1000 部カタログ再び

掲載日:2014年11月19日

JAGAT ではデジタル印刷の可能性を模索する実験を2009 年頃からトライしており、第1 弾が「ハナ* ビヨリ」(日販の発行しているフリーペーパー)の表紙コンテンツをバリアブル印刷で変更し、その面白さをアピールするのにデジタルサイネージとのコラボレーションで訴えた「& の力」である。

第2 弾がJP2009 で提案した「インタラクティブフォトアルバム」、そしてデジタルマーケティングNEXT2009 で提案した「1000部カタログ」が第3 弾となる。

オムニチャンネルと思考パターンが似ているので、今回は「1000 部カタログ再び」というテーマである。
「1000 部カタログ」とは撒き餌はデジタルサイネージに任せて、紙ではデジタル印刷本来の特徴を活用し、各セグメントに特化することで目的を絞ったカタログのことを指している。この背景には捨てられる印刷物をたくさん作るより、マス的な撒き餌はほかのモノに任せて(コストの安い印刷物でも可)、印刷物はターゲットである顧客により響くようにする(one to oneに近い)という考え方がある。

今までのオフセット印刷では、必要部数よりかなり多目に(何倍も)印刷してしまうケースがほとんどだった。したがって内容も最大公約数的になってしまっていた。もしカタログの発注単位を500〜1000 部単位にでき、欲しい人にだけより濃い内容のコンテンツを渡すことができれば、コストやエコ的なメリットは計り知れない。

「1000 部カタログ」を最初の段階で、セグメント分けして渡すのは大変だが、デジタルサイネージの力も借りてセグメント分けできていればたやすい。例えば旅行カタログで考えると、ハネムーン旅行、卒業旅行、シルバー旅行、家族旅行などに分類するのがセグメント化である。

英語なら本来CatalogueではなくBrochure だろうし、1000 部も実際には500 部ぐらいだろうが、語呂合わせで1000 部としている。1000 部カタログは、本来One to one マーケティングに即した「世界で一つあなただけのためのOnly one カタログ」があるべき姿なのだろうけれども、そういうわけにもいかない。中小印刷会社が何種類かパターンを作って置き、デジタルサイネージコンテンツで興味を示した顧客に対して少しトークをプラスすれば一番適したカタログが選択できるので、それを渡してより濃い商談に結びつけるというのは、ビッグデータまでは必要のない営業手法だ。

オムニチャンネルは、ビッグデータの分析結果を上手く使ってメディアを効率的にリンクさせて購買に結びつけるのだが、手法として古くは「クリック&モルタル」、最近では「O to O(Online to offline)」などがある。

例えばクーポンを添付して客を誘導するなどがある。しかし、お店への誘導には効果はあるが、実際の購買に必ずしもつながらなかった。しかし、ビッグデータの購買分析で得られた条件でDM などを打つと、購買まで結果を出す確率が大きく上がる。

ビッグデータとなると、中小の印刷会社がハンドリングするには荷が重いかもしれないが、ある地域に特化したマーケットに限ってO to O、1000 部カタログ(もう少し小さく100 部カタログでもよいかもしれない)のは、ビッグデータを持ち出さなくとも、市場を熟知していればいいわけだから、中小印刷会社には打ってつけではないだろうか?

(JAGAT 研究調査部 理事 郡司秀明)