映像を軸にした印刷会社のクロスメディア展開

掲載日:2015年1月19日

クロスメディアビジネスを展開している印刷会社、(株)相互の取り組みを紹介。

コミュニケーション支援を担う企業としての印刷会社は、印刷物を作っているだけではその役割を果たすことが難しくなっている。のみならず、印刷物そのものが減少傾向にある中で、新たなビジネス展開に踏み出さないと印刷会社はその存続を危うくしかねない。

このような状況の中でクロスメディア事業部を設立して、着実に結果を残しつつあるのが江東区にある印刷会社の(株)相互である。同社が2011年にクロスメディア事業部を立ち上げた経緯や実績について、クロスメディア事業部部長の真辺庄帝氏に話を伺った。

映像を中心にしたプロモーション企画

クロスメディア事業を立ち上げた背景について、真辺部長は「印刷市場を取り巻く環境は時代の流れによる変化と、それに伴って営業スタイルが変わってきたことがある。例えばカタログを作る目的はプロモーションであり、売り上げを上げたいためである。しかし、時代の流れで店頭プロモーションのスタイルも変わってきているし、ユーザーも変わってきている。かつてはカタログを持ち帰って家で比較検討したが、今はネットで済んでしまうので、カタログを持ち帰ることはせずに、残ってしまう。そこで、カタログの内容を店頭ディスプレイで電子POP として表示する。カタログを持って帰ってもらうための注意喚起、つまりアイキャッチにする。そういう提案が当社のクロスメディア事業のきっかけになっている」という。

セールスプロモーションを行う上で、紙媒体のアートディレクターが映像制作を行う流れは必然だった。きっかけは、ある通信キャリアがクライアントの仕事だ。カタログを撮影した写真素材をAdobe After Effects で加工して動画にし、それを大手家電販店の店頭で流すと反響があり、店側から街頭ビジョンの使用が提案され、新商品をCG で動画にして流したのである。これでカタログを起点にして映像までのクロスメディア展開の実例を作ることができた。

つまり、カタログを作るときにはたくさんの写真素材がある。それをマルチユースすれば、動画や映像があまりコストを掛けずに制作することができる。カタログを作るところは潜在的に動画や映像制作を行うクライアントになる。したがって、クライアントにきちんと映像のメリットを訴求できれば仕事を受注できるということで、動画や映像の仕事が取れるようになった。

またあるメーカーでは、商品説明を映像で行って、その効果をビフォー・アフターで見せる営業ツールを作った。紙でもできるが、映像ではよりはっきりと効果を見せることができる。これを販売店向け営業ツールとして使用していたが効果が分かりやすいために、店頭でも消費者向けに同じ映像を流した。B to B の営業ツールがB to C の販促ツールとしても使用できた例である。

同社が映像制作を受注する上でプロモーション企画からできるところがセールスポイントになっていると真辺部長は語る。映像制作では、ビデオ制作会社などはエンターテインメント系に強く、販促のことを分かっているところは少ない。紙媒体で培ってきたプロモーションに関するノウハウで、「興味喚起を行い購入まで至らせるか」についてはビデオ制作会社にも負けることはない。また、印刷会社は静止画のクオリティについても紙媒体で求められるものは高く、そのクオリティで映像を制作するとテレビCF レベルのものを作れるという。それにプラスで印刷物も作れるということは強みになっている。

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今、現実として紙媒体は部数が絞られ、価格競争もあり、新規開拓はなかなか難しい状況にある。しかし、現状は映像に対するニーズは確実にあり、まず映像を作って、それと同じデザインの方向性で紙媒体も作りたいというクライアントも多いという。したがって映像も紙も作れるなら、両方作ってほしいというクライアントも少なくなく、映像を切り口に印刷も広げていくという営業ができている。

これまでの印刷業はIT・デジタル系の仕事は不得意といえた。しかし、これからビジネスをしていく上で、それらをビジネスに活用していかないとクライアントニーズには応えられない。

(『JAGAT info』2013年12月号より一部抜粋)

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