百貨店売上高は45年ぶりの低水準、コンビニは初の減少、スーパーは5年ぶり増

掲載日:2021年1月29日

2020年の大手小売業売上高は、百貨店が大幅減、コンビニも減少、スーパーは増加と明暗が分かれた。クライアント産業の業績は、印刷会社の需要にどの程度影響するのか。(数字で読み解く印刷産業2021その1)

コンビニ店舗数は横ばい、スーパー店舗数は過去最高を更新

印刷産業の得意先産業は、出版、金融、小売、広告などが大きな割合を占めています。巣ごもり需要に呼応して出版物が比較的好調なことが、印刷産業にとっては明るい材料ですが、チラシをはじめとした宣伝印刷物は大きく減少しています。今回は1月下旬に発表された大手小売業の2020年販売概況を見てみましょう。

日本フランチャイズチェーン協会は1月20日、2020年末の全国のコンビニエンスストア店舗数を5万5924店(2019年末は5万5562店)と発表しました。セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンなど、正会員7社の店舗数を集計したもので、2019年3月から店舗数はほぼ横ばいです。

一方、大手スーパーなどを会員とする日本チェーンストア協会が1月21日に発表した、2020年末の会員企業56社の店舗数は1万975店(2019年末は55社1万550店)で、過去最高を更新しました。

日本百貨店協会が1月22日に発表した2020年末の百貨店店舗数は73社196店(2019年末は76社208店)、最近では地方の不採算店の閉店が続き、ピークだった1999年(140社311店)から3割強減少しています。

スーパー売上高は堅調、コンビニは初めてのマイナス、百貨店は大幅減で5兆円割れ

次に2020年売上高を見てみましょう。

最も売上規模の大きいスーパーの全店売上高は12兆7597億円、全体の約7割を占める食料品が好調な一方、衣料品は過去最大の下げ幅で、住宅関連品は感染症対策関連商品を中心に堅調に推移しました。その結果、既存店ベースで前年を0.9%上回り、5年ぶりのプラスとなりました。

コンビニの全店売上高は10兆6608億円(前年比4.5%減)で、比較可能な2005年以降で初めてのマイナスとなりました。コロナ禍の外出自粛・在宅勤務、買い物回数の減少、巣ごもり需要などにより、客単価は6.4%高い670.4円に増えましたが、来店客数は10.2%減となりました。

全国百貨店売上高は4兆2204億円、1975年(4兆651億円)以来45年ぶりの低水準となりました。緊急事態宣言による店舗休業や営業時間短縮、繁華街への外出自粛などにより、既存店ベースで前年比25.7%減、3年連続の減少となりました。さらに、インバウンド(訪日外国人)は80.2%の大幅減(686億円)で4年ぶりに前年実績を下回りました。衣料品の売上高は31.1%減の1兆1410億円、食料品が15.9%減の1兆3193億円と、商品別売上高で初めて衣料品が食料品に逆転されました。

印刷産業出荷額と百貨店売上高は規模が近く、どちらも1991年と1997年をピークとするM字カーブを描き、2009年に大きく減少しました。その後は、印刷産業出荷額が2011年に6兆円割れ、2018年に5兆円割れとなったのに対して、百貨店売上高は2015年まで6兆円台で、インバウンド需要の拡大もあって2019年まで堅調でしたが、2020年2月以降は、衣料品の悪化やインバウンド需要の冷え込みにより大きく減少しました。

「工業統計調査」による印刷産業出荷額は2月末に2019年実績の速報値が公表されます。現時点で、今回の百貨店売上高と比較できる数値はありませんが、毎月の「印刷統計」で前年同月比を見ると、2020年4月から9月の落ち込みが大きく、10月、11月は改善が見られましたが、再度の緊急事態宣言で悪化することが予想されます。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

■関連情報 :『印刷白書2020』(2020年10月23日発刊)
『印刷白書2020』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。