未来志向で考えるデジタルワークフロー

掲載日:2018年3月15日

スマートファクトリーが話題となっている。製造機器がネットワークにつながり、ERPなど基幹系のシステムと双方向でデータ交換することで高度な自動化や「見える化」による全体最適を目指すものだ。しかし、現状をベースとした効率化の視点だけでは方向性を見誤る恐れがある。

スマートファクトリーの実現を考えたときに一番のボトルネックとなるのは、じつは製造工程ではなく顧客接点のところではないだろうか。受注に至るまでの工程もさることながら、受注してからも入稿からDTP制作、校正、校了までのプロセスがアナログ中心であり、さらに下版の予定が日常的にずれるなどスケジュールのコントロールが難しいからだ。このため工程管理に大きな負担がかかり、日々臨機応変な対応に迫われている。

自動化とは、裏返せばルールが標準化され、融通が利かないということでもある。これらを解決するのがAIだという議論もあるかもしれないが、例外処理や突発的な変更対応はシステムの開発コストを上げるとともに生産性や稼働率などパフォーマンスを下げる要因となる。最大限の効果を得るためには未来のあるべき姿から逆算して考えるというアプローチが必要であろう。

まず考えるべきは、お客さまのICT活用、情報資産のデジタル化の進展度である。顧客情報を管理するCRM(Customer Relationship Management)、商品情報など資産管理をするDAM(Digital AssetManagement)、顧客とのコミュニケーション(営業・商談、販促)を管理するSFA(Sales ForceAutomation)やMA(Marketing Automation)など着実に情報資産のデジタル化やICT活用の高度は進んでいくであろう。これらにより、誰に(顧客)、何を(商品情報)、どのタイミングでどう伝えるか(営業・販促)、といった情報がすべてデジタルデータで管理されることになる。

このときに印刷業界に求められるのが、デジタルマーケティングに負けない紙、あるいはデジタルマーケティングと紙との相乗効果である。そこでは、お客さまに届けたい情報を適切なタイミングで届けるために圧倒的なスピード感が求められるであろう。いままでのように紙の校正紙を営業担当が運んで色の確認をするようなやり取りはあり得ない。アナログの色校正をせずとも品質保証ができるようなワークフローをどのように構築するかというのが未来志向型のアプローチといえる。

そして、お客さまのシステムと人手を介すことなくダイレクトに自社の印刷工場がつながることが究極の理想像といえるだろう。

3月22日の印刷総合研究会では、「顧客とつながる」をテーマに、APIやプラットフォームをキーワードとして、今後求められるデジタルワークフローを考える。

(JAGAT 研究調査部 花房 賢)

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2018年3月22日(木) 14:00-16:15

今後求められるであろう顧客とダイレクトにつながるデジタルワークフローを考える。