資格制度」カテゴリーアーカイブ

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[コミュニケーション]5-2 マーケティング活動と印刷メディア

マーケティングとは、本来は顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、プロセスを指す言葉である。日本マーケティング協会は「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合活動である。」と定義している。
このような幅広いマーケティング活動の中でも、特に広告、PR・パブリシティ、SP(セールスプロモーション)、パッケージング、ダイレクトマーケティングなどの分野においては、印刷メディアとの関連が深いことは明らかである。また、コーポレートコミュニケーションやブランド戦略といった側面でも、印刷メディアを通じたコミュニケーション活動が重要な位置を占めている。公的機関や教育機関などの非営利組織におけるソーシャルマーケティングにおいても同様である。
したがって、現代の印刷ビジネスは、顧客の目的であるマーケティング活動を理解した上で取り組むことが必要となる。つまり、顧客が何のために印刷物を製作するのかを正しく理解することなしに、顧客の満足を得ることは不可能だと言える。

5-2-1 マーケティングミックス

  • マーケティングミックスとは、マーケティング戦略においてマーケティング・ツールを組み合わせて、望ましい反応を市場から引き出すことである。代表的なものとして、製品(Product)、価格(Price)、販促(Promotion)、流通(Place)からなる4P理論がある。また、買い手側の視点から、顧客価値(Customer Value)、経費(Cost)、顧客とのコミュニケーション(Communication)、顧客利便性(Convenience)を4C理論とする考え方もある。

5-2-2 デジタルマーケティングの進展

インターネットマーケティング

  • インターネットマーケティングとは、インターネット上での商品やサービスのマーケティングである。Webマーケティング、オンラインマーケティング、ネットマーケティングと呼ばれることもある。狭義にはインターネットや電子メールなどを利用したマーケティングを指すが、広義にはデジタル化された顧客データ管理システムや電子的な顧客関係管理システムを含む。

デジタルマーケティング

  • デジタルマーケティングとは、顧客にリーチし、顧客をリードし、顧客に購入を促し、顧客を保持するために、デジタルテクノロジーを用いた測定可能でインタラクティブな手法である。インターネットマーケティング、またはWebマーケティングに留まらず、オフラインを含むあらゆるチャネルのマーケティングを総括的に管理するものである。

マーケティングオートメーション

  • マーケティングオートメーションは、メールやソーシャルメディア、Webなどを活用したマーケティング活動を効率化し、効果的にすることであり、またはそれを目的としたソフトウェアである。一般に、メール配信や登録フォーム、キャンペーン管理、リード(見込客)管理・リードナーチャリング、マーケティング分析、Web解析、リードの行動分析などの機能を実装し、それらのワークフローを自動化することができる。また、これらの一連の活動の1つとして、重要顧客に対してDMやパーソナライズされた紙メディアを制作・送付することもある。

5-2-3 マーケティングとデジタル印刷の連係

パーソナライズDMの進化

  • オンラインショッピングサイトなどでは、会員(ユーザー)の購買履歴やアクセス状況に応じて、個別に内容を編集するパーソナライズDM(カタログ)を送付する動きが増えている。
  • パーソナライズDMは、オンラインサイトで多用されているレコメンド機能を紙メディアに応用したものとも言える。
  • パーソナライズDMは、CRMシステムによる顧客管理、マーケティングオートメーション、パーソナライズDMの自動編集システム、デジタル印刷システムの連係によって実現している。
  • メールなどのデジタル施策だけではなく、紙メディアを併用することによって、より効果的なダイレクトマーケティングを実現した例だと言える。

第26期クロスメディアエキスパート 論述試験の出題意図と講評

2018年8月26日(日)、全国7会場で第26期クロスメディアエキスパート認証試験が実施された。本試験第2部の論述試験は、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を140分の制限時間内に作成するものである。

8ページほどの与件文には、ある企業の事業推移や市場環境、競合企業の動向などが記述されている。提案ではターゲットを的確に絞り込み、適切なメディア選択、メディア連携を実現し、顧客の課題解決をおこなうことが求められる。

出題テーマ

「コインランドリー事業を運営するA社」にコミュニケーション戦略の提案をおこなう。

コインランドリービジネスの動向と課題

コインランドリーは、かつて銭湯などに併設され、学生や単身者など洗濯機を持たない人たちが利用することが多かった。現在では、駐車場完備の郊外型・地方型が主流である。女性でも気軽に出入りできるような、明るく清潔で安心感のある店舗が好まれている。
衣類以外に毛布や羽毛布団まで洗える洗濯機や乾燥機、ペット用品やスニーカー専用の洗濯機もある。働く主婦や家事の時間短縮を求める層の利用が増えている。
この10年は、年に300~500店舗が新規オープンしているとも言われており、全国で16,000店以上となっている。また、コインランドリー経営は、人件費が軽微であり、遊休店舗や土地のオーナー向け、または副業向けビジネスとしても注目されている。

与件の企業は、病院や工場、社員寮などの施設向けランドリー機器販売からスタートし、その後、店舗型コインランドリー向けに販売を拡大し、業績を伸ばしていた。しかし、近年、外資系のランドリー機器メーカーが国内市場に進出し、フランチャイズチェーンによって急速に店舗数を増やす事態となっている。
対抗策として、まずは直営店を開設し、カフェ併設や集配サービス付き、定額制など新スタイルのコインランドリーのブランドを定着させる。最終的にはフランチャイズ化して、全国展開することを目指したい、という設定である。

試験では、この企業の新スタイルを定着させるコミュニケーション戦略の企画提案書を記述することが求められている。

出題意図と判断基準

  • 出題企業の課題を解決するコミュニケ―ション提案となっているかどうか。
  • 競合他社への差別化を実現できているかどうか。
  • ターゲットに応じた適切なメディア選定が出来ているかどうか。
  • 起点となるメディアから他のメディアへの連携や誘導を想定しているかどうか。
    (一方通行の発信ではなく、メディア連携やメディア誘導を実現できるかどうか)

  • 顧客との双方向コミュニケーションを想定しているかどうか。
  • Webサイトへの集客・リピート増を図るコンテンツ提供や仕組みがあるかどうか。

講評

コインランドリーという業種の最大の特徴は、地域型ビジネスであること、季節や時候に応じた需要機会が多いことである。また、コインランドリーを積極的に利用している層は、実は限定的であると言われている。未体験で、その利便性や快適さを知らない潜在顧客も少なくない。
したがって、周辺地域へのアピールをどうするか、未体験の顧客に何らかの方法で体験してもらう機会を設けること、季節や時候に応じたキャンペーンなどの施策によって、固定客を徐々に増やすことが有効だと考えられる。
解答における施策には、ポスティングチラシ(クーポンチラシ)、SNSの活用による利便性や独自サービスの訴求、体験イベントの実施、デジタルサイネージ活用、会員登録によるポイントサービス、洗濯豆知識の動画コンテンツなどがあった。InstagramやTwitter、FacebookなどのSNSを活用し、双方向コミュニケーションやファン作りを意識したものも多かった。
AISAS、AISCEASなどの消費行動モデルを反映したシナリオがあると、さらに完成度が上がると思われる。
全体としては、以前よりまとまった提案が多くなり、レベルの向上が見られる。今後も引き続き、このようなレベルの高い提案を期待したい。

JAGAT資格制度事務局

●〇●JAGATエキスパートDAY 2018年12月21日(金)開催決定●〇●

『デジタル×紙×マーケティング』を実現する人財』をテーマに、これからの印刷ビジネスと人財について考えるセミナーや展示をJAGAT杉並本社で行います。 詳細は、11月上旬掲載予定です。

潜在ニーズを読み解き施策全体を見る力

アートディレクターを経て現在はブランディングやマーケティングのコンサルタントとして活動している小澤氏は、デザイン戦略を顧客企業の成果につなげ、課題解決を図っている。印刷会社が課題解決業務に舵を切る際のヒントをいただいた。 続きを読む

2019年2月2日東京アビリンピック参加者募集のご案内

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 東京支部主催による第17回東京障害者 技能競技大会(東京アビリンピック)は、2019年2月2日(土)に開催されます。
障害者が日頃培った技能を互いに競い合うことにより、その職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々が障害者に対する理解と認識を深め、その雇用の促進を図ることを目的として開催されるものです。

同競技大会競技種目には、DTP競技も含まれます。

詳しくは、下記高齢・障害・求職者雇用支援機構 東京支部Webページよりご覧ください。
第17回東京障害者技能競技大会(東京アビリンピック)
【参加者募集期間】10月29日(月)から11月16日(金)まで

25年を越えて進化を続けるDTPエキスパート

DTPエキスパートは1994年2月に第1期試験をおこない、149名の方が受験した。その後、年2回実施しており、2018年8月には第50期試験(25周年)を迎えた。これまで延べ5万人以上の方がチャレンジし、合格者は22,000人を超えている。

続きを読む

更新試験実施期間延長

2018年9月実施の更新試験につきまして、実施期間を下記の通り延長いたします。

延長期間:~10月5日(金)23:59まで

尚、延長にあたって特に手続きは必要ありません。
更新試験専用サイトへのログインパスワードがご不明な場合は、
試験専用サイト上のパスワード自動再通知機能にて再取得いただくか、
エキスパートID・お名前とともにサポート窓口までお問い合わせください。

●CBT 方式試験のシステムに関するお問い合わせは
(株)イー・コミュニケーションズ サポート窓口 TEL:03-3560-3905
受付時間:平日10:00~17:00 お問い合わせ対応期間:受験期間中

●試験制度内容に関するお問い合わせは
(公社)日本印刷技術協会 資格制度事務局
Mail:expert@jagat.or.jp