グレーを使った印刷キャリブレーション基準「G7」

掲載日:2022年5月2日

G7とはGRACoLというアメリカの印刷標準化団体が規定したCMYKのプロセス印刷のガイドラインである。グレーバランスを重視して色の「見え」を合わせることが特徴である。

page2022セミナー「カラーマネジメントの最新トレンド」では、G7についてエックスライト社の技術サポート担当の岡松英二氏よりお話を伺った。

キャリブレーションとはカラーマネジメントのベースとなる。カラーマネジメントの基本的な考え方はデバイスごとの発色特性を記録したICCプロファイルを作成し、そのプロファイルを参照してCMYKやRGBの値をそのデバイス用に変換することで、色の一致を実現させようとするものである。これが成立する前提条件は、そのデバイスの色再現が一定で安定していることである。刷り始めと刷り終わりで色再現が異なるようではカラーマネジメントは成立しない。きちんとデバイスの状態を基準にあわせることをキャリブレーションという。

パッケージ印刷に有効なG7

G7が特に有効なのはパッケージ印刷分野である。商業印刷分野でのオフセット印刷においてはジャパンカラーが定着してきている。ジャパンカラー認証の取得まではせずとも、ジャパンカラーを自社標準の印刷色として採用している会社は多い。データを作成する上流工程においても、依頼する印刷会社や印刷する印刷機を意識せずともジャパンカラーをターゲットにしてデータを作成すれば最終仕上がりが想定できる。印刷側もジャパンカラーの印刷条件で印刷機をきちんとキャリブレーションしておけば安定した品質のものが仕上がる。

一方、パッケージ印刷においては標準化が難しい。その理由は、1点目は印刷方式が多岐にわたるためである。オフセット以外にグラビアやフレキソ、最近ではデジタル印刷機を導入する印刷会社も増えている。二点目は素材(用紙)の色がさまざまなためである。色だけでなく素材自体も軟包装材があったり段ボールがあったりする。三点目がCMYKのインキ色が標準化されていないことである。例えばフレキソ印刷では、耐光性インキと非耐光性インキでは色度が異なる。四点目はスクリーン(網点形状)が様々でドットゲインの標準化が難しい点である。例えばFMスクリーンではドットゲインの基準値が変わってくる。
これらの要因から、ジャパンカラー標準のように、CMYKインキの1次色のLab*値と50%網点のドットゲイン値の定義による印刷色の標準化は困難である。

G7はグレーバランスを使ったキャリブレーション手法であり、GRACoLというアメリカの団体がG7の認証制度を行っている。G7のGはグレーで7はCMYKとRGBの7色という意味である。G7は国際標準ではない。CMYKのプロセス印刷のガイドラインとなる。シェアド・アピアランスという考え方が基本になっている。これは印刷方式やCMYKのインキの一次色が異なっていても色の「見え」が同じになることを目指すもので、グレーバランスとグレーの階調でキャリブレーションするという方法をとる。適切なキャリブレーションを行った上でICCプロファイルを作成しカラーマネジメントを行っていく。

図1はG7とドイツのFOGRAが行っているPSOという認証制度を比較した表である。PSOとジャパンカラーは近しい規格となる。G7でもインキやベタのCMYKのLab値はISOの規格を踏襲している。異なるのはグレーバランスと階調再現のところである。G7では、グレーバランスはCMYグレーのLab値を規定し、階調再現はグレーの階調特性(Neutral Print Density Curve)を規定している。これらを使ってキャリブレーションする。

図1 G7とPSOの違い

なぜG7でパッケージのCMYK管理をするかというと、理由のひとつは標準印刷色のグローバルなニーズの高まりである。すでに多くのグローバル企業が印刷条件をG7で指定しており、昨今は東南アジアにおいてもG7の条件で印刷できる印刷会社が増えている。そしてグレーバランスによる階調管理は印刷方式や網点形状にとらわれないのでパッケージ印刷に向いている。そして、多様な用紙色に対応するためにSCCA(Substrate-Corrected Colorimetric Aims)という考え方を採用している。これは用紙など基材の色が変わったらそのターゲット自体を基材の色に合わせて調整して変換するものである。

Jagat info 2022年3月号より抜粋

(研究調査部 花房 賢)

参考リンク
X-Rite PANTONEが提供する「色」と「見え」の学習プログラム
FOCA』