「あしたの売り上げ」をつくるためのソーシャルメディア

掲載日:2017年1月17日

ソーシャルメディアはマーケティング戦略において必須だといわれている。しかし企業側から見ると費用対効果が見えにくい面もある。企業として運用するメリットとはいったい何か。

今回は2016年11 月4 日に開催した「『印刷白書2016』発刊記念特別セミナー」特別講演より、マーケティング手段として生かすソーシャルメディアについて、企業のプロモーション支援等を行うトライバルメディアハウスの高野修平氏に話を聞いた。

  • なぜマーケティングでソーシャルメディアが注目されているのか
    →スマホの影響力が高まった、クチコミ信頼性の向上、「飲む情報」へのシフト
  • ソーシャルメディアマーケティングで重要なのは
    →文脈を掴むこと、ソーシャルメディアとの連携が取れていること

コンテクストづくりが強み

ソーシャルメディアが注目される背景は3 つある。

1 つ目は、スマートフォンの影響力が高まっていることだ。インターネットにより情報量が爆発的に増加した結果、企業が発信する情報が選び取られる確率が格段に低くなった。言い換えると、広告がターゲットの目に触れにくく、かつ目に触れても記憶に残りにくくなった。その一方で、ソーシャルメディアの利用時間は世代を問わず増加している上、スマートフォンの普及率も進んでいる。「スマホ・セントリック」がマーケティング戦略の中心になっている。

例えば5 年前であれば、企業は数千万円の費用をかけてPC 用のスペシャルサイトを作るだろう。今はそんなことはほとんどない。なぜならばPC 用のサイトではターゲットに見てもらえないからだ。彼らはPCサイトではなくスマホサイトを見る。だからこそ企業はどうやってスマホへアプローチして、ターゲットにどうやって見てもらうかにシフトしている。

2 つ目に、クチコミの信頼性が向上していることがある。消費者は広告よりも友人や知人のクチコミを信頼するようになった。食べログや価格.com など、情報を蓄積するタイプのソーシャルメディアが重視されるようになってきた。つまり消費者は友人や知人、または信頼できる人からの評価を企業からのメッセージよりも信じるようになったということだ。

そして3 つ目は、情報消費のスタイル変化がある。消費される情報は「噛む情報」から「飲む情報」へと変わってきた。噛む情報とは、量も多く、新聞のように意識して読むもの、情報摂取や関与に時間がかかるものを指す。それに対して、飲む情報とは、最近のウェブページでよく見掛ける「3 分でわかる」「ざっくり言うと」など、短時間で理解できるように要約したもの、情報摂取や関与に時間がかからないものを指す。

今は、情報摂取に時間がかからない方が好まれるようになり、隙間時間にスマホで読めるような飲む情報にシフトしている。スマートニュース、グノシーなど自分が読みたいニュースをすぐに読めるアプリが提供元として伸びてきている。

このような背景があって、企業が広告の届け方や情報大爆発時代に自分たちの商品やブランドに興味を持ってもらえるのかを模索している。そこで不可欠なのが「コンテクスト(文脈)」という概念である。

大事なのは「文脈」

興味喚起のためにソーシャルメディア上でマーケティングを行うことは重要だ。しかし文脈をしっかりつかまないと大失敗する。

スマホへのシフトは、ユーザーの情報取得行動にも変化をもたらした。

今まではユーザーの目的が明確にあった。「これが気になる」というキーワードを検索してサイトに到達するという目的意識がある「能動的検索」であった。これからはソーシャルメディアを通じて友人起点で情報を偶発的に見つける流れに変わってきている。

ソーシャルメディアを使うユーザーは基本的に目的意識が存在しない。

これから重要になるのは、どれだけ多くソーシャル上で話題に取り上げられるか、ソーシャルとの連携が取られているかという観点である。かといって従来のSEO が不要になるわけではなく、両方とも必要になってきた。
ソーシャルメディアは買ってもらうための場所ではなく、買いたいと思わせる場所になるのがゴールである。かつ、どうせ買うならこの企業から買いたいということである。

よく「ソーシャルメディアを使って売り上げを上げたい」という要望を受けるが、結論から言うと「無理」である。なぜならばソーシャルメディアは役割が違うからだ。

売り上げを上げるという目的であればDM のほうがはるかに効果的だろう。ソーシャルメディアの役割は、直接的な効果ではなく、明日の売り上げを作ることにある。できることとできないことがあるので、ソーシャルメディアを魔法の杖だと思うと失敗しやすい。

(『JAGAT info』2016年12月号より一部抜粋)

関連イベント

ソーシャルメディア時代にひびく動画プロモーションとは【page2017カンファレンス・CM3】

動画プロモーションにはスマホとソーシャルメディアへの意識が不可欠になった。レシピ動画サービスのKURASHIRUの事例、マーケティング専門会社が仕掛けた最新動画プロモーション事例などから動画プロモーションを成功に導くためのソーシャルメディア活用について議論する。