2015年基準の「延長産業連関表」で印刷産業の調達先と販売先の変化を見る

掲載日:2023年10月17日

印刷物の生産にどれだけのモノ、サービスが投入されているか。印刷物はどの産業にどのくらい購入されているか。2015年から2020年の推移を見てみよう。(数字で読み解く印刷産業2023その9)

取引額は年々縮小、プラスチック製品のみ増加傾向

「産業連関表」は国内で1年間に行われたすべての産業の取引を一つの表にまとめたもので、各産業間のモノやサービスの取引状況を金額で把握できます。

日本全国を対象とした「産業連関表(基本表)」は、10府省庁が共同で5年ごとに作成していて、「平成27年(2015年)産業連関表」(2019年6月公表)が最新のものです。

経済産業省は、この「産業連関表(基本表)」をベンチマークとして、「延長産業連関表」を毎年作成していて、2023年9月29日に「2020年延長産業連関表」が公表されました。2015年基準の延長表としては今回が最後となり、2024年には2020年基準の基本表として、「令和2年(2020年)産業連関表」が公表される予定です。

『印刷白書2023』では、2020年延長表を中心に、印刷産業の産業構造を見ています。

延長産業連関表(96部門表)の「013印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているか、行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります

そこで、「013印刷・製版・製本」の行列を金額の大きい順に並び替えて、取引額の大きい産業を「原材料等の調達先上位10産業」「販売先上位10産業」としてグラフにしました。2020年の上位10産業に関して、2015年からの推移を見てみましょう。

「原材料等の調達先上位10産業」を実質表で見ると、材料費、商業(卸売マージン額など)、同業者間取引が上位を占め、上位10産業で取引額全体の9割を占めています。

印刷市場の縮小を反映して2015年から2020年にかけての取引額はトータルで19.8%減となりました。特に「物品賃貸サービス」(産業用機械器具賃貸業、貸自動車業、電子計算機・同関連機器賃貸業、事務用機械器具賃貸業など)が2015年比40.3%減、「印刷・製版・製本」が同37.4%減と大幅に減少しました。一方、被印刷物の多様化を反映して、「パルプ・紙・板紙・加工紙」の同29.6%減に対して、「プラスチック製品」(プラスチックフィルム・シート、プラスチック製容器など)は同23.0%増で、10産業で唯一プラスとなりました。

得意先は 「金融・保険」「映像・音声・文字情報制作」「商業」 まで同規模

「販売先上位10産業」から印刷産業の得意先を見ると、「映像・音声・文字情報制作」(出版、新聞など)が長年首位を占めていましたが、2017年以降は2~3位に後退しました。代わって「金融・保険」と「商業」が1位もしくは2位を占めるようになり、構成比は3位まで同じ規模になっています。

2015年から2020年までの間に取引額はトータルで22.2%減となり、「公務」以外は2桁台の減少で、10産業すべてで減少しました。特に減少幅が大きいのは、「印刷・製版・製本」2015年比37.4%減、次いで「広告」同32.8%減、「映像・音声・文字情報制作」同31.1%減となりました。

10月末発刊予定の『印刷白書2023』では、産業連関表を使って、印刷産業の取引の流れを細かく見ています。限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)