DTPエキスパートとは?~第51期DTPエキスパート認証試験 申請受付締切迫る(2/22)

掲載日:2019年2月19日
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エキスパート(Expert)を日本語訳すれば、「専門家、達人」などと表現されますが、当制度はDTPの専門家、達人を作るための制度ではありません。DTPが達人芸を要求する現状は過渡的な状況で、本当に必要なエキスパートとは、印刷物をつくる役割分野でのエキスパートのはずです。

上記はJAGATがDTPエキスパート認証試験を開始した当初、その案内パンフレット「受験の手引き」の冒頭にあった記述である。
続けて以下のように説明している。

デザイナーはあくまでデザイナー、エディターはあくまでエディター、プリンティングディレクターはあくまでプリンティングディレクターなのです。それらの人がDTPの知識を広く、正しく理解したうえでお互いにうまくパートナーとなることが目的です。

当時、DTPという新たな制作環境の出現によって、従来の伝統的な製版・印刷業以外の多くのバラバラの出自の人が、これまでの領域を超えて印刷物製作に直接かかわるようになって来た。そのため、DTPの正しい知識を持って、それぞれが持っている大きく違う文化的風土のギャップを埋め、よい印刷物の実現に向けて、制作環境やコミュニケーション作りを行うテクニカル・スーパーバイザーの養成が急務となり、その役割を担う者としてDTPエキスパートを想定し、カリキュラムを編成した。

それから四半世紀が経過し、DTPを取り巻く環境も大きく進化した。さらには社会が求める印刷の役割も変化して来た。
DTPが当たり前になり、当時のようなトラブルもなくなってきた。機械やソフトの進歩は様々な自動化やスキルレス化をもたらし、デジタル・ネットワーク社会の発展によって文化風土のギャップも小さくなってきたと言えるだろう。
そしてその頃は、DTPエキスパートの最終成果物は紙の印刷物であると言えたものが、そうはいかなくなってきたのだ。「正しい知識」がなくとも何とかなる時代に、DTPエキスパートの役割はもう終わったのだろうか?

いや、我々はグラフィックアーツ業界のプロであることを再び自覚しなければならない。
先日のpage2019での資格セミナーや対策講座でお馴染みの石塚講師がいつも言うのは「携帯電話のディスプレイに表示される文字組がばらばらになっているのは致し方がないが、それをキャプチャーしたままパンフレットとして印刷にするのは、プロとして許してはいけない」ということである。
プロはこうした評価がきちんとできるということであり、そうした人がいなければこの業界の将来は暗く、大げさに言えば文化の継承もままならないのではなかろうか。


1993年の初版発行以来、改訂を重ねてきた「DTPエキスパートカリキュラム」(第13版/2018年11月)には、印刷ビジネスの動向と展望をふまえ、今の時代にプロとして必要な正しい知識が集積されている。印刷物制作に留まらない周辺ビジネスとの連携をも視野に入れている。DTPエキスパートには新たに担うべき役割があるのである。

25年前の「受験の手引き」の記述の最後は「方向を見定める知識を持とう!」として以下のように結んでいる。

理想のDTPのモデルを追い求めるのではなく、まずは現実世界の問題解決に取り組まなければなりません。しかし現実は流動的であり、あまり目の前の事象に囚われると方向を見失ってしまいます。日々の努力が蓄積されて着実に前進できるような、中期的ロードマップを持たなければなりません。つまり時代に左右されない戦略で、時代に切り込む戦略を建てるのです。そのために、もともと印刷物を何のために作ろうとしていたのかを探り、よい印刷物とはどういうものかを理解し、それを最も効率よく作り出す制作環境を計画できる能力が必要です。

「もともと印刷物を何のために作ろうとしていたのかを探り」、「よい印刷物というものはどういうものかを理解し」とは今の時代においてもなかなか示唆に富んだ言葉ではないであろうか。

(CS部資格制度事務局 橋本和弥)

【関連情報】
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