2/6 伸びる企業の経営管理のリアル-ある印刷会社の場合

掲載日:2024年1月26日

2/6のpageカンファレンスでは、持続成長する印刷会社の経営者を招いて収益性と成長性の両立をテーマに、経営指標の見方の面から議論する。利益を確保するための経営管理と、創造性を発揮して持続成長する経営管理は何が違うのかーーー。


■持続的な成長とは

企業が持続的に成長するとはどういうことか。景気まかせなら、例えば現在のインフレ下では基本的に売上高は横ばいか微増が基本線だろう。ただし、顧客も競合も進化するし、業界は構造不況だし、日本は10年に一度は大不況か天災がある。自社が進化しなければシェアを奪われ、微増を積み重ねても不況・天災で10年に一度は数年分の蓄積を失う。企業の持続的な成長とは、これら不可避な売上高の喪失をも補う売上高の創造が常に行われている経営状態であろう。

■価値創造のための経営指標の見方

創造とは-より安く買ってより高く売る-ことではなく、まだ見ぬ価値を社会に送り出すことで企業価値を高めること、面倒くさく言えば、自己資本が増える利回り率の改善だ。だから、たとえば黒字でも従来の利回りを下回る新規事業だったら企業価値は下がる。赤字でも成長性が高ければ将来の企業価値を高める。利益率の高低および期待収益率との整合性に成長性も加味した多面的な判断が企業の持続性を高める。何らか一面的な採算性評価に頼るような企業経営は、真面目にやっていても企業価値が足踏みしたり、厳密にやっていても無意識のうちになぜか下がることになる。

■伸びる印刷会社の経営指標の運用

収益性と創造性の両立こそが経営の究極といえる。投資を減らせば収益性は高まるが長期的な成長性は落ちる。投資を増やせば成長性は高まるが短期的な収益性は落ちる。では、印刷会社はどのような経営管理でこれを均衡させればよいか。今回は民事再生を経て持続的な成長を続ける河内克之氏(真生印刷/デジタル総合印刷/サンケイ総合印刷)の経営手法のリアルを例に議論する。ある程度のドンブリ勘定で良しとし、MISやSFAを使わず、予算や原価管理をあえて重視しない。しかし管理会計ではドンブリ勘定のドンブリが小さい、財務会計の厳密な運用などの様々な特徴が興味深く実践的だ。

■持続成長がもたらす好循環

筆者は実は、民事再生のかなり前から同社を長期観察してきた。民事再生後、しばらくすると、同社からは次々に新製品やスモールビジネスが生まれ、地域活性化の取組みからは派生的な引き合いが続々と生まれ、大型の設備投資もするようになった。従業員は10年間で200人から300人に増え、増益も長期に続き、今ではM&Aをする側に回るまでになった。M&Aをした会社に同社が入ると3ヵ月で社風が変わるとの声も聞く。同社の従業員も「今ではキラキラした目をした新卒が入ってくるようになった」と言う。河内氏は「市場縮小は当社にはチャンス」とまで言うので社員が印刷に希望を持つようになった。


■経営管理システムの要諦

さて、収益性と成長性を両立させる管理と自由な発想の線引きはどこに置くのか。社員を増やしながら収益性を高める経営はいかに実現するのか。「今はもう各部が勝手に新製品を作り始めるようになってしまってよくわからない」と苦笑するほどの創造性はいかに生まれたのか。中小企業はすべてを精緻に管理するほどの経営資源がない。何を重視して何を捨てるべきなのか。河内氏が説くのは「とにかく不毛な議論を避ける」シンプルな経営管理システムだ。恣意性の入り込むデータは使わず、営業のやる気を削ぐITは導入しない。

■経営指標の見方で業績は変わる

この経営管理システムは、印刷営業としての原体験、経理としての銀行折衝、複数企業の再建実務、印刷30社を擁するタイヘイグループからの学びなど、異なる視点の経験から行き着いた。様々な人が様々な経営管理システムを勧めるが、踊らされずに、印刷の業種特性と自社の事業特性に適したシンプルな経営管理を構築することだ。他社との競争には差別化したサービスが必要なように、他社を上回る業績を得るには、正しい経営指標の見方を踏まえた独自の経営管理手法が有用だ。前述のように、そもそも採算性評価を誤ると真面目に経営しても伸びない。来たる2月6日の公開カンファレンス「会社を伸ばす経営指標の見方」では同社のリアルを例に考える。

藤井建人(JAGAT 研究調査部)


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