見える化のポイントは先行管理

掲載日:2015年3月9日

“ 見える化” を原価管理という側面でみると、社内の作業実績を正確に記録して受注一品別の収支を明確にして、管理しようとするものである。事後の管理という意味合いが強い。“ 結果” に対して原因を分析し、改善策を検討して次回以降に生かすというのが基本サイクルとなる。

その仕事が儲かっているのか損しているのか、どんぶり勘定で全く見えない状態にあるものを見えるようにすることの意義は大きい。しかしながら、終わってしまったことに対して打てる手は多くない。失敗したことを責められるばかりでは気持ちも後ろ向きになってしまう。

本来は目標に対して計画を立て行動することが“ 主” であり、結果がどうだったかを“ 見える化” することは“ 従” となる。ここで大事なのは目標設定であり、どのような目標を設定するかだけでなく、どのようにして目標を設定するか、という目標設定のプロセスも非常に重要となる。

与えられたやらされ感のある目標なのか、自らも策定に関与して納得感のある目標なのかで、結果が変わってくるのは自明であろう。今年の箱根駅伝で圧勝した青山学院大学の原晋監督はサラリーマン時代に自ら体験した目標管理の手法をチーム運営に取り入れたという。チーム目標だけでなく個人目標を自ら設定して、それを自分の言葉で表現して共有する。そして、その達成度合いをチームでチェックする。原監督が自チームの作戦を「ワクワク大作戦」と名付けたように、実現までの道のりは遠くてもメンバー全員がワクワクできるようなゴール設定をしたいものである。さらに、誰が、いつまでに、どのくらいやるのか、を明確にすることも欠かせない。

原監督は「苦労したのは最初の5 年。軌道に乗ってしまえばそうでもない。重い玉が転がった感じです」というコメントも残していたが、“ 見える化” で成功している企業にも共通している感覚ではないかと思う。一度、回り出すと、上から言われなくても社員が自ら動くようになり、おのずと結果が出てくる。

売り上げ目標の設定例

受け売りではあるが、売り上げ目標の設定例を紹介したい。まずは全社の売り上げ目標を利益目標からの逆算で設定する。

1. 年間の利益目標を設定する
借入金の返済予定額などから会社として必要な利益額を求める

2. 固定費予算を策定する
人件費(従業員の増減やベースアップ分を考慮する)、減価償却費やそのほかの経費項目について次年度の計画(見込み)を立てる

3. 固定費予算と目標利益と前年の付加価値(加工高)率から(目標)売上高を逆算する
(目標)売上高=(固定費予算+目標利益)÷前年付加価値率

※ 材料費(紙、インキ、CTP 版)の値上げが見込まれる場合は、それを反映して付加価値率を変更する。

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次に営業担当一人ひとりから、今期受注した仕事は来期も見込めるか、確実に来期受注できそうな新規の仕事があるかを金額ベースで申告してもらう。昨今の厳しい環境だと申告金額の合計は、全社の売り上げ目標とかなり乖離がでるはずである。

次にどうしたらこの差を埋められるか方策を考えるように、営業の管理職にフィードバックする。経営陣は固定費が削減できないかを検討する。このやり取りを何往復か行って売り上げ目標を設定する。固定費の予算数字もすべてオープンにすることで、なぜ、この売上額が必要となるのか理解した上で検討することができる。少なくとも“ 押しつけ” という感覚ではなくなる。

ポイントは、全社の目標売り上げの数字は、営業担当一人ひとりの目標売り上げの積上げ数字と完全に一致させることである。全社目標を一人ひとりの目標にまで落とし込むには、それなりの根拠が必要となるので、目標数字が固まる頃には、具体性のある行動計画が出来上がる。そして、こうしたプロセスを面倒がらずに丁寧に踏むことで目標達成への意欲も醸成されることになる。

(『JAGAT info』2015年2月号より)