page2026カンファレンス「危機を乗り越える組織変革」では、「自己一致」が重要なキーワードとして語られた。
市場環境の変化が激しく、従来のビジネスモデルが通用しなくなった今、企業には新たな戦略が求められている。しかし、どれほど優れた戦略を描いても、それを実行できる組織でなければ成果には結び付かない。変化の時代に必要なのは、戦略を理解し、自ら考え行動できる「自走社員」を育む組織づくりである。
自己一致とは、心理学者カール・ロジャーズが提唱した概念で、自分の内面で感じていることと、外に表す言動が一致している状態を指す。組織においては、立場や空気にとらわれず、感じた違和感や意見を率直に共有できる状態ともいえる。
セッションでは、変革の途上にありながらも多くの示唆を与えてくれる実践例として、文方社の取り組みが紹介された。同社が重視しているのが、対話と学びである。
従来は、経営陣が方針を決めて社員へ伝える一方通行のコミュニケーションが中心であり、社員の声を聞く機会はほとんどなかった。社員は長年の経験から、「何を言っても変わらない」と感じていた。
対話にあたっては、相手を尊重し、反対意見があってもまず受け止める。そのうえで譲れない部分だけを守り、あとは保留する。この姿勢を貫きながら、社内に数多くの対話の場を設けていった。
経営陣と社員、部署を超えた社員同士など対話を繰り返すことで、「経営者が考え、社員は従う」という関係から、「ともに会社の未来を考える仲間」へと関係性が変わっていった。また、対話によって視点が広がり、学習が促進されることで、自分の担当業務だけでなく、部署や会社全体のあり方を自ら考え、行動する社員が生まれ始めた。
共に登壇したキヅキウムの坂口氏は、「自己一致した状態にある社員と経営陣の間には信頼関係が生まれ、その結果として主体的で建設的な行動が促される」と指摘した。
JAGATでは、社員一人ひとりが自ら考え、学び、行動できる組織づくりについて、今後も会員企業と共に学び合う場を提供していきたいと考えている。
その試みの一つとして、5月に移転した文方社の新社屋で、page2026登壇者とカンファレンス視聴者による対話会を開催した。参加者からは「他社の課題や取り組みを共有することで多くの気づきや刺激を得られた」といった声が寄せられた。今後はこうした対話の場を継続的なコミュニティ活動へ発展させていきたい。
(研究・教育部 花房 賢)


