定点撮影と呼ばれるジャンルがある。同じ場所から同じアングルで定期的に写真撮影を重ねていくもので、「定点観測」の一種だといえる。これが何十年分も蓄積されていくと、その時々の世相や流行を垣間見ることができるようになり、圧巻のアーカイブとなる。執筆子の地元である東京都小平市でも市内各所の定点撮影が約40年間行われており、写真をじっくりと読み解いていくとさまざまな発見が得られる(リンク先はこちら)。
その定点観測で、生活に最も身近な活用分野は恐らく気象関連であろう。これがビジネスの世界だと、マーケティングの分野などにその手法を応用することができる。「どのような天候や気温・湿度のときに、どのような商品の売れ行きがよいか」を探るのも、その一つである。あるいは工場の改善活動の文脈では、主要なポイントにカメラを設置することでヒューマンエラーのリスクを可視化し、改善の成果を共有することが可能となる(ちょうど今月号の特別企画で印刷工場のヒューマンエラー対策について取り上げているので、ご一読いただきたい)。
さて、JAGATが例年実施している「印刷産業経営力調査」も、社会状況などに応じて設問項目を順次アップデートしているものの、印刷産業を定点観測する取り組みの一つである。専門的な各種指標を長年にわたって算出・記録・分析していくことで、それぞれの時点における特徴やトレンドを浮かび上がらせることができるはずだ。
今月号より、印刷会社の経営状況に関する調査結果を、経営・戦略・設備・需要などの各側面から誌面にて順次報告していく。ぜひ、お手に取って熟読していただきたい。
『JAGAT info』2025年7月号のご案内
◯特集
「2024年度印刷産業経営力調査」経営分析
新たな時代の印刷会社経営への模索が続く
製造・請負型からサービス・研究開発型へ
藤井建人(JAGAT研究・教育部シニアフェロー)
毎年恒例の会員企業を対象にした昨年度の「印刷産業経営力調査」の結果がまとまった。ご回答いただいた皆様には改めて御礼を申し上げたい。
有効回答企業100社の平均従業員数は135人、年商は27億円である。平均従業員数は4年連続で増加するも、平均年商は4年ぶりに減少して大型化が一段落した。売上高は3年連続の増加、営業利益は3年連続の黒字となっている。ただし、売上高の伸びは失速し、生産性指標の改善基調がピークアウト、諸資材とエネルギー高騰の影響が甚大で営業利益は薄氷の黒字確保となった。
業態別では、商業印刷と出版印刷という伝統的な主力セクターが、残念ながら赤字化したことも特筆される。詳細は、本誌をご覧いただきたい。
◯特別企画
page2025開催報告
印刷工場のリスクマネジメントにみるヒューマンエラー対策
上妻祐司氏(OD人事経営コンサルティング代表)
近年、印刷業界においても「リスクマネジメント」の重要性が高まっている。とりわけ印刷工場でのヒューマンエラー対策は、品質管理や生産効率の向上に直結する重要な課題であるといえるであろう。
そこで特別企画では、page2025のオンラインセミナー【S6】「印刷工場のリスクマネジメントにみるヒューマンエラー対策」の講演要旨を収録する。「人はミスを犯すもの」という前提に立ち、印刷工場特有のリスクに焦点を当てて対策などを解説していく。
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(『JAGAT info』編集部)