この春、10年ぶりに新入社員研修の講師を担当することになった。まずは数ある業界のなかから印刷業界を志し、当社を選んでくれた新入社員の皆さんに、心から感謝の気持ちを伝えたいと思う。
研修準備のためにカリキュラムを確認していると、あらためて印刷物の製造工程の長さと、専門用語の多さに気づかされる。DTP制作、製版・刷版、印刷、そして製本加工――それぞれの工程には、美しく読みやすく高品質な印刷物をつくるためのノウハウが積み重ねられている。
また、網点%、スクリーン線数、ベタ濃度、連量、坪量、流れ目、折丁、面付、台割といった言葉は、日常生活ではまず耳にすることのない専門用語だ。新入社員にとっては、まるで異国の言語のように感じられるかもしれない。
研修では、16頁折りの折丁づくりを実際に体験してもらう。縦組みと横組みの違いを確認しながら、自分の手で紙を折り、回し、また折る。その過程を通じて、16ページがどのような順序で配置されているのかを体感的に理解してほしい。大きな紙に印刷されたものを折り、裁断し、最終的な冊子へと仕上げていく――この流れが印刷物の製造工程の基本となる。
印刷の仕組みそのものも、不思議に満ちている。印刷インキの色は基本的に4色で構成されており、紙面上ではそれぞれのインキ濃度は一定である。それにもかかわらず、私たちはフルカラーの写真やイラストを自然な色合いで見ることができる。これは網点の大小と4色インキの重なりによって色を再現するという理屈によるものだが、仕組みを理解してもなお、その表現力には驚かされる。
一方で、情報伝達手段としての印刷物の存在感は、近年デジタルメディアに押され気味である。デジタルメディアは、印刷物に比べて低コストで即時に大量配信でき、双方向性やレスポンスの計測といった点でも優れている。しかし、手軽に発信できるがゆえに情報量は爆発的に増え、受け手が消費しきれず、記憶に残りにくいという課題も顕在化してきている。
だからこそ、「印刷物でなければ伝えられないこと」があり、「印刷物だからこそ伝えられること」がある。この業界にこれから足を踏み入れる新入社員たちには、その価値と可能性をしっかりと感じ取ってほしいと考えている。
今回の研修が、彼らにとって印刷という仕事の奥深さと面白さを知る最初の一歩となることを願っている。
(研究・教育部 花房 賢)
新入・若手社員向けオンデマンド講座
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