2024年3月期決算では、上場印刷企業18社のうち11社が増収、13社が増益を達成した。持続可能な社会の実現と企業価値向上に向けて、さらなる事業領域の拡大に取り組んでいる。(数字で読み解く印刷産業2024その3)
上場企業2024年3月期は3年連続最高益、印刷企業は13社が増益達成
上場企業の2024年3月期決算は、3年連続で最高益を更新しました。
日本経済新聞が東証プライム市場に上場する1071社を集計した結果、純利益は前期比20%増の46兆8285億円となり、全体の65%の企業で損益が改善しました。製造業は22%増、非製造業は18%増となりました。
また、2024年3月期決算における上場印刷企業18社(東証プライム市場上場は5社)では、11社が増収、13社が増益を達成しています。
上場印刷企業の2023年度業績も堅調
JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色などに「印刷」とある企業を、上場印刷企業としています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で前年6月期決算から当年5月期決算までを当年度としています。
上場印刷企業の社数は、親会社による完全子会社化による上場廃止がある一方、新規上場もあって、33~34社で推移してきました。そして、現在準備を進めている『印刷白書2024』では、2022年3月3日上場のイメージ・マジックと、2023年9月22日上場の笹徳印刷の2社を加えた35社で分析する予定です。
上場印刷企業の2023年度業績を見ると、マツモト(4月期決算、6月中旬決算短信発表予定)とTAKARA&COMPANY(5月期決算、7月上旬決算短信発表予定)を除く33社の売上高合計は4兆円(前期比2.4%増)で、増収21社、増益20社、黒字転換1社と堅調です。
事業領域の拡大を反映して社名から「印刷」が消える
凸版印刷が2023年10月1日付けで持株会社に移行し、社名を「TOPPANホールディングス」に変更したニュースは、印刷業界のデジタルシフトの本格化を示すものとして受け止められました。しかし、社名から「印刷」が消えた印刷会社は、凸版印刷だけではありません。印刷事業からスタートして、事業領域の拡大を反映して、社名変更した印刷会社は少なくありません。
また、持株会社化で社名が変更になった上場企業は、2012年のウイルコホールディングス(旧:ウイルコ)、2015年の日本創発グループ(旧:東京リスマチック)、2019年のTAKARA & COMPANY(旧:宝印刷)、2021年の広済堂ホールディングス(旧:廣済堂)、2022年10月のKYORITSU(旧:共立印刷)、2023年 4月の竹田iPホールディングス(旧:竹田印刷)と、TOPPANホールディングスを含めて7社になりました。
それぞれの子会社として、ウイル・コーポレーション、東京リスマチック、宝印刷、広済堂ネクスト、共立印刷、竹田印刷、TOPPANが情報ソリューション事業を継続しています。
上場印刷企業35社のうち連結決算は27社ですが、そのグループ企業には印刷産業とは全く関連のない事業もあって、連結業績から印刷事業の実態を見ることは難しい。そこで、『印刷白書』では、個別業績に印刷事業が含まれない持株会社7社とアサガミを除外し、非連結の8社を含む27社の個別業績の企業力比較なども行います。
『印刷白書2024』は10月下旬発行を予定しています。上場印刷企業35社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較します。
限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。
(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)