漢文の送り仮名・読み仮名の配置処理

掲載日:2016年5月10日

日本語組版とつきあう その57

小林 敏(こばやし とし)

漢文につく送り仮名・読み仮名とは

漢文につく送り仮名とは、漢文を訓読する際、漢字の読み方を示すために漢字に添える、語の末尾を示した仮名のことである。通常、送り仮名には片仮名を用いる。

図1の右の例の“曾テ”では、“テ”の送り仮名により“曾”は“かつて”と読むことが示されており、左の例の“曾ワチ”では、“ワチ”の送り仮名により“曾”は“すなわち”と読むことが示されている。
これに対して、漢字そのものの読みを示すために漢字につける仮名を読み仮名といい、通常、平仮名を用いる。

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(図1)

送り仮名の配置処理

漢文につく送り仮名は、次のように配置する。
送り仮名の文字サイズは、そこに使用している漢字の文字サイズの1/2とする。また、送り仮名は、漢字の右側に接して配置する。ただし、再読文字(同じ漢字を2度読むもの)の2度目の読みを示す送り仮名は、漢字の左側に接して配置する。(後述するように、以上のことは読み仮名についても同様である。)

なお、 図2(“未生知”)を例にすると、“未(いまダ)”を最初に読み、返り点に従い、2度目に“未(ず)”と読む。
送り仮名は、読み仮名がつかない場合は、送り仮名をつける漢字の上端から漢字の文字サイズの1/2の位置に送り仮名文字列の先頭をそろえて配置する(図2参照)。読み仮名がつく場合は、読み仮名の後ろにベタ組で配置する(図2参照)。
送り仮名が漢字よりはみ出した場合、後ろにくる漢字には、送り仮名は掛からないようにする(図2参照)。また、漢字、それにつく送り仮名および読み仮名は、2行に分割してはならない。

なお、送り仮名をつける漢字の上端から漢字の文字サイズの3/4の位置に送り仮名の先頭をそろえて配置する方法もある。この場合、送り仮名を最大で送り仮名の文字サイズの1/2まで(漢字についていうと先頭から1/4の位置まで)、後ろの漢字に掛けて配置する方法もある。

そこで図3に、2つの配置方法を示す。左側が送り仮名の文字サイズの1/2まで後ろの漢字に掛けて配置する方法である。

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(図2)

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(図3)

読み仮名の配置処理

漢文につく読み仮名は、次のように配置する。
読み仮名の文字サイズは、送り仮名と同様に、そこに使用している漢字の文字サイズの1/2とする。
読み仮名は、漢字の右側に接して配置する。ただし、再読文字(同じ漢字を2度読むもの)の2度目の読みを示す読み仮名は、漢字の左側に接して配置する(図2参照)。

読み仮名の配置位置は、縦組のルビの配置方法と基本的に同じである。
漢字に1字の読み仮名がつく場合は、一般に肩ツキとしているが、中ツキにする方法もある。2字以上の読み仮名がつく場合は、ルビの場合と基本的には同じような処理法にしている。

読み仮名および送り仮名とが両方ついた場合

読み仮名および送り仮名とが両方ついた場合は、読み仮名の配置方法を優先し、その読み仮名の後ろにベタ組にして送り仮名を続けて配置する。
送り仮名および/または読み仮名が漢字よりはみ出した場合、後ろにくる漢字には、仮名または読み仮名は掛けないようにする(図4の右側の例を参照)。
なお、後ろから返り点で返って読む場合、前の漢字の送り仮名および/または読み仮名とがベタ組で連続すると読みにくいので、送り仮名の文字サイズで二分空ける方法もある(図4の左側の例を参照)。

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(図4)

たて点の配置処理

漢文につくたて点とは、漢文を訓読する場合、その漢字を熟語として読むことを示すために熟語の字間に挿入する符号である。連続符、音合符、訓合符、連字符、熟字符、合符ともいう。
たて点は、すべての熟語に挿入するものではなく、省略される場合も多い。図5では、“胡蝶”には、たて点を入れていない。
たて点は、熟語の字間の天地左右中央の位置に、二分の長さの細線を配置する。たて点の前後は、原則としてベタ組とする(図5参照)。
なお、その熟語を字訓で読むのか、または字音で読むのかを示すために、たて点の位置を左右中央でなく、右端または左端に配置する方法もある。しかし、今日では、どのような読み方にするかに関係なく、左右中央に配置する方法が一般的である。
たて点がついた熟語に返り点がつく場合は、たて点は返り点の右側に並べて配置する(図5の左の例を参照)。

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(図5)

日本語組版とつきあう (小林敏 特別連載)