印刷会社における地域活性ビジネスの現状(1)

掲載日:2015年1月20日

 印刷業における地域活性ビジネスへの取り組み状況や仕事の増減、収入の内訳などの実態についてJAGAT『印刷会社と地域活性vol.2』レポートの中から内容を一部紹介する。~JAGAT「印刷会社と地域活性vol.2」レポートより(1)

JAGATでは、地域活性に取り組む印刷会社の認識や取り組み状況の実態を探ろうと、2012年末に会員企業に対して「印刷会社の地域活性化」に関する初のアンケート調査を実施、2014年夏には、設問を見直した第2回調査を実施した。2014年末には、アンケート調査の結果をはじめ、地域活性に取り組む印刷会社を始めとしたモノ作り会社の経営者座談会、実際の取り組み事例、周辺業界のトレンドや地域活性ビジネスのキーワードを盛り込んだ、『印刷会社と地域活性vol.2』を発刊した。今回はアンケート結果から見えてきた印刷会社における地域活性ビジネスの実状を紹介する。


65%の印刷会社が地域活性に取り組む
第2回調査の結果を見ると、回答企業の65%は何らかの地域活性ビジネスに取り組んでいることが分かった。現時点で取り組んでいないと回答した企業に今後取り組む必要性の有無を問うと、約7割の会社が必要性を感じると回答するなど、前回に引き続き、地域活性ビジネスへの関心は高い。

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取り組み始めた時期について、「1~3年前」は16.7%、「4~6年前」は26.9%、「7~15年前」は21.8%、「それ以上前から」が28.2%。2012年末に実施した前回調査と比較すると、中長期に渡って取り組む会社の割合が増えており、印刷業界において地域活性に取り組む企業の状況は、導入期を経て次の段階へ移行したと考えられる。
印刷業には、地域経済と密接に結び付いている、大都市をはじめ産業集積地に仕事が集まるなど、いくつかの特性がある。そのため、長期に渡る景気低迷が続いた地方では、地域活性ビジネスへの取り組む時期も早くなっている。また、地方には地域の印刷を始めとした情報加工や発信を一手に担い、地域の発展を後押ししながら共に成長してきた印刷会社が多い。そのため、地域貢献の精神が自然と根付き、地域祭事・イベントへ参加するなど、様々な活動を続けている事例も少なくない。BtoBの仕事が多い大都市圏は、世の中のニーズ、地域活性化の必要性の高まりに合わせて取り組む会社が増えてきた。


増え続ける地域活性ビジネス
前年と比較した地域活性ビジネスの割合を聞くと、「かなり増えた」会社が14.1%(前回13.1%)、「少し増えた」会社が46.2%(同42.9%)と、「増えた」と実感する会社が全体の60.3%になった。「減った」という回答が1割にも満たないことから、前回に引き続き、印刷会社における地域活性ビジネスは確実に増えているということができる。

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地域活性ビジネスの仕事、取り組み企業数は順調に増え続けているが、自社の総売上に対する割合が大きいとはいえない。現在の地域活性ビジネスの売上比率結果を見ると、「0~4%」が全体の73.2%(前年84.0%)と最多回答になっている。
しかし、「5~9%」は16.9%(同10.1%)、「10%以上」も7.0%(同5.8%)と前回調査から増加中には、総売り上げの「30%以上」と回答する企業も複数あるなど、地域活性ビジネスを収益の柱として育成する企業も増えている。


現在最も多い取り組みは前回に続き「工場、会社見学の受け入れ」
現在の取り組み状況で最も多い回答は、前回調査同様、「工場、会社見学の受け入れ」の43.0%(前回55.3%)だった。地域社会と密な関係を持ち、貢献し続ける印刷会社の姿勢が見受けられる。次点は「地域情報のポータルサイト」の36.7%(同18.8%)、「フリーペーパー(無料)」の30.4%(同28.2%)。
前回は、「商店街活性化」や「自社オリジナル商品・キャラクター開発」を挙げる印刷会社が全体の3割以上、3社に1社が新しい印刷需要の創造を試みていた。しかし、今回調査では地域の企業や団体との仕事を通して蓄積された地域情報を加工発信し、地域内外のユーザーに届けるという、印刷会社ならではの強みを生かしたビジネスに再注目する企業が目立つ。

次回は、「地域活性ビジネス」への取り組み体制」や「地域活性ビジネスの割合、収入内訳」、「今後取り組みたい地域活性ビジネス」について見ていく。

関連情報

 地方創生/地域活性ビジネス

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【PM1】印刷会社と地域活性ビジネス(1)~観光ビジネス、イベント

新しい観光の形として「着地型観光」が注目されている。現地の人しか知らないグルメ・イベント情報は貴重な観光資源である。「観光」をキーワードに地域主導の観光情報の実施とコンテンツの利活用について考察する。

【PM2】印刷会社と地域活性ビジネス(2)~地域情報、地域ブランディング

地域情報の収集、加工発信を通して地域活性に貢献する印刷会社が増えている。「印刷会社の地域活性化」に関するアンケートでも取り組み企業の多かった「フリーペーパー」を発行、情報を扱う中で再発見した地域の魅力を「紙+α」で地域内外に浸透させ、地域ブランディングまでを実行する3事例から、地域情報をブランディングに生かすコツを探る。

関連書籍

『印刷会社と地域活性vol.2 ~事例とデータから見る地域活性ビジネスのヒント』