印刷業定点調査 各地の声(2021年7月度)

掲載日:2021年8月26日

5月の売上高は+18.2%と高い伸び。消費増税前の駆け込み需要があった2019年8~9月以来の2ヵ月連続プラス。ただし2019年5月比は売上高△12.7%、受注件数△21.3%。実質は15~20%減で推移していると見た方がよい。4月の19年比はそれぞれ△7.2%、△12.4%だったので5月は4月より相当に減速したのが実際である。

地域別では、首都圏(+18.6%)は3ヵ月連続のプラス。名古屋圏(+29.0%)は2ヵ月連続のプラス。大阪圏(+13.2%)は首都圏・名古屋圏と比べて5ポイント以上低い。大阪圏は昨年5月も地域別で最も落ち込んでいたので、他地域に比べて回復は大きく遅れる状態が続いている。

業種・業態別では、商業印刷(+17.7%)が2ヵ月連続で2桁の高い伸びだが、昨年に最も落ち込んでいた反動もあることを差し引けば今も苦しい状態が続く。出版印刷(+13.0%)は2ヵ月連続のプラス。総合印刷(+4.3%)はコロナ禍が始まった2020年2月以来のプラスを回復。回復は遅いが昨年は商業印刷ほどの落ち込みではなかった昨年要因がある。紙器・事務印刷(+16.5%)はワクチン需要などもあるようで最も早く2019年水準を回復しそうだ。

規模別では、29人以下(+19.5%)、30~49人(+23.6%)、50~99人(+11.4%)、100~299人(+6.8%)、300人以上(△4.2%)と、4月に続いて従業員規模が小さくなるほど回復が早い。

 

【印刷会社経営者の声】

茨城:商業
先月のプライバシーマークに引き続き、グリーンプリンティングの更新審査を実施。審査自体は、いくつか軽微な指摘があった程度で終了。一番の課題は、毎回大幅に時間がかかる書類の整理か。

 

東京:商業
新規の問合せは増えているが、印刷案件ばかりというわけでない。

 

東京:事務
M&Aや倒産増加の流れはさらなる加速が止まらないだろう。働く個人にも3年・5年・10年後を見据えたビジョンやスキルアップが必要になるだろう。国も会社も守ってくれる時代ではなくなっている。だからこそ、一緒に変化を作れる会社はもっと伸びていくだろう。

 

神奈川:商業
新型コロナ感染抑止の明確な手段がみえず、宣言解除等の施策が功を奏していないなか、東京五輪の可否が問われている状況で、5~6月現在は大幅に冷え込む。ワクチン接種に関する指針もあいまいだが、今年の秋口から回復が見えてくるのではと期待感。

 

長野:出版
コロナで通常モードではないといった意識が働き、上がってくる数値に何かしら裏があるのではと考えてしまう。

 

長野:総合
営業は、頑張る前にやることがある。会社や上司から頑張れと言われるし、自分も頑張らなきゃと思っているはずだ。でも、どうやって頑張ればいいのかを計画化できなければ、精神論だけで成果が出るほど甘い営業環境ではない。目標を決め、何をいつまでにどうやってどのくらいやるかを決めること。計画化は大事です。

 

岐阜:総合
コロナ禍2年目。さすがに昨年より売上は良いものの、一昨年実績までは遠く及ばない。これが7割経済というものか…。国は事業の転換、再構築と言うが、中小企業にとってそんな簡単なものではない。

 

岐阜:その他
ヒット曲のニューアレンジ、定番商品の派生商品、いずれもスタンダードには敵わない(と思う)。横展開で市場拡大を図ることも重要だが、新たな市場を作ることも大切だ。さあ、何しよう。

 

愛知:出版
ポストコロナを見据えて準備すべき時に来ているように思う。デジタル化はさらに加速すると見ています。

 

大阪:商業
売上高は昨年より増えているが、昨年が悪過ぎたから増えたにすぎない。昨年は、学校は休校かリモートだったが今年は授業が再開して少し動いている。今年はワクチンの仕事もあった。

 

和歌山:商業
コロナ禍の仕事減により、競合会社が介入して、納入価格を下げ対処することになった。価格は下げても、上げてもらえることはまずない。そのなかで、変動費を見直そう。利益を確保するために、原材料費にメスを入れる地道な作業を見直したい。

 

岡山:商業
ようやく持ち直してきたかなと思っていたら、第4波の緊急事態宣言でまた冷え込む。受注がピタリと止まりました。苦しい。しかし上を向いて歩こう。

 

山口:事務
長く続くコロナ禍の下で、近ごろよく聞くのは「ヒマなので動画の会社案内を作りました」との話し。スマートフォンで誰でも見てもらえるようにするのが流行っているみたいですね。当社もその流れです。

 

熊本:商業
3月までは例年並みだったが、4月・5月は受注が鈍っている。夏のイベントは軒並み中止が決まって、仕事的にも気分的にもさみしいばかり。昨年の緊急事態宣言明けは受注が大きく伸びたが、今年は本当の意味でのポストコロナに期待。

 

(『JAGAT info』 2021年7月号,印刷経営ウォッチング,p56-57より抜粋して要約)