エキスパート資格を団体や企業として推進する取り組みが続いている。クロスメディア資格を推進する経営側の視点についてお話を伺った。 続きを読む
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クロスメディアエキスパート対策講座:合格するクロスメディア提案書のポイント
複合的なメディア活用による課題解決を実現するには、まずは当試験の第2部試験合格に向けての取り組みが第一歩です。
企画を提案書答案にどう落とし込むか?一連のプロセスを解説
第2部記述式試験では、顧客企業のコミュニケーション戦略を立案し、提案プロジェクトのリーダーとして提案書にまとめることが求められます。
第2部試験合格に向けて、戦略立案と合格答案に求められるポイントを押さえ、確実に取り組みましょう。
当対策講座では、出題与件のサンプルを基に、メディア・コンテンツ選定から提案書(答案)に落とし込むまでの一連の手順を解説していきます。
試験当日140分の試験時間の中でどう合格答案に近づけるか、本講座で確かめ、本番に臨んでください。
内容
- 認証試験ガイダンス
- 与件サンプル読解と設問解説
- 設問ごとの解答ポイント解説
- 立案のポイントと検証
- 答案への落とし込み
講師
影山 史枝
株式会社スイッチ DTPスペシャリスト
JAGATエキスパート資格講座インストラクター
PCメーカーにて教育事業を担当。その後人材派遣会社にて派遣社員の教育全般、 画像処理メーカーにて出力業務、マニュアル制作など営業サポート業務を担当。現在は、印刷会社のテクニカルアドバイザー、教育機関のDTP講師、DTPエキスパート認証試験対策指導を行う。講演、執筆実績多数。
対象
クロスメディアエキスパート認証試験受験予定者
受講料
- 一般:14,040円(税込)
- 優待(JAGAT会員またはDTPエキスパート有資格者):8,640円(税込)
※開催日の2日前までに下記の口座へお振込みください。
みずほ銀行 中野支店(普)202430
シャ)ニホンインサツギジュツキョウカイ
募集要項
■ 開催日:2017年7月20日(木) 10:00~17:30
■ 主 催:公益社団法人 日本印刷技術協会
■ 会 場:日本印刷技術協会 セミナールーム
■ 最少催行人数:5名 定員:30名
申し込み方法
Webからのお申込み
FAXによるお申込み
►FAX申込書(PDF)をダウンロードし、必要事項をご記入のうえ、JAGAT販売管理担当(03-3384-3216)までFAX送信してください。お申込み内容を確認後、参加証をお送りします。
お問い合わせ
☞お申込みについて 販売管理 TEL(03)5385-7185
☞講座内容について CS部資格制度事務局 TEL(03)3384-3115
E-MAIL: cme@jagat.or.jp
第24期クロスメディアエキスパート認証試験実施要項
エキスパート集団、メディアに強い会社を目指して
研文社社長の網野勝彦氏にDTPエキスパート、クロスメディアエキスパート試験に取り組んだ経緯と今後の社員教育について話を伺った。
【第23期与件:リノベーション】クロスメディアエキスパート 記述試験
状況設定について
あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。X社は、商業印刷物やSP企画・制作、Webサイトの構築・運用のサービスを顧客企業に提供している。X社にはデザインとWebコンテンツや動画の企画・制作を専門とする系列子会社があり、グループ総従業員数は120名である。
A社提案プロジェクトについて
中古マンションのリノベーションサービスを中心に展開するA社は、X社が過去に取引を行った顧客企業である。X社は、同社Webサイトの一部を手がけた実績もある。
営業担当者より、「A社は、顧客との新しいコミュニケーション戦略の検討をしている。」との報告があった。X社は、営業部門や企画部門、制作部門に所属する数名で、A社提案プロジェクトを立ち上げた。
クロスメディアエキスパートであるあなたは、本プロジェクトのリーダーに任命された。 X社は、本プロジェクトにて提案書を作成し、2017年2月26日にA社へ提出する予定である。
面談ヒアリングについて
A社について調査をすすめていった結果、X社の競合企業がインターネットやモバイル端末を活用した企画提案を行う準備をしているとの情報が入った。
X社は、営業担当者が中心となり、社長と販促担当者に面談(※ヒアリング報告書参照)を実施した。A社は、コミュニケーション戦略を立案するにあたり、社外からの優れた提案を取り入れ、実施を検討する方針である。
A社ヒアリング報告書
概要:A社からの提案依頼に伴う、ヒアリング調査
日時:2017年1月27日 10時~12時
対応者:長尾社長、関口ブランドマネージャー(本部広報室)
内容:下記に記載
1.提案へ向けて
A社は、中古マンションのリノベーションサービス事業を中心に展開している。事業所は本社のほか、営業所が5店舗、ショールーム3店舗で展開している。
創業時は首都圏に拠点を構えるパートナー不動産企業から顧客の紹介を受け、順調に売り上げを伸ばしていた。しかし、創業から2年を過ぎた頃、請負型の営業体制の限界や国内におけるリノベーションの認知度が低いことに危機感を覚えていた。
そこで、A社は2010年から自社のサービスやリノベーションの価値を生活者へ直接訴求する目的で、ファミリー層を対象にしたリノベーションサービスの自社ブランド「Re Life」を2010年に立ち上げた。また、同ブランドを体感する場としてショールーム「Re feel」を開店し、2015年には3店舗まで拡大した。
今後は、自社の理念を共有できるスタッフとともに、顧客との交流に重きを置いた活動を目指している。ショールーム「Re feel」各拠点を「交流と体験の場」と位置づけ、競合との差別化を進めている。そして、顧客とのコミュニケーション手法を確立し、関係性を重視したプロモーションの実現を模索しており、それに伴うコンテンツやメディア展開案を求めている。
2.施策の運営と実施効果測定
- 週単位でメディア展開の実績を確認したい
- 可能な範囲でメディア利用者のレスポンスを把握し、活用したい
- A社の担当者は、本部広報室を中心に2名を予定
3.想定予算
- 印刷、Web制作費、ハードウェア、ソフトウェア、開発費などで、総額2,000万円以内を想定 (初期費用のみ。以降の維持コストは別途算定として構わない)
4.施策の実施期間
- 2017年9月1日に施策開始、2018年3月31日までを第1フェーズとして予定している
5.創業
- 「日本の暮らしを豊かで賢く素敵にデザインする」という思いから、創業者であり現社長の長尾が建築デザイナーで現専務の三神と共同で、中古マンションに特化したリノベーションサービス企業を設立。
- 長尾社長は大学卒業後、大手ゼネコンで新築マンションの営業に5年間従事した。
- 日本では古い建物を壊して新築マンションを建てるスクラップ・アンド・ビルドの考え方が主流だったが、その住まいのあり方に疑問を抱き始めた。
- 友人とパリを旅行した際に、築60年のリノベーション済み物件を見学した。一見古びた外装とは裏腹に、欧風シックでホワイトインテリアの素敵な内装と、住んでいる人の個性的で解放された世界観に魅了された。
- 帰国後、退職して建築設計事務所や家具工房での営業を経験し、設計事務所や工務店との人脈を構築した。
- 創業当初から数年は、大手ゼネコン時代に取引関係にあった首都圏の不動産企業(以下、パートナー不動産企業)から顧客の紹介を受け、順調に売り上げを伸ばしていた。
- A社のリノベーションは自由度とデザイン性を顧客から高く評価されている。
6.個人向け中古マンションのリノベーション市場
- リノベーションとは、既存の建物に間取り、水道管、排水管、冷暖房換気設備の変更などの大規模な工事を行い、価値を高めることを指す (リフォームは修復の意味合いが強く、システムキッチンやユニットバスの入れ替え、壁紙の変更など小規模な修繕)。
- 「リノベ済みマンション」とは、業者が既にリノベーションを施した完成品の物件であり、手軽でカジュアルな住まいを手に入れたい層から支持されている。ただし、デザインの自由度はない。
- 「マンションリノベ」とは、自らリノベーションを考え、自分なりの個性的な空間を手に入れたい顧客向けである。ただし、費用や時間などのコストは高くなる傾向である。
- 首都圏の中古マンションの成約件数は増加傾向。築年数が20年を超える古い物件の成約も増えている。
- リノベーション市場は今後の拡大が期待されているが、市場における認知度は低い。
- リノベーション費用の予算の平均ボリュームゾーンは200~300万円程度である。
- 利用者の年齢層は20~40代で世帯所得が600万円以上のファミリー層が多い。
- 国土交通省は2017年2月から、「住宅ストック循環支援事業」として、40歳未満の人が中古住宅を購入してリフォームを行う際に最大65万円を支援する制度の申請受付を開始した。
- 日本の住宅流通のうち、中古住宅の比率は約15%である。それに対し、他の先進諸国では70~90%程度である。日本の住宅取得は欧米に比べると新築に偏っている。
7.A社の事業モデル
- 中古の「マンションリノベ」に特化したリノベーションサービス事業である。
- 居住を目的とした個人の住宅一次取得者(初めて持ち家を購入する)をメインターゲットとしている。現時点では、賃貸物件のオーナーは対象にしていない。
- 主たるサービスはリノベーションの施工であるが、物件の紹介や住宅ローンなどの相談も一括で請けている。
- パートナー不動産企業からリノベーションを希望する顧客の紹介を受けた場合、紹介手数料として施工価格の5%を支払っている。
- A社からパートナー不動産企業へ顧客(物件を探している)を紹介する場合は、紹介手数料を受け取っていない。
- パートナー不動産企業に手数料の負担をかけないことで、市場には出回っていないリノベーション向きのお宝物件を優先的に紹介してもらえる。(友好関係を継続するため)
8.A社のリノベーションサービス「Re Life」の特徴
- A社が展開する中古の「マンションリノベ」に特化したサービスのブランド名称である。
- 「ファミリー×スモールハウス(狭い空間)×デザインリノベーション」をテーマに、首都圏特有の手狭な物件でも、家族が豊かで賢く素敵にデザインされた住まいの提供を行う。
- 狭い間取りを広く見せるなど空間デザインの設計力が優れ、同業者からも一目置かれている。
- 若年層から人気が高い家具ブランド「ジャーナルアローズ」と提携したインテリアコーディネートサービスが人気を得ている。
- リノベーション費用の平均平米単価は「15万円」である。
- 設備や内装、下地や配管・配線のすべてを解体し、撤去した上でリノベーションを行う(スケルトンリノベーション)ため、引き渡し後の瑕疵リスクが低い。
- 首都圏に立地する50~70平米で築年数が20年を超える物件の依頼が多い。
9.ショールーム「Re feel」
- A社のサービスである「Re Life」やリノベーションの価値を生活者へ訴求するために、首都圏の3カ所に直営ショールームを開設している。
- 築40年の中古マンションで、間取りは60平米の3LDKをリノベーションした物件である。
- 来場者からは、「60平米の狭い間取りが、こんなに広く感じるとは思わなかった」「子供に安全な設計に配慮しつつも、大人も楽しめる空間デザインに感動した」との声がある。
- 各拠点には、資金計画、物件選び、リノベーションプランなどの相談が可能なライフスタイルコーディネーターが常駐している。
10.「Re Life」の利用者
- 利用者の年齢層は20~60代以上と幅広いが、20~30代のファミリー層からの申込みが増えている。
- 「オシャレな内装で妻や娘が喜んでいる。これから家の中での生活が楽しく過ごせそう。(20代の男性) 「築25年の物件を購入して8年経ったけど、大きな不具合が出てなくて安心して住めています」(30代女性)など、デザインや安全性の評価が高い。
- ショールーム「Re feel」来場者の調査をした結果、住宅観は「便利で快適な生活の土台となる」「自分の個性やライフスタイルを表す」、予算以外に重視する点は「通勤、通学、生活の利便性」との回答が多かった。一方、投資や資産価値への関心度は低い。
- 来場者は、リノベーションに関心を持っているものの、新築、リノベ済マンション、マンションリノベのいずれかで悩んでいるアーリーマジョリティー層が中心である。
11.イベント
- 「リノベーション向きの掘り出し物件を探すツアー」や、A社が施工した顧客の協力による「完成物件見学ツアー」を無料で開催している。
- 参加者からは、「リノベーションに対する具体的なイメージができた」「1日で複数の物件を周れるので効率的」など参加者の評価は高い。
- 参加者数が最少催行人数に達せず中止となるケースがあり、不満の声もある。
- 2017年5月からは、「物件の探し方」「リノベーションの基礎」「中古物件の耐震性」「資金計画」などのテーマのセミナーを開催する予定である。
12. 人事体制
- A社は5年前に、スタッフに対する十分な育成や理念の共有ができず、大量離職を招いた経験があり、人事制度を見直す一環として10の行動指針を示した。
- 特に重視しているのが、「真面目であれ」「誠実であれ」「顧客バカであれ」であり、顧客や社内の同僚に対して「いい人、優しい人、気持ちの良い人」でいることを徹底している。
- 営業スタッフの評価は、顧客満足度アンケートの結果を重視している。アンケートは顧客が本社へ直接送付する仕組みを採用している。(担当スタッフを経由しない)
- 「宅地建物取引士」「ファイナンシャルプランナー」「インテリアコーディネーター」など不動産業に関わる資格の取得を奨励している。受験費用の補助や社内勉強会を開催しており、多数の有資格者が在籍している。
- 不動産の業界団体からA社の人事制度や育成の取り組みについて取材を受け、業界紙に記事が掲載され、反響があった。
13.販売促進
- 首都圏に隣接する県内のファミリー向け賃貸アパートに折り込みチラシとポスティングを行っているが、費用対効果に疑問を感じている。
- Webサイトで、「イベント情報」や「リノベーションサービス」「ショールームのアクセス情報」を掲載しているがアクセス数は伸びていない。
- A社主催のイベント参加者の満足度は高く、複数回参加している方は高い確率でリノベーションサービスを利用している。
- イベント参加者には、事前に「住所等の属性情報」「世帯収入」「購入予算」の申告を求めている。
- イベント参加者へ定期的にイベント情報を一括メールで発信している。
- 小冊子「リノベーション虎の巻」をショールーム内で配布している。内容は、リノベーションの基礎知識の他、物件の選び方、つくり方、顧客事例である。
- ブランド力向上を目的に、リノベーション専門誌「Life as House」へ広告を出稿している。
14.A社の競合(B社)
- 首都圏の中古マンションの買取再販業者であるB社は、安価で購入した物件にリノベーションを施した「リノベ済みマンション」を顧客へ販売し、業績を伸ばしている。
- 配管や配線、間取り替えなど大規模な工事は行わないが、内装(クロス、フローリング、水回り)は、流行の設備やデザインを使用し全面的にリノベーションしている。
- 物件込みの価格で販売しているが、リノベーションにかかる費用は300万円程度でA社のサービスと比べて安価である。
- 内装はきれいでも下地や配管・配線など、顧客から見えにくい部分の瑕疵リスクはA社のサービスに比べると高い。
- 大手不動産情報ポータルサイト「IE-SUMU」に物件情報を掲載している。問い合わせの多くはこのサイトを経由している。
- 大手検索サイトの「検索連動型広告」に出稿し、「リノベーション」「中古マンション」の検索キーワードで上位に表示されている。
- 公的機関が主催するリノベーション動画コンテストで入賞した。
15.今後の方針
- 20~30代の住宅一次取得者で子供が1~2人のファミリー層をメイン顧客とする。
- パートナー不動産企業からの顧客の紹介に依存するのではなく、A社のサービスやリノベーションの価値を訴求し、ブランド化を図る。
- パートナー不動産企業との良好関係を維持するため、A社が開拓した顧客(物件を探している)の無料紹介は継続的に行う。
- 顧客とのリアルなコミュニケーションの場として、ショールームや各種イベント参加者の増加を目指す。
- 専門性が高く顧客志向の強いスタッフの充実も、リノベーションの価値を訴求する重要な要素と考えている。
- リノベーション専門誌「Life as House」の編集者が広報担当として入社することが決まり、今後の重要な戦力として考えている。
- 住宅を提供するのではなく、「生活者の豊かな生活」を創り上げることを使命と考えている
- 大阪、名古屋にショールーム「Re feel」を開店予定。
- 第三者割当増資による1億円の資金調達を実施し、マーケティング強化やショールーム開設の加速を計画している。
A社の概要
法人名:株式会社A
設立:平成19(2007)年
従業員:50名
資本金:80百万円
売上:900百万円(2016年3月期)
施工数:100件(2016年3月期)
所在地:東京都渋谷区(本部)
役員:代表取締役 長尾 完治 専務取締役 三神 健一 常務取締役 青名 リカ
事業:中古マンションのリノベーションサービス事業
店舗数:ショールーム(3店)、営業所(5店)
企業沿革
2007年:株式会社A設立
2010年:ショールーム「Re feel」表参道(1号店)開店
2012年:家具ブランド「ジャーナルアローズ」と提携
2015年:ショールーム「Re feel」3店舗達成
2017年:大阪、名古屋にショールーム「Re feel」を開店予定
経営理念
暮らしを賢く素敵にデザインすることで、心の豊かな社会づくりに貢献する
社長プロフィール
長尾 完治(ながお かんじ)
- 学歴:1997年にA大学の建設学科を卒業
- 職歴:大手ゼネコンの営業職に従事(5年間) 建築設計事務所、家具工房で営業に従事(4年間) 2007年株式会社A設立
- 家族構成:妻(37歳)は、趣味を兼ねて「整理収納アドバイザーとしての講師業」に従事 長男(7歳)、長女(5歳)
- モットー:「人と人とを言葉で紡ぎ、心を紡ぎ、ご縁を紡ぐ」
- 趣味:弓道、絵画鑑賞、カフェめぐり
A社損益計算書(2015年度、2016年度)
2015年度 | 2016年度 | |
売上高 | 600,000 | 900,000 |
売上原価 | 420,000 | 585,000 |
売上総利益 | 180,000 | 315,000 |
販売費・一般管理費 | 198,000 | 270,000 |
営業利益 | ▲18,000 | 45,000 |
営業外収入 | 3,000 | 4,500 |
営業外費用 | 18,000 | 27,000 |
経常利益 | ▲33,000 | 22,500 |
設問
問1 A社の顧客コミュニケーションにおける課題を優先度の高い順に3つ記述しなさい。
(1)課題1: (2)課題2: (3)課題3:
問2 問1の課題を解決するための具体的なコミュニケーション施策を箇条書きで記述しなさい。
ターゲット、コンテンツ内容、使用するメディアと選定理由についても記述しなさい。 (1)コミュニケーション施策 (2)ターゲット (3)コンテンツ内容 (4)使用するメディアと選定理由
問3 A社に提出する提案書を問1、問2の内容を踏まえて記述しなさい。 記述形式:A4縦・横書き・3枚
問4 A社に提出する提案書要旨(サマリー)を問3の内容を踏まえて記述しなさい。
クロスメディアエキスパート論述試験の内容と採点ポイント
※資格制度事務局注
2019年8月試験より設問形式が変更となり、一部下記原稿にある設問内容と異なります。ただし、採点のポイントは変更ありません。
クロスメディア論述試験では、架空の企業に関する8ページ程度の与件文を読み、いくつかの設問に答えるとともに、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を作成する。
【第22期与件:知育玩具】クロスメディアエキスパート 記述試験
状況設定について
あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。X社は、商業印刷物やSP企画・制作、Webサイトの構築・運用のサービスを顧客企業に提供している。X社にはデザインとコンテンツ企画・制作を専門する系列子会社があり、グループ総従業員数は120名である。
A社提案プロジェクトについて
知育玩具の販売を中心にサービス業や小売業を展開するA社は、X社が過去に取引を行った顧客企業である。X社は、同社Webサイトの一部を手がけた実績もある。
営業担当者より、「A社は、顧客との新しいコミュニケーション戦略の検討をしている。」との報告があった。X社は、営業部門や企画部門、制作部門に所属する数名で、A社提案プロジェクトを立ち上げた。
クロスメディアエキスパートであるあなたは、本プロジェクトのリーダーに任命された。 X社は、本プロジェクトにて提案書を作成し、2016年8月21日にA社へ提出する予定である。
面談ヒアリングについて
A社について調査をすすめていった結果、X社の競合企業がインターネットやモバイル端末を活用した企画提案を行う準備をしているとの情報が入った。X社は、営業担当者が中心となり、社長と販促担当者に面談ヒアリング(※面談ヒアリング報告書参照)を実施した。
A社は、コミュニケーション戦略を立案するにあたり、社外からの優れた提案を取り入れ、実施を検討する方針である。
A社面談ヒアリング報告書
概要:A社からの提案依頼に伴う、ヒアリング調査
日時:2016年7月27日 10時~12時
対応者:長谷部社長、香川広報室長
内容:下記に記載
1.提案へ向けて
A社は、幼児向け知育玩具の企画・製造、輸入、販売と幼児教室の運営を中心に事業を展開している。事業所は本部のほか、幼児教室1店舗、知育玩具専門店10店舗を運営している。
創業時は、「幼児教室」の運営を主要事業とし、あそびを取り入れた独自の幼児教育手法が支持され、業績は順調に推移した。
しかしながら、創業から10年を過ぎた頃、バブル景気の崩壊などの影響により、幼児教室事業の成長に陰りが見えはじめてきた。
そこで、新たな成長戦略として知育玩具の輸入販売の事業化を図ることとなった。
その後、2000年には、オリジナルブランドの木製知育玩具「森のともだち」シリーズの企画・開発と販売を手掛け、堅調に推移している。さらに、「森のともだち」シリーズの販売拠点として、専門店「知育の森」の店舗開発・運営を進めている。
A社は、自社の理念を共有できるスタッフとともに、地域に根ざした活動を目指している。「あそびを通して幼児の成長に貢献する玩具店」をコンセプトとした各拠点を、「交流と体験の場」と位置づけ、他の玩具店との差別化をさらに進めたいと考えている。そして、顧客とのコミュニケーション手法を確立し、顧客との関係性を重視したプロモーションの実現を模索しており、それに伴うコンテンツやメディア展開案を求めている。
2.施策の運営と実施効果測定
- 週単位でメディア展開の実績を確認したい
- 可能な範囲でメディア利用者のレスポンスを把握し、活用したい
- A社の担当者は、本部広報室を中心に2名を予定
3.想定予算
- 印刷物作成費、ハードウェア、ソフトウェア、開発費などで、総額2,000万円以内を想定 (初期費用のみ。以降の維持コストは別途算定として構わない)
4.施策の実施期間
- 10月1日に施策開始、3月31日までを第1フェーズとして予定している
- 年末のほか、3月および4月が繁忙期となるため、コミュニケーション施策は、業務のピークを考慮したものとしたい
5.知育玩具について
- 知育玩具とは、幼児や児童の持つ好奇心や遊びに対する興味を刺激し、創造力や表現力を養うことで知能的発達を促すことを目的とした玩具である
- 商品のイメージとしては、「平仮名が刻印された積木」「数字で遊ぶパズル」「キッチンセットでままごと遊び」「叩くと音が鳴るシンプル楽器」などがある
- 最近は、コミュニケーションを図りながら一緒に知育玩具で遊ぶ親子や家族が増えている
- 知育玩具を購入する層は20~30代のファミリーが中心で、子供への教育に熱心であり育児に関する情報収集に積極的である
- 以前は高級品のイメージが強かったが、現在は一般的な玩具と比較すると価格は高い傾向にあるものの、決して大衆が手に届かない玩具ではない
6.創業について
- 「あそびを通して幼児の健やかな成長に寄与したい」という思いから、創業者である長谷部 朋子が設立。当初は幼児教室の運営からはじめた企業である
- 日本の市場では認知度が低かった北欧の知育玩具を活用した「あそび×幼児教育」の独創的な教育手法が支持されていた
- 幼児教室である「エデュ・クリエイト」は0歳~5歳児までの幼児を対象に、神奈川県横浜市を中心に出店し、ピーク時には5店舗まで拡大していた(現在は1店舗)
- 長谷部京子社長は大学で幼児教育学を専攻し、卒業後は北欧での海外留学を経て、北欧の大手幼児向け玩具メーカーのマーケティング職として5年間従事した
- 帰国後は、子育てと両立しながら大手出版社で育児向け雑誌「ヒナとタマ」の編集業務に8年間従事した
7.知育玩具の輸入販売事業
- 創業から10年が過ぎた頃、バブル景気の崩壊や大手幼児教室チェーンの参入により、幼児教室の入園者が減少し始めた
- 幼児教室「エデュ・クリエイト」は収益性の問題と競合との競争から事業規模を縮小した
- 創業者の長谷部朋子は、実娘の長谷部京子を新事業開発責任者として雇い入れた
- 0歳~5歳児向けの北欧の知育玩具の輸入販売事業を始め、主に「大手幼児教室チェーン店」へ卸販売を行った
- 「大手幼児教室のチェーン店」へ取引数は増加しA社の売り上げと、知育玩具販売事業会社としての認知度向上に貢献した
8.自社オリジナルブランドの木製知育玩具「森のともだち」について
- 海外工場での生産やプラスチック製の知育玩具が主流のなかで、国内生産の木製知育玩具を特徴としている
- 国産木材と安全な自然塗料を使用しているため、舐めても人体に無害であり、安心・安全な素材である
- 企画、設計は自社で行い、製造はA社の理念に共感した国内屈指の木工職人や工房と提携している
- キャラクターものは扱わず、無駄な色使いもしないシンプルなデザイン(素材の質感や風合いをそのまま活かした自然塗料仕上げ)で統一している
- 幼児が細かい指先の訓練ができるよう、細やかな操作性を重視している
- 商品の価格帯は1,000円~100,000円と幅広いが、最多価格帯は10,000円程度と競合商品に比べると、やや高価格である
- 主力商品群は、0歳~5歳児向けの「積み木」「ままごと遊び」「図形、数、文字遊び」「パズル」「音遊び」など、指先を使うことで「語彙力」「想像力」「コミュニケーション力」を養えることを特徴としている
9.店舗について
- 木製知育玩具「知育の森」は、主に自社ブランド「森のともだち」シリーズを扱う専門店として、主に20~30代のファミリー層をターゲットにしている
- 各拠点は、首都圏および5大都市の大手百貨店のテナントとして、10店舗展開している
- 森をイメージした店舗であり、幼児の遊び場やイベントスペースも設けている
- 子供から「おもちゃ屋さんで遊ぼうよ」と、せがまれることが多く、無料で遊ばせるスペースがあるのは助かるとの声がある
- 定期的に「よいおもちゃの遊び方・与え方」などの教養セミナーや「あかちゃんハイハイレース」「親子で一緒に遊ぶ知育玩具」などの体験イベントを実施している
- 2年前に顧客調査を実施した結果、ブランド品や趣味嗜好品などへの関心は高くなく、高級志向ではないこと、機能や安全など実用性へのこだわりを持つ方が多いことがわかった
- 具体的な意見として、「温かく、きれいで、木の良い香りがする」「日本製は安心できる」など商品に対する意見や、「店員の方の丁寧な説明で、どの玩具が息子にぴったりかわかった」「イベントに参加して親子で楽しめた」など、店舗でのサービスを高く評価されている
- 20~30代のファミリー層からの購入が8割を占め、リピート率は50%とまずまずの水準
- 11月には「千葉県流山市」のショッピングモールに新規出店する予定である
10.店舗スタッフについて
- 幼児教室で培ったノウハウを活かして、知育玩具を活用した上手な遊び方を教えられるスタッフが多い
- 公的機関が認定している「知育玩具インストラクター制度」のマスター資格(最上位)を有している従業員が各店舗に最低1名は在籍している
- 有資格者は、幼児の発達とおもちゃの関わり方と、世界各国のおもちゃ文化考察から、遊びを広げる実践術まで「幅広い視点」でおもちゃを捉えることができる
11.玩具市場について
- 少子化及び人口減の進行に伴い、国内玩具市場は縮小傾向にあるが、知育玩具の市場規模は拡大している
- 今後、成長性が見込まれる知育玩具として「ハイテク/トレンドトイ」があり、大手玩具メーカーやIT系企業を中心に開発が進んでいる
- 代表的なものとして会話ができるインタラクティブロボットや、子どもたちがコンピューター・プログラミングを楽しく学習できるトイロボットがあるが、対象年齢の中心は小学生以上の児童である
- 知育玩具全般では、10,000円を超える高額な商品も堅調に販売されている
- 玩具が起因する事故(誤飲、切り傷など)が増えており、特に幼児向けの玩具には「安心・安全」を重視した玩具づくりが求められている
12.子育て世代について
- 市区町村が主催する、イクママ、イクメン、イクジイ向けの子育て関連セミナーの参加者は年々増えている
- 育児関連の専門ポータルサイトは人気が高く、複数のサイトに会員登録している親が増えている。代表的なサイトとして、「ママパーク」の会員数は500万を超えている。
- イベントやポータルサイトを利用して、育児情報の共有や仲間をつくる目的のコミニティーサークルへ入会する親も増えている
- 3世代消費(孫のためのモノの購入、または共に過ごすことによって生じるシニア世代の消費)が活性化している
- 玩具の紹介や遊び方、子供向けイベントへの参加リポートなど、子供が主人公となって紹介する動画コンテンツを投稿する親が増え、人気のあるコンテンツは100万回以上再生されている
13.販売促進について
- Webサイトでは、主に「商品紹介」「店舗のアクセス情報」「注文フォーム」のみが掲載されている
- 顧客からは、A社のWebサイトについて「知育玩具へのこだわり、店舗、スタッフの良さが伝わっていない」「イベント等の情報発信量が少ない」との声があがっている
- 全国への通信販売は、複数の「大手ネット通販サイト」上で展開しており、各店舗の商圏外の顧客からの商品購入もあるため、概ね満足している
- SNSを活用して新商品発売のお知らせをしているが、ファン数やユニークユーザー数ともに少なく、コミュニケーションは活発に行われていない
- 季刊で「あそびの森通信」(8ページ)を店舗内で無料配布しており、読者からの評価が高い
- 通信には、新商品発売のお知らせのほか、利用者家族の取材記事、イベントの実施報告、子育てに関する最新トピック情報を掲載している
- 各店舗の近隣へ店舗の紹介チラシのポスティングを行い、育児向け雑誌「ヒナとタマ」には広告の出稿をしているが、費用対効果に疑問を感じている
- 「大手幼児教室のチェーン店」と提携し、保護者に対して「割引クーポン券の発行」や「無料イベントのお知らせ」を行い、木製知育玩具「知育の森」への来店を促している
- 会員カードに登録している顧客には、新商品を発売する時期に一斉メールで告知している
14.競合(B社)について
- B社が製造・販売しているプラスチック製の知育玩具「スマイルキッズ」は、知育としての一定の機能を有しているが、派手な色使いやキャラクターを使用したデザインが一番の特徴であり、最多価格帯も5,000円程度とA社と比べると低価格である
- B社の商品は、安心、安全へのこだわりや、知育へ意識は比較的高くないが、気軽に知育玩具で遊ばせたい「20~30代のファミリー」層には人気がある
- B社が経営する知育玩具店は、大手ショッピングモールのテナント店としてA社商圏内に隣接して出店している
- B社は、大人気キャラクター「ごはんまん」のコラボレーション知育玩具を12月に発売する予定で、販売促進として12月~1月の期間限定で「ごはんまん」スタンプラリー実施し、店舗への来客数の増加をねらっている
- B社はSNSを通して商品や店舗の紹介に加え、「人気キャラクターのクイズゲーム」「知育玩具で遊んでいる幼児動画」など親子で楽しめるコンテンツを提供しコミュニケーションを図っている
- B社は、育児関連の専門ポータルサイト「ママパーク」(会員数500万)に対して、記事広告やバナー広告を継続的に出稿している
15.今後の方針について
- 知育玩具の専門店「知育の森」を通して、顧客と直接コミュニケーションをとれる機会を増やしていく
- 知育玩具を提供するのではなく、「たくさんの幼児の笑顔」を創ることが使命である
- 「知識力」「おもてなし力」の高い従業員を「知育玩具のコンシェルジュ」と銘打ち、従業員のサービス力も対外的に訴求していく
- A社の商品である木製知育玩具「森のともだち」へのこだわりを訴求していく
- 親子や祖父母などファミリーで楽しめるイベントの開催を増やしていくことで、来店者数の増加を図る
- 特定のファン層(既存顧客)からの強い支持があるが、販売促進の不足により、新規顧客の獲得には課題がある
- 新規顧客層の開拓のため、「20~30代のファミリー」を中心に、子供への教育に熱心であり「機能性」「安心・安全」へのこだわりが強い層をターゲットとする
- A社の想いを共有できる顧客を開拓し、既存顧客とは長期的な関係づくりを行う
- 「森のともだち」のブランドを守るため、ディスカウントショップ等への出店や商品の供給は、今後も行わない
- 12月のクリスマス商戦にはキャンペーンを実施し、顧客拡大を目指している
A社の概要
法人名:株式会社A
設立:昭和53(1978)年
従業員:100名
資本金:80百万円
売上:1,200百万円(2015年3月期)
所在地:神奈川県横浜市(本部)
役員:代表取締役 長谷部 京子 専務取締役 本山 翼 常務取締役 長友 愛梨
事業:幼児向け知育玩具の企画・製造、輸入、販売。幼児教室の運営。
店舗数:幼児教室(1店)、木製知育玩具の専門店(10店)
企業沿革
1978年:株式会社A設立
1979年:幼児教室開校
1996年:知育玩具の輸入販売事業の開始
2000年:オリジナルブランド 木製知育玩具「森のともだち」販売開始
2001年:知育玩具の専門店舗「知育の森」(1号店)開店
2003年:長谷部京子、代表取締役に就任
2015年:「知育の森」10店舗達成
2016年:千葉県流山市に新規出店予定
経営理念
知育玩具で幼児の心と身体の発育を支援し、豊かな人間社会の形成に貢献する
社長プロフィール
長谷部 京子(はせべきょうこ)
- 学歴 昭和54年にA大学幼児教育学部を卒業。大学卒業後は北欧へ海外留学。
- 職歴 北欧の玩具メーカーのマーケティング職に従事 国内の大手出版社で、育児向け雑誌「ヒナとタマ」の編集業務に従事 A社入社後は、知育玩具の事業化を推進。
- 家族構成 夫(60歳)、長男(31歳)は数学者の卵、長女(29歳)はピアニストとして活躍中
- モットー 「笑顔があればなんでもできる」。
- 趣味 将棋、オセロ、ゴルフ。
A社損益計算書(2014年度、2015年度)
2014年度 | 2015年度 | |
売上高 | 1,150,000 | 1,200,000 |
売上原価 | 529,000 | 540,000 |
売上総利益 | 621,000 | 660,000 |
販売費・一般管理費 | 580,000 | 600,000 |
営業利益 | 41,000 | 60,000 |
営業外収入 | 3,000 | 2,000 |
営業外費用 | 7,000 | 6,000 |
経常利益 | 37,000 | 56,000 |
設問
問1 A社の顧客コミュニケーションにおける課題を3つ記述しなさい。
・課題1:
・課題2:
・課題3:
問2 問1の課題解決に向け、A社へ提出する提案書に記載する施策について記述しなさい。
・施策の想定ターゲット顧客
・コンテンツやコミュニケーション施策
・施策で使用するメディアと選定理由
問3 A社へ提出する提案書のタイトル、提案の主旨(特徴)を記述しなさい。
・提案書のタイトル
・提案の主旨(特徴)
問4 A社へ提出する提案書をクロスメディアエキスパートとして記述しなさい。
【記述形式:A4・横書き・3枚】
【第21期:ローカル線鉄道事業】クロスメディアエキスパート 記述試験
状況設定について
あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。X社は、商業印刷物やDVD-ROMの制作、Webサイトの構築・運用などのサービスを顧客企業に提供している。X社にはデザイン専門の系列子会社があり、グループ総従業員数は100名である。
A社提案プロジェクトについて
第三セクター方式であるローカル線の鉄道事業を展開するA社は、X社が過去に取引を行った顧客企業である。X社は、同社Webサイトの一部を手がけた実績もある。
営業担当者より、「A社は、顧客との新しいコミュニケーション戦略の検討をしている。」との報告があった。X社は、営業部門や企画部門、制作部門に所属する数名で、A社提案プロジェクトを立ち上げた。
クロスメディアエキスパートであるあなたは、本プロジェクトのリーダーに任命された。X社は、本プロジェクトにて提案書を作成し、2016年3月20日にA社へ提出する予定である。
面談ヒアリングについて
A社について調査をすすめていった結果、X社の競合企業がインターネットやモバイル端末を活用した提案を行う準備をしているとの情報が入った。
X社は、営業担当者が中心となり、社長と販促担当者に面談ヒアリング(※面談ヒアリング報告書参照)を実施した。A社は、コミュニケーション戦略を立案するにあたり、社外からの優れた提案を取り入れ、実施を検討する方針である。
A社面談ヒアリング報告書
概要:A社からの提案依頼に伴う、ヒアリング調査 日時:2016年3月15日 10時~12時 対応者:木部社長、鈴木広報室長 内容:下記に記載
1.提案へ向けて
A社は、沿線自治体の出資が中心となり運営される第三セクター方式のローカル線を千葉県いすみ郡で展開している。事業所は本部のほか、15駅が運営されている。創業当時は慢性的な赤字経営が続いたものの、「あたらしい取り組みを行う」といった強いこだわりが支持され、黒字に転化した後の業績は順調に推移していた。しかしながら、少子高齢化や生活者の嗜好が多様化したことが起因し、業績の伸びが鈍化している。
A社はさらなる業績の向上を目指し、商品の内容を見直しあらたな取り組みを行うことで、顧客にさまざまな商品を相互に利用してもらう活動を実施している。
A社の理念を共有できる地域やスタッフと連携し、「地域を支え発展する観光鉄道」をコンセプトとした各拠点を「交流といこいの場」として位置づけ、他の観光業と差別化を図るアプローチ方法を検討している。
A社は顧客とのコミュニケーション手法を確立し、それに伴うコンテンツやメディア展開案を求めており、顧客との関係性を重視したプロモーションの実現を模索している。
2.施策の運営と実施効果測定
- 週単位でメディア展開の実績を確認したい
- 可能な範囲でメディア利用者のレスポンスを管理したい
- A社の担当者は、本部広報室を中心に2名を予定
3.想定予算
- 印刷物作成費、ハードウェア、ソフトウェア、開発費などで、総額2,000万円以内を想定
4.施策の実施期間
- 6月1日に施策開始、12月31日までを第1フェーズとして予定している
- お盆や年末年始のほか、ゴールデンウィークが繁忙期となるため、コミュニケーション施策は、業務のピークを考慮したものとしたい
5.創業について
- A社が運営するかずさ鉄道線は、日本国有鉄道特定地方交通線の1つだったローカル線の木原線を引き継いだ鉄道路線である
- 上総笹塚駅で接続するみなと鉄道線とあわせ、房総半島横断線を形成する、約30kmのローカル線である
- 開業当時から、沿線は人口希薄地帯で輸送量は少なかった
- 1981年に国鉄再建法施行により第1次特定地方交通線に指定され、1987年に東日本旅客鉄道に承継し、1988年に第三セクター方式のかずさ鉄道としてA社に転換された
- A社の経営は開業以来、慢性的な赤字に悩まされ続けており、存続の危機に瀕していた
6.ローカル線の市場について
- ローカル線は沿線地域の人口減少やモータリゼーションの進展に伴い、旅客数が減少する傾向がある
- 特に高校生を中心とした学生による定期旅客数の落ち込みが激しい
- 定期外旅客数についても、増加したのは一部の鉄道だけであり、ほとんどの路線は減少している
- 定期旅客の獲得は容易でなく、将来的には定期外旅客の割合が相対的に高くなることが予想されている
- 地域鉄道を観光資源化する事業者が多い
- 鉄道ファンや地域の民間企業からの会費を収入源としている場合もある
- 景観の魅力や経営状況が影響し、観光列車の導入や維持が難しいことがある
- 都会で生活する人々が「憧れ」から、ローカル線が流行する兆しもある
7.木部社長の就任と経営について
- 木原線が第三セクター化されて以降、長年に渡りかずさ鉄道は赤字経営が続いており、2006年度で約1億3,000万円の赤字であった
- 「かずさ鉄道再生会議」では、「2008年からの2年間は収支検証期間として鉄道を存続させるが、2009年度決算においても収支改善見込みが立たない場合、鉄道の廃止を検討する」ことを取り決めた
- 経営立て直しのために社長を一般公募し、2008年4月にバス会社海浜交通社長の谷川 楽一が社長に就任した
- 谷川社長の辞任により、再公募で125名から木部 英里が選出され、2009年6月にA社の社長に就任した
- 木部社長は、国鉄への入社を志望していたが分割民営化により新規採用がなく、アジア航空に入社した
- 30歳の時にはルフトハンザ・エアウェイズに入社し、32歳の時に副業として鉄道の運転席から撮影した映像を販売する有限会社ベストシートを設立した
- 木部社長は旅客運航部長として運航業務や旅客サービス業務に携わり、徹底した経費削減を行ってきた点が評価され、A社の社長に選出された
8.立地とメディア活用について
- 沿線住民は3万人以下であり、「鉄道に乗って目的地に行く」といった、鉄道の持つ本来の役目で存在し続けるには難しい地域である
- 本社がある多喜町の人口は、10年で半分の10,000人まで減少した
- 羽田空港からアクアラインや圏央道を利用することで、かずさ鉄道が走る地域まで約50分で訪れることができる
- 田園と山中の沿線であるため、海岸線や富士山などといった定番の景色がない
- 旅行客の中には、「せっかく来たのに何もない」と憤慨する人もいる
- コーポレートサイトでは、主にアクセス方法と沿線情報、運賃情報、グッズ情報、会社情報を掲載している
- 独自のECサイトでは土産品のほか、枕木にメッセージプレートを付けることができる「枕木オーナー」の権利を年額6,000円(税別)で販売し人気を集めている
- 木部社長は、2009年からブログを続けている
9.経営再建について
- 2009年10月には、特に30~50代の女性から多く支持を集める1980年代から放映されている人気アニメ「クジラン」をあしらった「クジラン列車」の運行を開始した
- 「クジラン列車」は、従来の車体にキャラクターのシールを貼っただけのものであった
- 多くのマスメディアからローカル線特集の取材が入り、費用をかけず生活者へかずさ鉄道を訴求することに成功した
- この企画により、かずさ鉄道は20~50代で構成される女性客の取り込みに成功した
- あたらしい取り組みにより、「鉄道女子」を増やす結果となった
- この成功によりかずさ鉄道の存続に向けた道筋が見え、ディーゼル列車である「キハ52形」を導入した
- 昭和の風景が残る沿線に対し、昭和のディーゼル列車を走らせることは、特徴的な取り組みとなった
- 努力の結果、経営状態の回復が認められ、2010年8月にかずさ鉄道の存続が決定した
- 現在では、「地域の生活者から、かずさ鉄道を残してよかったと言ってもらうこと」を重要視し、有名人が取材で訪れたときには、必ず地域の生活者と写真を撮ってもらえるよう条件を提示している
10.今後のイベントについて
- 2016年7月には、土日祝日限定で羽田空港から多喜駅までの直行バスによるツアーを実施する
- バスツアーは、A社企画実施の旅行商品として発売し、首都圏各地及び全国各地からの新たな集客手段として運行する予定である
- 2016年8月中旬には、昭和の風景を再現したイベントを実施する
- 昭和に活躍していた「オート三輪」や「ボンネットバス」「クラシックカー」を一般の生活者から集め、かずさ鉄道と一緒に写真撮影するイベントである
- 2016年10月には地域の生活者が企画した、「フォークソング列車」や「ジャズ列車」「ウエディング列車」なども実現する予定である
11.競合について
- B社が経営するエボシ電鉄は、神奈川県の湘南地域で展開しており、非常に人気がある
- 地域の旅館業や娯楽業より構成される「一般社団法人 エボシ電鉄応援団」があり、独自イベントのほか美化活動、地域の他種団体との協調活動を行っている
- エボシ電鉄応援団では、Facebookページを展開しており、約3,000人のユーザーをかかえ、コミュニケーションが活発に行われている
- 売店業の売上増進とエボシ電鉄集客促進のため、B社商品を東京都内で購入できる店舗として、2016年3月に「エボシ電鉄 シーサイド本舗」を東京スカイツリーのある押上に開店した
- 「シーサイド本舗」の開店に合わせ発表された、ゆるキャラ「エボシー」は、20~40代の女性から大きな支持を得ている
- エボシ電鉄の知名度とB社潤沢な資金を活かし、首都圏のキー局を中心に、「エボシー」を採用したテレビCMを発信することで観光客を集めようとしている
12.今後の方針について
- かずさ鉄道は、乗車すること自体が目的となる「観光鉄道」を目指している
- ローカル線は万人受けする必要はなく、架線も柱もない田園風景を「かわいい列車」や「昭和の列車」が走っている風景をたのしみに来る生活者を対象にしたいと考えている
- 「いい風景だ」「すばらしいところだ」と観光客が写真撮影している光景を地域の生活者が知ることで、誇りを持ってもらいたい
- 企業として利益を出すだけではなく、単なる地域の足となることでもない
- 販路拡大のため、団体やグループへ対する貸し切り運行の販売活動に力を入れたい
- 獲得した女性客の定着を前提に、都会に住む定年退職後のシニアも平日の顧客としたい
- 上記対象顧客に対し、実施予定のイベントを効果的に訴求したい
- 2020年に実施される東京オリンピックまでに、外国人対応の準備をすすめるうえで、必要な情報を収集したい
- 地域を活性化し、体験や思い出からゆたかな感情をもつ人間を育てることが使命であると考えている
以上
A社の概要
法人名:株式会社A 設立:昭和62(1987)年 従業員:30名 資本金:270百万円 収入:150百万円(2015年3月期) 所在地:千葉県いすみ郡多喜町 役員:代表取締役 木部 英里 専務取締役 堺 結衣 常務取締役 渡辺 友和 事業:鉄道事業運営、旅行業、小売業、広告業 駅数:15駅
企業沿革
1987年:株式会社A設立 1988年:営業開始 1998年:多喜駅が関東の駅百選として運輸省(当時)関東運輸局から選定 2009年:木部 英里が代表取締役に就任
経営理念
地域の発展を支え、長所を伸ばすことで、お客様に「いこいの場」を提供することで、人間形成に寄与する。
社長プロフィール
木部 英里(きべ えいり) 昭和63年にM大学商学部を卒業。 平成21年に代表取締役就任。 かずさ鉄道における「あたらしい取り組み」を推進。 モットーは「振り返るより前を見る」。 趣味は、ツーリング、鉄道撮影、手品。
A社損益計算書(2013年度、2014年度)
2013年度2014年度
売上高 | 220,000 | 230,000 |
売上原価 | 330,000 | 330,000 |
売上総利益 | ▲110,000 | ▲100,000 |
販売費・一般管理費 | 48,000 | 50,000 |
営業利益 | ▲158,000< | ▲150,000 |
営業外収入 | 180,000 | 180,000 |
営業外費用 | 9,000 | 8,000 |
経常利益 | 9,000 | 22,000 |
設問
問1 A社の顧客コミュニケーションにおける課題を3つ記述しなさい。
・課題1:
・課題2:
・課題3:
問2 問1の課題解決に向け、A社へ提出する提案書に記載する施策について記述しなさい。
・施策の想定ターゲット顧客
・コンテンツやコミュニケーション施策
・施策で使用するメディアと選定理由
問3 A社へ提出する提案書のタイトル、提案の主旨(特徴)を記述しなさい。
・提案書のタイトル
・提案の主旨(特徴)
問4 A社へ提出する提案書をクロスメディアエキスパートとして記述しなさい。【記述形式:A4・横書き・3枚】
クロスメディアビジネスは企画・提案から(第23期クロスメディアエキスパートの出題意図と講評)
ー第23期クロスメディアエキスパート試験の出題意図と講評ー
第23期クロスメディアエキスパート認証試験は、2017年2月26日(日)、東京・大阪を始めとした全国4会場にて実施し、128名の方が受験した。
【企業インタビュー:株式会社木万屋商会】お客様との会話の中から 企画提案のポイントを
木万屋商会(本社東京都中央区日本橋)は、ビジネスフォーム印刷を主力事業とする老舗のビジネスフォーム印刷会社である。主力事業に加えて新規事業を企画開発する部門を立ち上げ、クロスメディアエキスパート取得を積極的に推進している。 続きを読む
2017年4月更新試験開始
2017年4月実施
- 第47期DTPエキスパート認証更新試験
- 第23期クロスメディアエキスパート認証更新試験
を開始しました。
3月30日(木)にご登録ご自宅メールアドレス宛てに配信しました試験専用サイトログインパスワード案内をご覧いただき、試験専用サイト上で試験にお取り組みください。
試験サイト上の動作についてご不明な点は、下記にしたがいお問い合わせください。
CBT 方式試験のシステムや取り組み方に関するお問い合わせ
株式会社 イー・コミュニケーションズ サポート窓口
TEL 03-3560-3905 e-mail cbt-support@e-coms.co.jp
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