【マスター郡司のキーワード解説】シャープネス進化論(その弐)

掲載日:2023年5月25日

スマートシャープのススメ

最近、ChatGPTが話題になっているのでこちらを先に説明しようかと迷ったのだが、今回は予告通りスマートシャープについて解説し、ChatGPTは次回(6月号)にお届けしたい。

さてUSMは、カラーフィルムを印刷原稿にしていた時代にはマストであった機能だが、デジタルカメラになって実質の解像度が上がり(スキャナー時代はバカ穴でフィルムをスキャニングしていたので、400dpiでも実質は数値以下の解像度だった)必要性が低くなってきたことと、デジタルカメラ自体(スマートフォンなどのコンシューマー機に多い)にシャープネス機能が付いていて、自動的にシャープネスがかかっている場合も多くなってきた。

そんなこんなでUSMが軽視されるようになり、「かけない方がよい」という風潮も生まれてきてしまったわけだが、印刷にはやはりかけた方が95%以上は(100%と言いたいところだが、モアレやビビリなどのトラブルもあるので)良い結果が得られる。デジタル印刷でも、特にインクジェットの場合は紙に水性インクがにじむので絶対にかけた方がよい。

理論的にはスマートシャープの方がかけ方が優れているので、使用するなら通常のUSMではなく、スマートシャープの「ぼかし(レンズ)」を使うべきである。Photoshopのスマートシャープアルゴリズムの詳細は不明だが、シャープネスフィルターはいろいろと研究されており、一例として図1のバイラテラルフィルタを紹介しておく。

図1 バイラテラルフィルタ

このような難しい計算もパソコンの能力向上で簡単にできるようになったため、画質が向上するのならスマートシャープを使用するべきだ。本誌上でのシャープネス比較は分かりにくいので、ボケ画像(信号)の比較をしてみることにしたい。図2が元画像で、図3が今までと同様のガウスぼかしである。こちらは全体が平均的にぼけているのに対し、図4のレンズぼかしの方は輪郭が明確に残っているのが分かると思う。両方ともぼかし半径は20ピクセルだが、このレンズぼかしのボケ信号から作られるUSM効果を想像してみてほしい。くっきりした輪郭はシャープさが引き立ち、ぼんやりしたところは効果が薄くなるわけである。

図2 元画像
図3 ガウスぼかし
図4 レンズぼかし

図5はぼかし(レンズ)のオペレーション画面だが、深度情報としてZdepth(普通はαチャンネルに深度情報を該当させる)を採用すると、CG画像などから深度情報もリンクさせることができ、撮影後のピント調整も可能になる。

図5_レンズぼかしオペレーション_trim
図5 レンズぼかしの操作パネル

今回はUSMというか、「スマートシャープのススメ(その弐)」ということになる。「スマートシャープを使うべきだ!」と印刷関係者にはぜひ勧めたい。

(専務理事 郡司 秀明)