行頭・行末禁則と分割禁止

掲載日:2016年9月12日

日本語組版とつきあう その61

小林 敏(こばやし とし)

行頭禁則などの用語の定義

JIS Z 8125(印刷用語―デジタル印刷)では、行頭禁則などについて、次のように定義している。

[行頭禁則]行頭に特定の文字を置くことを禁止する規則。
[行末禁則]行末に特定の文字を置くことを禁止する規則。
[分離分割禁止][分離禁止]:a)特定の文字の組の文字間にアキを入れることを禁止すること。b)特定の文字の組の文字間で改行することを禁止すること。

問題は、分離分割禁止である。JIS X 4051では、“分離禁止処理”について、次のように定義している。
[分離禁止処理]:分離禁止文字の組を構成する文字間では分割しないように追込み又は追出しをする(分割禁止)とともに、延ばし処理によって行を調整するときには、分離禁止文字の組を構成する文字間を広げないように(分離禁止)して、文字を配置すること。

行頭禁則などの用語の定義

分離分割禁止、分離禁止、分割禁止については、言葉の使い方にやや混乱があるように思われる。
いずれにしても、問題となる組版処理は、次の2つである。

(1)行の調整処理で、字間を空ける調整を行う場合、空けてはいけない文字の組合せがあり、その特定の文字の組の文字間では空けない。たとえば、始め括弧類と次に配置する仮名や漢字の字間や、かなや漢字と次に配置する終わり括弧類の間では空けてはいけない。

(2)行に文字を配置していく場合、定められた行長を超えた場合、2行に文字列を分割しないといけない。このように文字列を2行に分割する際に、分割してはいけない文字の組合せがあり、その特定の文字の組の文字間では分割しない。たとえば、始め括弧類と次に配置する仮名や漢字の間や、かなや漢字と次に配置する終わり括弧類の間では2行に分割してはいけない。

掲げた例からも分かるように、一般に(1)の字間を空けてはいけない箇所は、(2)の2行に分割してはいけない場合が多い。
しかし、まったく同じというわけではない。句読点と次に配置する仮名や漢字の字間は(1)の字間を空けてはいけない箇所ではあるが、(2)の2行に分割してはいけない箇所ではない。

したがって、この2つについて、用語を分けた方がよい。JIS X 4051の定義をすべての人が認めているわけではないが、とりあえずの定義として採用するしかないだろう。つまり、(1)の字間を空けてはいけない規則を分離禁止、(2)の2行に分割してはいけない規則を分割禁止という。以下でも、それに従うことにする。

行頭・行末禁則と分割禁止

次に行頭・行末禁則と分割禁止の関係である。行頭禁則の例として句読点を例にすると、この句読点の前にどんな文字がきても、つまり、あらゆる文字種と句読点が組み合わさった場合は、その字間では分割禁止であり、この分割禁止のルールがあれば、句読点は行頭に配置できない。つまり、分割禁止のルールがあれば、行頭禁則は実現できることになる。

あらゆる文字種と次に配置する句読点は、一つのまとまりであり、そこで分割してはならない、そして、無理に分割して行頭に句読点を配置することは、読みやすさを損なう。したがって、句読点は行頭に配置してはならない、ということになる。

中点(中黒)のように箇条書きの先頭(段落の先頭)に配置する場合、その前に文字がこないので、行頭禁則文字であるにもかかわらず、行頭に配置できることになる。ごくたまに、行頭に終わり括弧類が配置されている印刷物を見るが、こうしたことによるのかもしれない。したがって、行頭禁則は自動処理で間違いは起きないと思われるが、校正では、注意が必要である。

もっとも中点については、前の文字と次の中点との結合程度は、前の文字と次の句読点との結合程度よりは、やや弱いという考え方もあり、そこから、中点を行頭に配置することを許容する考え方もある(図1に例を示す)。

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(図1)

行頭禁則の両様の考え方

行頭禁則について、同の字点(々)、音引(ー)、拗促音など、意見が分かれる事項がある。
これらも、同の字点などは独立した文字・記号なので、前に配置する文字との結合関係はあるとしても、行頭に配置できると考えれば行頭禁則文字から除外でき、いやいや、これらの文字・記号は、前の文字との結合関係は強いので、分割できないと考えれば、行頭禁則文字となる。

今日では、これらの記号・文字の行頭配置を許容する例が多いが、極端な分割、たとえば、同の字点(々)が、偶数ページの冒頭に配置される場合には、前の文字との関係があまりにも離れてしまうので、許容できない、としたほうがよいだろう。なんらかの処理を施すことになろう。

日本語組版とつきあう (小林敏 特別連載)