刷業界は受注産業ということもあり、発注者の意向や納期の関係で、もともと長時間労働に陥りやすい業種と言える。もちろん、印刷会社でも部署によって残業が多くならざるを得ない部門と比較的少なくてすむ部門もある。いずれにしろ、一品ごとに違う製品を生産する印刷会社は、汎用品のように計画生産が難しいため、受注の繁忙によって残業をしないと業務に支障が出るケースも多いだろう。しかし、単純に一人当たりの労働時間を削減するとなれば、代わりの人の手当が必要で、ぎりぎりの人数で業務を行っている会社にとってはコスト増につながるわけで、働き方改革だ、残業削減だといっても簡単にできることではない。

だからといって、そのままにしていると会社の将来にとってはマイナスに働きかねない。働き方改革は経営改革という意識で人材活用や技術活用、さらには経営の見える化などに取り組み、業務改善によって効率的な経営を目指していくなかで、経営を進化させることにより実現していくことが必要なのではないだろうか。JAGAT infoでは経営情報のコーナーで6月号より印刷会社の働き方改革を取り上げている。2回目は10月号に掲載する。自社の働き方改革のヒントにしてほしい。

(JAGAT info編集)