Web to printによる新ビジネス展開

掲載日:2015年3月23日

Web to printは、単に印刷物を制作し、オーダーするツールというだけでなく、より大きな問題を解決するソリューションとなる場合がある。

page2015カンファレンス「Web to printの新展開」では、株式会社フィットの代表取締役、藤原広光氏にマニュアル分野のソリューションと企業の内部統制について話を聞いた。

■マニュアル向けWeb to printサービス

株式会社フィットは、Web上で独自の日本語組版エンジンを動かすクラウド型自動組版サービスを提供している。Web経由で必要項目のテキストを入力し、組版プロセスをスタートさせると完全原稿のPDFが生成されるというサービスである。バックグラウンドでは、XMLに変換されているがユーザーが意識することはない。

SymManual(シムマニュアル)とは、Web上で企業の取説やマニュアルをライティングし、Webブライジング、印刷用PDFを生成するサービスである。入力されたデータはワンボタンでマルチデバイスに展開することができ、Webや印刷物だけでなく、タブレット・スマホにも対応している。

SymManualは大手家電メーカーや建設機器メーカー、コンピューターメーカーなどでも採用されている。その他、生損保業界では保険約款、しおりなどで利用されている。

■内部統制強化ツール

SymManualが、企業の内部統制強化ツールとして評価されている事例がある。
それが、全国チェーンを展開し、急成長しているアパホテルグループである。グループの従業員は3,000人を超えている。急成長しているため、マニュアルの整備と人材教育が、喫緊の課題となっていた。

以前は、本部の社員が業務の合間にWord、PowerPoint、Excelでマニュアルを作っていたが、整備も改訂も進んでいなかった。

SymManualを導入したことで、体系的にマニュアルを作るようになった。執筆者が記述するとすぐにWeb配信される。写真や動画入りで判り易く、ダイレクトに反応が返ってくるため、執筆者もすぐに改訂するようになる。
本部からの押し付けではなく、本部と現場が協力してPDCAのサイクルを回すようになったのである。

さらに、社内規定、トップメッセージ、通達、社内報などを定期的に配信している。これらを誰が見たかログを取り、理解度をチェックすることもできる。これを検証して、マニュアル改善するPDCAサイクルを回している。
Web配信のメリットの1つに動画がある。トップメッセージの動画を配信すると、誰がいつ見たかまでチェックすることができる。今は、アルバイトの1つのミスでも、Twitterなどで公表されて大きな損害が発生することもある。そのため、1件のクレームを減らすことが重要であり、それを周知徹底させる。

アパホテルのレストランで使われているレシピマニュアルがある。サイコロステーキとかフィレステーキのレシピのデータが入っている。編集画面に切り替えると、ブログのような感覚でデジカメの画像をアップし、調理手順を記述することができる。アパグループの社内配信サイトで閲覧できるようになっている。
印刷したマニュアルが必要な場合もある。その際にはバックグラウンドで自動組版エンジンが動作し、印刷用のPDFが生成される。目次や写真もあるため、紙で配布しても判り易い。
このマニュアルは、実際に料理長が作っている。料理長はITリテラシーが高くなく、Wordも使えないようなレベルである。以前は、本部から取材に行ってPowerPointでデータを作っていた。そして、レストランにFAXして、料理長に校正をしてもらうというやり取りをしていた。

SymManualの内部は、XMLデータで管理されている。そのため、TRADOSという翻訳ソフトにかけると英語版マニュアルも、容易に制作することができる。アパグループは近い将来、海外事業展開を目指しており、その際これらの運営マニュアルをWeb配信し、活用できると期待されている。

今まで、われわれはドキュメントを作ることに力を入れていた。しかし、その先にドキュメントを作る目的というものがある。今このシステムは内部統制の強化ツールという位置付けになっている。

2015年2月4日 page2015カンファレンス 「Web to printの新展開」より

(まとめ:研究調査部 千葉 弘幸)